恥ずかしさが込み上げる。
月花は結局一睡もできずに通勤電車に乗り込んだ。満員電車に揺られながらもスマホでLINEを開く。悠とデートの約束をしたのが未だに夢ではないかと何度も確認をする。それくらい信じられずにいる。
月花と悠は高校2年のときに同じクラスになり、苦楽を共にした。月花がいじめられていたときにずっとそばにいてくれたのが悠であった。しかし、当時月花は大学生の彼氏と付き合っていて恋愛には発展しなかった。
月花はため息をついた。何故深夜に告白してしまったのだろうと。電車に揺られながら深夜のことを思い出す。恥ずかしくて耳まで熱くなる。
職場の最寄駅に着き、人波に飲まれながら降りる。
ぼんやりとしながら歩いていると背後から大声が聞こえる。
「あぶねえ!」
体が反射的にびくっとし、動きを止めた。
目の前を見ると信号は赤を示していた。
月花は自分が赤信号で渡ろうとしていたことに気づく。
そして後ろを振り返ると何故か悠がいた。
「ゆ、悠…!」
「月花、前ちゃんと見ろよ」
「なんでここにいるの!?」
「これから打ち合わせなんだよ」
「そ、そうなんだー」
悠は月花の顔を覗き込む。顔を見られて恥ずかしくなり月花は顔を逸らす。
「さては寝れなかったな」
「う、うるさいなあ!」
「深夜にあんなLINEすりゃ寝れないよなー!」
「やめろー!」
信号が青になった瞬間、月花は走って職場に向かった。
その後ろ姿を悠は黙って見つめていた。