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◇父と娘

申し訳ありません。

最初にコピーをしたデータが古いデータだったようで、大幅に改編しております。

11/5の23:50以降の更新分が正確なものです。

「その通りですわ! お父様! お姉様が公爵家に嫁ぐなんて、我が侯爵家の恥ですわ!」


「おお、ミリア!」


 勢いよく開いた扉から、ミリアが現れ、アリストの表情が一気に活気付く。


「せっかく傷を治していただいたのです。他にも嫁の貰い手が現れるかもしれませんわ。ねぇ、お父様」


「それもそうだな」


「で、でも、もう既に私は公爵様と婚約を結……」


 ヒスカリアは二人の勢いに怯えながらなんとか主張するも、ミリアはそれを遮って笑い出す。


「あははははは。あんなの本当に信じているの? お姉様なんかが公爵様に、本当に請われるわけがないじゃない!」


「そんなはず……」

「だって、お姉様よ? 貴族としての教養も、美しい容姿も持たない、見た目は平民のお姉様よ?」


 ヒスカリアを嘲るように笑いながら言い放つと、徐々に距離を詰めていくミリア。


「で、でも……」

「少しその珍しい瞳を褒められたからって良い気にならないことね。きっと公爵様も、お祖父様との約束で仕方なく来られただけに決まってるわ」


 どんどんミリアに追い詰められていく様子を見て、アリストは優勢になったとばかりに更なる言葉を投げかける。


「ヒスカリア。お前だって自分に公爵夫人が務まるなんて思っていないだろう? ヴァルガス公爵家は王家に連なる五大公爵家。付け焼き刃でどうにかなる家じゃない。だから、婚約者の座はミリアに譲るんだ」


「ええ!?」


 目を見開くヒスカリアの横で、ミリアは「当然だわ」と言わんばかりに頷いている。


「そしてお前はこの侯爵家に残り婿を取って、この家を継ぐんだ。そうすれば、この家も無くならない。お前にとっても悪い話じゃないだろう?」


「そうよ、お姉様! そうするべきだわ!」


 二人は不気味な笑みを浮かべながら、さも良いことだと、これが最良の策だと言わんばかりに提案する。


 その上、アリストは急に殊勝な表情でヒスカリアに向かって頭を下げた。


「これまでのことは、すまなかった」


「な、なにを……」


 その行動に、思わずたじろぐ。


(いきなり何を言い出すの? 違和感しか感じないわ。一体何を企んでいるの……)


 疑わしい視線を送るヒスカリアに気づかず、アリストはさらに続ける。


「お前を虐げていたのは、この家を守るため、ミリアにこの家を継がせたい一心からだったのだ。傷有りのままではろくな婿が取れない。そうなると、侯爵家を保てなくなってしまうだろう?」


 「だから、私も必死だったのだ」と、芝居がかった口調で笑みを浮かべながら言い募るアリストに、ヒスカリアの背筋はどんどん凍り付いていく。


(嫌な予感しかしないわ……)


「だが、今は傷もなくなったことだし、いくらでも相応しい婿を探すことができる。侯爵家にとっても、お前にとっても――」


「もう、お父様。そんなまどろっこしいこと説明しなくて良いわよ」


 アリストが説明を続けていると、痺れを切らしたミリアが父に苦言を呈した。


「しかし、ミリア……」


「お姉様に公爵様は、不釣り合いなのよ! だからさっさと『婚約破棄をします』って、そう言えば良いの!」


 強く言い放つと同時に、ミリアはヒスカリアの腕を無理矢理掴んだ。


「痛っ!」

「ほらっ、さっさと指輪を渡しなさいよ!」

「!?」


 怯えながらも必死に抵抗するヒスカリア。

 ミリアを振り払い、指輪を隠すように反対を向いて身を丸める。


 するとミリアは、今度は爪を立ててヒスカリアの肩を掴むと、さらに髪を引っ張った。


「痛い! イヤ! 放して!」

「だから、渡しなさいって、言ってるでしょ!」

「イヤッ!」


 逃れようとミリアを突き飛ばしたはずみで、ソファーとテーブルの間に落ちたヒスカリアは、這いつくばりながらも必死に逃げようとする。


 ところが最初は驚いて様子を見ていたアリストが加勢し、その行手を阻んだ。


 ここぞとばかりに腰に馬乗りになったミリアは、ヒスカリアの左腕を掴む。


「お父様は、右腕を押さえて! 早く!」


 言われたアリストは、慌てて右腕を含む右半身を押さえ込む。


「大体、お姉様みたいな、取り柄のない人間が、私よりも上に立とうだなんて、図々しいにも程があるの、よ!」


 足をジタバタして抵抗するものの、アリストの力も加わり、腕を解けないどころか、身動きができない。

 下手をすると、腕を脱臼されそうな、折られそうな勢いだ。


 そんな状態の中、行動に合わせるように、ミリアの言葉もどんどんエスカレートしていく。


「それにこの侯爵家だって、お父様に、さっさと爵位を渡しなさい! そうすれば、命だけは助けてあげるわ!」

 

 そう言いながらギリギリと腕をひねり上げていく。

 もちろん、アリストもそれに加勢している。


「痛い……やめて……お願い!」


「『お願い』じゃなくて、『わかりました』でしょ!」


 返事を待つよりも、先に指輪を得ることを優先したミリアは、腕をひねられながらも、拳を懸命に握りしめるヒスカリアから、無理矢理指輪を引き抜こうとした。


 その途端、指輪から白い光が放たれ、それと同時にミリアとアリストを吹き飛ばす。


 さらに指輪に触れたミリアの手は真っ赤になり、一瞬にして火傷のような爛れが広がった。


「いやああああああ~~~痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


 しかもその爛れは触れた両手の手首の方まで広がり、さらにじわじわとその面積を広げていく。


「痛い、痛いわ、お父様、なんとかして~~~~! 助けてお父様~~~!」


 泣き叫ぶミリア。

 けれど、アリストはあまりの出来事に固まったまま動かない。


 ヒスカリアも何が起きたのかわからず、ガタガタと震えながら、ミリアに引っ掻かれて血だらけになっている指輪をじっと見つめる。


 部屋にはミリアの悲痛な叫び声だけが響いていた――。




 それから少しして、ヒスカリアの目の前がチカチカ光り出し、床には大きな魔法陣が浮か上がる。

 徐々に魔法陣の上の光が大きくなっていく。


 目を凝らして光の中を見つめると、そこにはつい数時間前に見送ったはずの公爵様が初老の男性を従え現れた。


お読みいただき、ありがとうございます。

侯爵家父娘大暴れな回でした。

もちろん、ここからが本格的なざまぁターンです!

次回もお楽しみいただけますと幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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