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◆番外編 甘い時間

短いですが、恋愛なのに糖度低めな本編なので、糖度を少し足しました。

よろしくお願いいたします。

 話は遡って、事件が全て解決し、王宮から戻ったその夜のこと。


 レイヴィスは国王に呼び止められ、そのまま王宮に泊まることになり、ヒスカリアとジェインは二人で屋敷に戻ってきた。


 ほとんど何もしなかったはずのヒスカリアは、なぜかどっと疲れを感じて、馬車の中からすでに眠そうにはしていたものの、帰宅して応接室でジェインと話してる最中に眠ってしまった。


「……やはり疲れたか。まあ無理もない。今日までに色々ありすぎたからな」


 そう言いながら、ジェインは彼女を部屋に運ぶため、そっと近づく。

 ウトウトとするヒスカリアがあまりに可愛らしく、思わずその様子に見入ってしまう。


「可愛いな……」


 行きの馬車の中で、うっかりレイヴィスによって告白させられ、二人は両思いになった。

 自覚してからというもの、ジェインの中でヒスカリアへの想いは勢いを増して大きくなっていた。


 けれど、王宮で緊張したのか、馬車の中でも疲弊し切ってぼーっとするヒスカリアに話の続きはできず今に至っているのだ。


「魔力目的の政略結婚だったはずなのに、気づいたら君から目が離せない。どうしてくれるんだ? 好きだと伝えたばかりだが、なんだかお預けをされている気分だな」


 そう言って抱き上げようとさらに近づき、ヒスカリアの瞼がほんの少し動いたことに気づく。


 少し驚いたジェインはまじまじと彼女を見た。

 そして、彼女の頬や耳がほんのり赤く色づいていることに気づく。


「ほぉ、狸寝入りか? なかなかいい度胸だな」


「え!? ち、違います! ウトウトして気持ち良く眠っていたら、急にジェイン様の声が聞こえて……その、内容にびっくりして……」


「で、どこから聞いていた?」


 平静を装いつつも、聞かれたことに戸惑っているのか、慌てて起き上がりながら反論するヒスカリアに、ジェインは少し視線を逸らして問いかける。

 よくよく見ると、ジェインの耳も少し赤くなっている。


「魔力目的の政略結婚〜の辺りから……です」

「ほぼ全部じゃないか……」


 片手で顔を覆いながらため息をつくジェイン。

 けれど、気持ちを自覚していたジェインは、これまでと違っていた。


 顔を覆っていた手を取ると、おもむろにヒスカリアの隣に腰を下ろす。


「そうか。聞いていたならばちょうどいい。せっかく両思いになったんだ。私は君と仲良くしたい」

「仲良く……ですか?」

「ああ、そうだ」


 なぜか自信満々に笑顔で答えるジェイン。

 そんなジェインの回答に戸惑いながらも、ヒスカリアが問いかける。


「あの、それは、具体的にはどういう……」


 ところが言い終わる前に、腕を引かれたかと思うと、ヒスカリアの身体はジェインに抱き寄せられていた。

 至近距離で目が合った途端、ヒスカリアの顔が再び赤く染まる。

 そして赤くなったまま、ジェインに抗議の視線を向けた。


 けれどジェインは、じっとヒスカリアのアメジストの瞳を見つめ、ゆっくりと微笑む。


「ヒスカリア、君とこうしていられることが幸せで堪らない。これからも私と共に歩んでほしい」


 真っ直ぐ見据えながら、ジェインの懇願するような瞳に、ヒスカリアは思わず胸の辺りが熱くなる。


(こんな熱い視線を向けられて、こんなことを言われたら……)


「……はい。私でよろしければ、是非。ジェイン様のおそばにいさせてください」


 ヒスカリアが恥ずかしがりながら、ほんのり頬を上気させ、微笑む。

 すると、ジェインの表情がほんのりと色づいて、そのまま満面の笑みを湛えた。

 その表情があまりにも幸せそうで、ヒスカリアもつられて顔が緩んでしまう。


「一生君を大切にする。ヒスカリア……愛している」


 見つめたまま、ジェインにさらに距離を詰められ、ヒスカリアはうっとりしたまま瞳を閉じた。

 柔らかいものがヒスカリアの唇に重なり、離れていく。

 ゆっくり目を開けると、そこには愛しそうにヒスカリアを見つめるジェインの笑顔があった。

 そうしてそのまま強く抱きしめられる。


 ふわふわとした不思議な感覚にヒスカリアは再びウトウトとし始める。


(今まで何度も抱きしめられているはずなのに、こんなに心が満たされるのは初めてだわ。それになんだかほっとする。これが幸せなのかしら?)


『幸せにな』


 女神に最後に言われた言葉を思い出しながら、ヒスカリアはジェインの腕の中で、再び目を閉じたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

甘々回でした。

本当は本編内に挟みたかったのですが、完結させることを優先してしまい、番外編になりました。

番外編、もう一本書いていますので、また次もお楽しみいただけますと幸いです。


ブックマークや⭐︎の評価、いいねもありがとうございます!

大変励みになっております。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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