第92話 メロメロキス魔ライム
「カーミラさんまで、どうしてあんなことに……!」
マルクは、船内の廊下を逃げるように走りながら言った。
「……いつものことではありますけど…………」
不名誉にもそんなことを言われてしまうカーミラだが、事実なので仕方がない。
「と、とりあえず、師匠に何とかしてもらいましょう!」
ひとまず、マルクは師匠であるルドガーに助けを求めることにした。
何だかんだ言って、マルクはルドガーのことを頼りにしているのである。
「ええと、師匠のいる部屋は……」
「…………まるく」
その時、背後か名前を呼ぶ声がした。
「はい……?」
マルクは、立ち止まって振り返る。
「ライム! どうしてこんなところに?」
「……まるくぅ」
そこに立っていたのは、苦しそうな顔をしたライムだった。
ライムは、よろよろとした足取りでマルクの側へ寄ってきて、そのまま胸の中に倒れこむ。
「すごい熱……だ、大丈夫ですかライム!?」
そんなライムのことを受け止めながら、そう問いかけるマルク。
「だめ……ライムちゃん……むりぃ……」
「し、しっかりしてください!」
「なんか変なの……くるしいの……マルクの分のご飯も食べちゃったからかな……」
「なんてことを……!」
ライムの口から衝撃の事実を伝えられたマルクは、深いショックを受ける。
疲れて寝てしまったが、実は今日の夜ご飯を密かに楽しみにしていたのである。
「と、とにかく落ち着いてください。ベッドに横になって休憩を」
「もう……がまんできないっ!」
「ええっ!?」
先ほどまで弱り切っていた様子だったのに突然豹変し、マルクのことを床へ押し倒すライム。
「ら、ライム……? 何をするつもりですか……?」
「マルクのお口……うばっちゃう……!」
かくしてマルクは、とうとうライムにまで襲われてしまうのだった。
「すきっ……すきっ……マルク、だいすきっ」
「んむっ……ふぁっ……!?」
ライムによって強引に、舌と舌が絡まり合うほどの、熱い接吻をさせられるマルク。
「むちゅ……んっ……れろ、れろっ……!」
「あっ……やめへっ…………んんっ……!」
「……っぷはぁ……もうだめ、溶けちゃう……!」
そう言って、今度はマルクの体にぎゅっと抱きついた。
「あっ、あうぅぅ…………」
好き放題やられたマルクは、顔を紅潮させたまま、ぐるぐると目を回す。
ライムの手によって、完全に戦闘不能状態に陥っていた。
「弱ってるマルクもかわいい……」
「も、もうやめてくださいぃ…………!」
「ライムちゃん、マルクの赤ちゃんが欲しい、赤ちゃんつくりたい……どうやったらこの体でできるの……? スライムとは違うんでしょ?」
ライムの理性は消し飛び、完全に本能に支配されている。
「はぁ、はぁ……ど、どうして、こんなこと……!」
惚けた表情で問いかけるマルク。
「マルクも溶けちゃいそうなかお……いっしょにぐちょぐちょになろうね……仲のいいスライム同士はそうやって一つになるの……しんあいのしるし……!」
「ライム……そこまでぼくのことが……」
「すき、だいすき……! マルクはどんかんすぎ……」
「ご、ごめんなさい……ライムの気持ちに気付いてあげられなくて……でも今はこんなことしてる場合じゃ――」
「むちゅっ」
ライムは、マルクの言葉を遮るようして、再び熱い口づけをする。
柔らかいライムの舌にねぶられ続けたマルクは、自分の身体が内側から熱くなっていくのを感じていた。
「こっ、これ以上はだめです……! なんだか変な気分になってきました……」
「マルクがとろけちゃうまで、いっぱいちゅーしてあげる……!」
「ひどいですライム……も、もうやめてください……」
「やめない」
「はむっ!? んんっ……んーーーっ!」
それからマルクは、何度も何度もライムにキスをされ続ける。
「もうむりです……頭がへんになるぅ……」
「こんなにしてるのに……どうして赤ちゃんできないの……? まだ足りない……?」
「これ以上されたら……死んじゃいます……っ」
「そ、それはやだ。マルクに死んでほしくない……! ご、ごめんねマルク」
ライムはそう言って、今度はマルクのことを優しく抱きしめた。
「やってることが無茶苦茶すぎます…………」
「ああ、なんて美しいのでしょう……!」
その時拍手の音と共に、デネボラが姿を現して言った。
「デネボラ……さん……」
「ライム様、上のお口で赤ちゃんは作れませんわ。下のお●にお●●●●を●●て●いお●●●を●すんですのよ」
「……!?」
一瞬だけ助かったと思ったマルクだったが、一気に絶望のどん底へつき落とされる。
「それ、ほんと!?」
「ええ、もちろんですことよ」
――デネボラも、例に漏れずおかしくなっていたのだ。
「お手本をみせて差し上げますわ。――わたくしも混ぜてくださいまし!」
デネボラは顔を上気させ、スカートをたくし上げながら、マルクとライムに向かって言い放つ。
「そんな………………」
絶望的な状況を前に全てを諦めたマルクは、ライムに抱きしめられながらゆっくりと目を閉じるのだった。




