第77話 吸うのも吸われるのも魔力
「もう……無理です……っ! フハハハハ! 往生際の悪い奴らだ!」
「クラリス……はやく……して……っ! いい加減、諦めて体を明け渡したらどうだ?」
どうやら、マルクもライムも、魔王を抑え込みきれなくなってきているようだ。
「も、もう少しです! 二人とも頑張って下さいっ!」
皆に協力して貰い、限界まで魔力を高めたクラリスは、膝をついて祈りのポーズをする。
「我が主よ。悪しき者に裁きの光を……」
そして、長い長い詠唱を始めた。
「ごめんね……マルク……もうだめ……!」
「ら、ライム……?」
「ライムちゃん……ばくはつしちゃう……っ!」
「ば、爆発って何ですか!? こ、堪えてください……っ!」
「ククク……どうやら、覚醒の時が近づいているようだ」
「……マナドレインッ!」
「ぎゃああああああああああああ!」
ライムの体に入っていた魔王は、悲鳴を上げた。
「くぅっ……!」
限界を迎えたマルクは、地面に膝をつく。
「ボク……もう見てられないよっ!」
そう言って顔を手で覆い隠し、指の隙間からがっつりと二人のことを見るリタ。
「もう、アタシ達にできることはないわ。後は見守るしか……」
カーミラは、腕を組みながら言った。
「ごめんねマルク……今まで……ありがとう……っ」
「そ、そんな! 後もう少しなんですっ! 頑張ってくださいっ!」
「マナ……ドレインっ……!」
刹那、マルクは自分の体の中にある魔力が根こそぎ持っていかれるのを感じた。
ライムの放つ魔法が、明らかに暴走しているのである。
今までは、マルクが吸い出す魔力を調節することで何とかなっていたが、これでは対応しきれない。
「――だ、だめです! そんな一気に(魔力を)吸ったらっ!」
マルクが叫んだ瞬間、魔力を吸い込みすぎたライムの体が、宣言通り爆発した。
「ふぅ……。少し、落ち着いたかも」
「………………え?」
「安心して、もう大丈夫だよ、マルク」
気がつくと、マルクの体は地面から少し浮き上がっていた。
「な、なんですか……これ……っ!?」
ライムの体が成長したことで、相対的にマルクが持ち上がったのである。
「ライムちゃん、ナイスバディーバージョン!」
「意味が……わからなっ!?」
マルクは、成長したライムのはち切れんばかりの胸の中に、有無を言わさず埋められた。
急激に成長したせいで服のサイズが合わず、ピチピチで、今にも破れそうである。
――ああ、そんな。ライムまでこんなことに……!
マルクはライムのことを、パーティの中で唯一、対等に話せる友人だと思っていた。
そんな彼女が、カーミラやクラリスのような痴女に仲間入りしてしまったショックは、計り知れない。
「この体なら、しばらく魔王を抑え込める。マルクのことは、ライムちゃんが守るからね」
どうやら、魔王の人格は完全成長を遂げたライムによって抑え込まれていて、表に出ることが出来ないらしい。
「――二人とも、よく頑張りましたね! さあ、魔王よ、ライムさんの体から出て行くのですッ!」
クラリスは、ライムの体に、祈りの力で発動した聖なる魔法を放つ。
「ぐわああああああああッ! なぜだッ! なぜこの私がああああああッ!」
かくして、魔王は浄化され、天に召されるのかと思いきや、地面から現れた亡者達の腕によって地獄へと引きずり込まれるのだった。
「何がナイスバディーだぁ! ふざけるなあああああああああああ!」
最期にそう言い残して。
かくして、一行は魔王に勝利したのである。
「やったよマルク! ライムちゃん達……勝った! ヴィクトリー!!!!」
マルクのことを力の限り抱きしめて喜ぶライム。
「あぁ……そんな……むぐっ!?」
――あんなに小さくて安心できたライムが、今やカーミラさんに匹敵するナイスバディーに……。
「はやく……元のライムに戻ってください……」
マルクは揉みくちゃにされながら、そう呟くのだった。




