第70話 勇者エルネストの憂鬱 その5
「うーん……」
目覚めたルドガーは、自身が草原の上に寝転がっていることに気付く。
「これは一体…………?」
状態を起こし、ざっと周囲を見渡すルドガー。どうやら、町の外までやって出てきたらしい。
よく見ると、遠くにエルネストの姿が見える。
「あいつ……死にかけの人間を野外に放置していきやがった……!」
腹立たし気な様子で呟くルドガー。おもむろに立ち上がり、高速でエルネストに急接近する。
そして、エルネストの肩を鷲づかみにしながら問いかけた。
「――どこへ行くつもりなんだい?」
「………………っち」
「おい、今舌打ちしただろう!」
「そのまま魔物にはらわたを貪り喰われていればよかったものを」
「発想がえぐい☆」
エルネストは、ルドガーの手を振り払った後続けた。
「――危機は脱した。お前との共闘関係も解消だ」
「まあそう言わずに。ここら辺には魔物も出没するんだし、行き先次第ではしばらく一緒に行動した方が生産的と思うけど☆」
――たしかにその通りだ。
狂人に最もな進言をされたエルネストは、ムカつきながらも納得する。
「それで、もう一度聞くが一体どこへ行くつもりなんだい?」
「…………キーアだ」
現在、そこから魔王の半身と思しき存在の魔力が発生している。
「なんだって!? それじゃあ私と行き先が同じじゃないか☆!」
エルネストは再び舌打ちした。
「ふざけるな! 一体キーアに何の用がある!」
「え……? だって、マルクが私のこと待ってるからね☆」
「マルクだと……!?」
――あいつには利用価値がある。もう一度脅してパーティに引き込めば、めちゃくちゃになった現在の体制を立て直せるかもしれない。
マルクの名前を聞いて、不敵な笑みを浮かべるエルネスト。
「……言っておくけど、私の弟子に何かするつもりなら問答無用で殺すからね☆」
「フッ、問題ない。気にするな」
とエルネスト。
――魔王の力の一部を手にした今、本気を出せばこの女など敵ではない。
「だが、なぜマルクがキーアに?」
「もともと、お金がたまればそこへ薬を買いに行くつもりだったからね。ゴルドムをやっつけたおかげで大金が入ったらしいし、今はたぶんキーアに居るんじゃないかな」
「おい待て。マルクがゴルドムをやっつけただと? それは一体どういうことだ」
「……あれ、もしかして私、また何か言っちゃいましたか?」
――つまり、今自分がこうしてCランク冒険者に転落し、犯罪者として追われているのも、全てマルクが原因だということになる。
「クソがああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
エルネストは激怒し、唾を飛ばしながら絶叫した。
「クソックソックソクソクソッ!」
「ま、まあまあ、落ち着いて……☆」
「俺がこうなったのも全部……全部あいつのせいかッ!」
「いや、全部自業自得だと思うよ☆」
「グああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
怒り狂うあまり、謎の叫び声を上げるエルネスト。
――こうなれば、何としてでもマルクを再びパーティへ引き込み、全てを清算させてやらなければ割に合わない。
エルネストがキーアへ向かう、新たな理由が生まれた。
マルクに対して激しく怒るエルネスト。ルドガーは、どうにかしてその矛先をそらす方法を考える。
「あ、そうだ!」
「いきなり何だ貴様ァ!」
そう聞かれ、少し恥ずかしそうにしながら答えるルドガー。
「いや、実は離脱する前にエルネストのパーティの名義でお金を借りたから、たぶんそのうち、キミにも請求が来るよ☆」
「は?」
「これに関しては八割くらい私が悪いから、怒るならマルクじゃなくて私にしなよ☆」
「ふ、ふざけるなああああああああああああああッ! 十割貴様のせいだろうがああああああああああああああああああああああああああッ!」
エルネストは、憤死しそうな勢いでキレた。




