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第58話 温泉の都キーア

「ボク、マルクと一緒の部屋がいい!」

「あんた、さっきからそればっかりね」


 しばらく町を歩き回った末に、やっと空いている宿屋を見つけたマルク達は、部屋割りでもめていた。


「ぼ、僕はできれば一人部屋の方が……」


 マルクはそう言ったが、誰も聞いていなかった。


「マルクちゃんと二人で一緒の部屋になるのは、このアタシに決まっているでしょう?」


 腕を組み、さも当然のことかのように言うカーミラ。


「……身の危険を感じるので、それだけは遠慮しておきます」

「そんなっ?!」


 しかしマルクにきっぱりと断られ、カーミラはショックのあまり放心状態でその場に座り込んだ。


「当然の結果ですよカーミラ。日頃の行いを思い出しなさい」


 そこへさらに追い打ちをかけるクラリス。


「――と、いうわけで、マルクさんと一緒になるのはワタクシしかいませんね!」

「あ、ずるい! しれっと自分が割り込もうとしないでよクラリス! ……聖女のくせに、少し強欲なんじゃない?」

「ぐう……そう言われると……ぐうの音も出ませんね……!」

「出てるよね」


 リタは真顔で指摘した。


「あの、ちなみに……何人部屋が空いてたんですか?」


 そんな二人のやり取りを見かねたマルクが、たまらずそう問いかける。


「三人部屋と二人部屋だよ。……その中だと、マルクは二人部屋の方がいいよね?」

「は、はい。――身の危険を感じない人と一緒なら……」


 熱烈な視線を向けてくるカーミラから目をそらしながら、マルクは小さな声で呟く。


「じゃあ、もう単刀直入に聞いちゃうけど、マルクは誰と一緒がいいの? もちろんボクだよね?」

「え……? そ、それは……」


 突然の問いかけに言い淀むマルク。


「――確かに、この際マルクさんに決めてもらうのが一番良さそうですね。当然、ワタクシでしょうけど」

「恥ずかしがらないで良いのよマルクちゃん。やっぱり、この中で一番お●ぱいが大きいアタシが良いわよね?」


 三人は、一斉にマルクに詰め寄った。


「ぼ、僕が決めるんですか……?」

「そうして!」「ええ、そうよ」「そうです!」


 リタとカーミラとクラリスに囲まれたマルクに、もはや逃げ場は存在しなかった。


「あ、あわわわ…………っ!」


 三人の胸が目前に迫り、その威圧感におびえるマルク。


 少し悩んだ後、やがてゆっくりと口を開いた。


「ぼ、僕は……」

「「「僕は?」」」

「僕は……ライムと一緒がいいです……」


「ふぇ…………?」


 その言葉を聞いて、今までマルクの手を握ってうとうとしていたライムが目を覚ました。


 マルクは、きょとんとするライムの胸元に視線をやりながら続ける。


「その、ライムが一番安心するので……目のやり場にも困りませんし……」

「……どこ見て言ってるの。マルクのえっち!」

「ご、ごめんなさい! い、痛いですっ、ほっぺたつねらないでくださいっ!」

「ライムちゃんは、えっちなマルクと一緒じゃドキドキして安心できないし、夜も眠れないもん! 他の誰かにして!」

「そ、そんな……」


 失言によって、マルクはライムと同じ部屋になることを拒否されてしまった。


「さあ、覚悟してねマルク。もうこの三人の中から決めるしかないよ!」

「うぅ……」


 絶体絶命の状況に陥ったその時、マルクはふと自分がかつて言った言葉を思い出した。


 ――そういえば、あの時の約束を果たしていない。


 そう思ったマルクは、覚悟を決めてゆっくりと口を開いた。


「あの……それじゃあ――カーミラさんがいいです……」

「へ……?! あ、アタシ? 本当に?!」

「…………はい」


 あまりにも予想外のことに、言葉を失うリタとクラリス。


 こうして、部屋割りが決まったのだった。



 その後、一行は部屋に案内され、マルクはカーミラと二人きりになる。


「ほ、本当にアタシと一緒で良かったのかしらマルクちゃん?」

「……良いか悪いかで言えば……良くないです」

「そ、そうよね……でも、それならどうしてアタシと一緒がいいなんて言ったの?」

「そ、それは…………」


 マルクは、それ以上何も言わず、おもむろに自分が着ていた服の首元を緩めた。


「まままま、マルクちゃん!?」


 あまりにも突然の行動に、取り乱すカーミラ。


「……初めて会った時、僕はクラリスさんとカーミラさんの争いを収めるためにこう言いました――血だけなら吸わせてあげるって」

「そ、そういえば……!」

「覚えてなかったんですか? てっきり、カーミラさんは今まで僕の血を吸うために付いて来てたんだと思ってました」

「まあ……それもあることにはあるけれど……」

「煮え切らないですね。らしくありませんよ?」

「…………っ!」


 突然マルクに迫られ、ぐるぐると目を回すカーミラ。

 

 攻めるのは得意だが、攻められるのには弱いのだ。


「――吸っても、良いですよ」

「へっ?! えっ?!」

「今なら止める人は誰も居ません。カーミラさんの気がすむまで、僕の血を吸ってください。――僕も、ちょっと貧血になるくらいまでなら我慢します。だって、カーミラさんにはたくさんお世話になりましたから!」

「へえええええええええええええぇぇ!?」


 突然積極的になったマルクに、カーミラの理性は崩壊寸前だった。


 ――どうするカーミラ?

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