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第57話 異変

「あばばばば!?」


 間違えて呼び出した大量の金貨に埋もれるクラリス。


「何やってるのよ……」


 カーミラは呆れつつも、クラリスの腕を引っ張ってその中から助け出した。


「うぅ……本当に大丈夫なんでしょうか……?」


 馬車の中から一部始終を見ていたマルクは、不安のあまり呟く。


「出す物を間違えました……無念……」

「ちょ、ちょっと、待ちなさい! どうして目を閉じているの!? クラリス! クラリーーースッ!」

「がくっ」


 こうして、クラリスは早くの戦闘不能状態に陥ってしまったのである。


「もしかして、ライムちゃんたちピンチ?」

「そんなことより……来るよッ!」


 リタが叫んだ。そうこうしている内に、オークが目前まで迫ってきている。


 数にして十数体はいるだろう。


 一行は、気を取り直して戦闘態勢に入る。


 ――しかし、結局のところオークの群れと戦闘になることはなかった。


「…………あら?」


 オークたちは特に攻撃してくることもなく、走って脇を通り抜けていく。


「みんな……怖がってる。……にげてるみたい」


 ライムが、そんなオークたちを横目で観察しながら言った。


「逃げてるって……一体何から?」

「それはわからない」


 リタの問いかけに対し、首を横に振りながらそう答えるライム。


 やがてオークは全員通り過ぎていったが、その後から何かが追いかけてくる様子はない。


「あいつら……キーアの町がある方から来たよね……」


 リタは、先の方を見つめながら不安げに言った。


「まったく、拍子抜けね……」


 武器をしまいながらため息をつくカーミラ。


「――っは! ワタクシは何を!? …………そうだ! オーク達よ覚悟なさい!」


 その時、クラリスが再び騒ぎ始めた。


「…………一度ぶん殴っておこうかしら、あんたのこと」


 今さら目覚めたクラリスを見て、カーミラは静かに怒りを燃やす。


「ひ、ひぃ!? も、申し訳ありません……! というか、暴力反対!」

「もういいわ……」


 カーミラは呆れてがっくりと肩を落とした。


「――そういえば、オーク達が居ませんね。一体どこへ行ってしまったのですか?」

「……みんな、アタシ達には目もくれず逃げていったわ」

「なんと……! 一体どうしてしまったのでしょうか……」

「さあね。それよりあんたは、派手にぶちまけた金貨をどうにかしなさい」

「そ、そうでした!」


 クラリスは大慌てで金貨をかき集め、それを魔法で再び異空間へ送った。


「おーい、あんたたち、早く馬車に戻ってくだせえ。――おかげで馬が動き始めましたぜ!」

「みなさん、ありがとうございました!」


 馭者とマルクは、馬車から皆へそう呼びかける。


「…………結局、ボクたち何もやってないよね」

「マルクにいいとこ見せれなかった……」


 こうして、少しだけ不穏な空気を残しつつも、危機は去ったのだった。



 翌日の昼過ぎ、一行を乗せた馬車はとうとうキーアへ到着する。


「やっと着きました! ――ここまでありがとうございました、馭者さん!」

「いえいえ。……それじゃあ、あっしはこれにて」


 マルク達は、馭者にお礼をした後で町へ降り立った。


 キーアは、大きな湖を渡った先にある、山のふもとの町だ。


 至る所から湯気が立ち上り、町中は活気に満ち溢れていた。


「見たところ、特にこれといった異常はなさそうですね。ワタクシ、安心しました!」

「ボク、早く温泉に入りたい! マルクも一緒に入ろうね!」

「それは無理です。諦めてくださいリタお姉ちゃん」


 にぎやかな温泉の町へやってきて、どこか浮かれた様子の一行。


「アタシも、汗でべとべとだわ。……早いところ、宿を取りましょう?」

「ライムちゃん、もう疲れた。ねむい。とけそう」

「うふふ、そうね。ゆっくり休むといいわ」

 

 カーミラは、長旅で疲れた様子のライムに優しく微笑みかけた。


「ねえねえ、クラリス……カーミラってあんな優しい感じで笑うの? ボク、初めてみたんだけど」

「ワタクシも少し驚きました。これは……何か不吉な事が起こる前兆かもしれません……!」


 リタとクラリスは、そのやり取りを見てひそひそと話し合う。


「あんた達……アタシのことを一体何だと思っているのかしら?」

「サキュバスです」「ヴァンパイアじゃないの?」

「……間違ってはいないところが腹立つわね……!」


 拳を握りしめ、わなわなと震えるカーミラ。


「と、とにかく、宿屋を探しましょうか。僕も、もう疲れちゃいました!」


 マルクはやや不穏な空気を感じ取り、強引に話題をもとに戻すのだった。

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