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第29話 ダフニの路地裏

 服屋でライムが着る服を購入したマルク達。


 現在は、ひとまず依頼をこなすために、ライムを宿屋まで送っている最中である。


 さすがに、か弱い少女を冒険者の仕事に巻き込むわけにはいかないという話になり、ライムには宿屋で留守番をしていてもらうことになったのだ。


「大丈夫ですか、ライム?」

「マルクがつかんでてくれないと……ころぶかも」

「離しませんから、気をつけて歩いてくださいね」


 マルクは、ライムの手を引きながら活気のある大通りを進んでいく。


「とても微笑ましい光景ですね……!」


 その様子を少し後ろから眺めていたクラリスが、二人の後ろ姿を眺めながら言った。


「ええ。すごく可愛らしくて……二人の仲をめちゃくちゃに引き裂いてあげたい気分になるわ……!」


 それに対しカーミラは、うっとりとして舌なめずりをしながらそう答えた。


「趣味が悪すぎて引きます。昇天してください」

「あら、あなたは可愛いものを見ても虐めてあげたくならないのかしら?」

「なりません。……本当に、あなたと話していると精神がすり減りますね」

「ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわ」

「どう受け取れば褒め言葉になるというのでしょうか……理解に苦しみます」


 クラリスとカーミラは、相変わらずいがみ合い、互いを牽制し合っていた。


 マルクは振り向きざまにその様子を見て、苦笑いする。


「……ねえ、マルク」

「はい? どうかしましたか?」

「後ろのふたり、なんて呼ぶの?」

「名前ですか? そういえば、ちゃんと説明していませんでしたね。金髪のハイエルフの人がクラリスさんで、もう一人の青い髪をした人がカーミラさんです」

「……カラミスとクーリラ?」

「説明したそばから間違えないでください……クラリスさんとカーミラさんです」

「……わかった。なまえ、おぼえとく。くらりすとかーみらくらりすとかーみらくらりすとかーみら…………」


 ライムは、それからしばらくの間二人の名前を小さな声で復唱し続けていた。


「……マルク」


 しかしその後、ぴたりと復唱をやめて再びマルクの名前を呼ぶ。


「…………? 今度はなんでしょう?」

「やっぱり、ライムちゃんもマルクの役にたちたい」

「……留守番……嫌なんですか?」


 ライムはこくりとうなずいた。


「ライムちゃんだって、たたかえる。じゃまにはならない!」

「そ、そう言われても……小さい女の子にたたかわせるのは心苦しいといいますか、なんというか……」


 ごにょごにょと言葉を濁すマルク。


「見た目なんて、マルクと大してかわらない!」

「それは……そうかもしれませんけど……」

「――もしわたしが、スライムのままだったら、いっしょに連れてってくれたの?」


 ライムはふと、そんなことを口にする。

 

「その場合は……そうですね。一人にしておく方がかえって危ないですし、何より瓶に入れて持ち運びができますから」

「……なるほど」


 一瞬納得しかけたライムだったが、その後首をぶんぶんと振って続けた。


「そういうことじゃない! せっかくニンゲンみたいに――マルクと同じ姿になれたのに、何もできないのはいやっ!」

「そうは言われましても……」


 マルクはそこまで言いかけて、ライムが前と同じように頬を膨らませていることに気づく。


「あの、お願いですから機嫌を直し「もういい! マルクなんて知らないっ!」


 そして、再び繰り返されるいつかと同じ光景。


 ライムはマルクの腕を振り払って走り去ってしまった。


「ま、待って!」


 慌ててその後を追いかけるマルク。


「……あら、ケンカかしら? うふふ、仲がいいのね」


 その様子を背後で眺めていたカーミラが、そう呟く。


「またワケの分からないことを……!」

「アタシ達も追いかけた方がいいんじゃない? なんでも、この町では最近人攫いが横行しているそうよ」

「そ、そういうことは早く言ってくださいっ! 大変です! 早くしないと……!」

「別にマルクちゃんがいれば大丈夫だとは思うけれど……ね」


 こうして、先頭を走るライムを追いかけるマルクと、それをさらに後ろから追いかけるクラリスとカーミラが縦に並んだ。


 慣れない人間の体で走り続けていたライムはへとへとになり、息を荒くしながら路地裏へ逃げ込む。


「はぁ……はぁ……」


 ――やっちゃった。


 それからすぐに後悔が込み上げてきて、ライム路地裏でひざを抱えて座りこんだ。


 ライムは、涙がこぼれないようにぎゅっと目をつぶる。


 ――魔力による暴走から解放されて以降、前より色々な考えが浮かんでくるようになった。気持ちが安定せず、わがままばかり言ってしまう。


 ライムは、自らの感情の変化に戸惑っていた。


「ごめん……なさい……」


 マルクの力になりたいと思っているのに、邪魔ばかりしていることに対して罪悪感が湧いてくる。


 ライムが震える声でつぶやいたその時。


「やっと見つけました」


 すぐ近くでマルクの声がした。

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