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第28話 ぶかぶか

「えっ…………」


 部屋の中へ足を踏み入れたクラリスは、全裸の少女を抱きかかえるマルクの姿を見て固まる。


「あ、あの、これは別に深い意味とかはなくて――」

「ええええええええええええええええええええええ!?」


 そして、両目をまん丸と見開いて驚愕した。


「ままままマルクさん!?」


 理解が追いついていない様子のクラリス。


「待ってくださいクラリスさん! ご、誤解なんですっ!」


 マルクは必死に弁明をしようとする。


「マルクといっしょに寝るの、きもちかった」

「このタイミングでなんてことを言うんですか……!?」

「マルクに、こんな体にされちゃった」

「もうわざと言ってますよね!?」

「…………? なんのこと?」

「あうぅ……っ!」


 激しく動揺するクラリスの前で、次々と問題発言を重ねていくライム。


「うええええええええん! マルクさんが不良になってしまわれましたああああああああっ!」

「クラリスさーんっ!」


 脳内で妄想を爆発させたクラリスは、顔を真っ赤にして叫びながら部屋を飛び出していった。



 それからしばらくして、マルクの部屋には事情を理解したクラリスとカーミラが集まってきていた。


「ごめんなさいマルクさん……ワタクシの早とちりでした……」

「いえそんな……誤解されるような状況だったことは間違いありませんし」


 マルクは、落ち込むクラリスをなだめながらそう言った。


 「そもそも、子ども同士でえっちなことに発展するわけないじゃない。マルクちゃんくらいの歳なら一緒にお風呂に入ってたって何の問題もないわ」

「確かに……! それもそうですね!」


 ――問題大ありだと思います。


 マルクは心の中でそう思ったが、余計なことを言うと自分の立場が不利になりそうだったので、黙っておくことにした。


「それに、マルクちゃんだってアタシみたいに大人なオンナの方が好きでしょう?」


 前屈みになって露骨に胸を強調しながら、そう問いかけるカーミラ。


「……ノーコメントでお願いします」


 マルクは視線をそらしながらそう答えた。


「うふふ、そんなに照れちゃって……」


 その様子を見て、カーミラは悪戯っぽく笑う。


「そういえば……ライムさんはどこへ行ってしまわれたんですか?」

「とりあえず、脱衣所の方でアタシの服を着てもらっているわ。…………それにしても、スライムにちょっとした変身能力があるってことは知っていたけれど、まさか人間にまでなれるなんてね」

「やっぱり……下水道で起きた魔力の異常と何か関係があるんでしょうか? スライムが人間になるなんて話、聞いたことがありませんし……」


 口元に手を当てて考え込むマルク。


「もしくは、単純にあの子が特別だったかのどちらかね。赤い色のスライムなんて珍しいし、他と違ってもおかしくないわ」

「スライム……身近なようでいてなかなか奥が深いです……! ワタクシ、気になります!」


 わいわいがやがやとスライムの話題で盛り上がっていたその時、脱衣所の方から、カーミラの服を着たライムが出てくる。


「……着替えおわった。ぶかぶか」


 ライムは、服の胸元を引っ張りながら続けた。


「――とくにここらへんが」

「アタシ、おっぱい大きいもの」

「なるほど……これはおっぱいのぶかぶか……」


 カーミラの胸をじっと見つめるライム。


「わたしもそれになれるように、がんばってみる」

「あら、お得意の変身能力でアタシみたいな体にもなれるのかしら?」

「うん。今はこの体に慣れてないからむずかしいけど……いつかきっと。……めざせ、ライムちゃんないすばでぃーばーじょん!」


 ライムはそう言いながら、袖の余った両手を上げた。


「ライムさんに変なことを吹き込まないでください。この破廉恥サキュバス!」

「別に、アタシは何も吹き込んでなんかいないわよ。第一、破廉恥なのは早とちりして泣きながら部屋に戻ってきたあなたのほうでしょう?」


 ばちばちと火花を散らす二人。


「――どっちもおおきい……」


 両者の胸元を見ながらそんなことを呟くライム。


「と、とにかく、僕はライムに合う服を探しに行ってきますね!」


 マルクはその間に割り込んで、話をそらした。


「……あら、それならアタシも行くわ。可愛くコーディネートしてあげる」

「でしたら、ワタクシも参りましょう。このサキュバスを野放しにはしておけません!」

「結局……こうなるんですね……」


 こうして、一行は宿屋を後にし、ライムの服を探すために街中へ繰り出したのであった。


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