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第27話 ライムちゃん

「きゃああああ!?」


 マルクは驚きのあまり悲鳴を上げた。その声で、腕にまとわりついていた少女が目を覚ます。


「ほえ…………? なに……?」


 眠そうな目でマルクにそう問いかける少女。


「ご、ごめんなさいっ! 僕は何もしてません! 無実ですっ!」


 マルクは赤くなった顔を両手で覆いながらそう叫んだ。


「うん、そうなんだ……?」


 しかし、少女の方は特に気にする様子もなく、全裸のまま起き上がると、おぼつかない足取りで部屋の中を歩き回り始める。


「あの……あなたは誰なんですか……?」


 一向に体を隠そうとしない少女を見て、不思議に思ったマルクがそう問いかけた。


「だれって……ライムちゃんだよ? なまえ、マルクがつけてくれたのにもう忘れちゃったの……?」

「え…………?」


 少女はぺたぺたとマルクに歩み寄り、目を潤ませる。


「ひどいよ……」

「でも……ライムはスライムですよ……? ……そういえば姿が見当たりませんね」


 マルクは目の前にいる少女を放っておいて、ライムを探し始めた。


「ライムー? どこ行っちゃったんですかー……? 隠れているのなら出てきてくださいー……」


 それを眺めていた少女は、段々と不機嫌そうな表情になっていく。


「わたし、ライムちゃん」

「おかしいな……どこにも見当たりません……一人? じゃ危ないのに……」


 やがて我慢の限界が訪れ、少女は頬をふくらませながら言った。


「だから! ライムちゃんなら目の前にいるじゃん! もういい! マルクなんて知らないっ!」

「――え? ま、待ってくださいっ!」


 マルクに背を向けて走り出し、部屋の外へ出ようとする少女。


「せめて服を――」


 その時、少女は部屋に置いてあった姿見の前で、ぴたりと足を止めた。


「…………?」


 そして、そこに写った自分の姿を見て、きょとんとした顔をする。


「どうかしましたか……?」

「……だれ?」


 自分の顔をぺたぺた触りながら、首をかしげてそう問いかける少女。当然、鏡の中の自分は答えてくれない。


「わたし……?」

「まさか……本当にライムなんですか……?」

「だから、ずっとそうだって言ってる」

「ご、ごめんなさい……」


 未だに動揺しつつも、マルクは目の前の少女が昨晩名前をつけたスライムのライムであることを理解した。


「でも……どうして人間の姿なんかに? それもスライムの能力なんですか?」

「わたしにもよく分からない。でも、だいじょうぶそうだからどうでもいいと思う」


 ライムは、自分の手足を興味深そうに観察しながらそう答える。


「どうでも良くはありません……だって、自分の姿が変わっちゃったんですよ?」

「わたしはスライムだから……姿が変わってもちょっとびっくりするくらい。べつに悲しくない」

「そうなんですか……? 流石にスライムの心は分かりかねます……」

「あ――――」


 その時、ライムがよろめきマルクの方へ倒れ込む。


「わっ!?」


 驚きながらも、ふらついたライムを両手で抱き止めるマルク。


「だ、大丈夫ですか……?」

「うん、ありがとう。まだニンゲンの体になれてないみたい」


 ライムはそう言って微笑みながら、マルクの顔をじっと見つめた。


「――そうだ」

「今度はなんでしょう……?」

「マルクは恩人。力になりたいって思った。だからニンゲンの姿になったのかもしれない」

「そんなこと……ありえるんですか?」

「スライムはほかの生き物の影響をよく受けるの。きのう、マルクにくっついて寝たからマルクの想いを感じ取ったのかも」

「僕の……想い……?」

「そう。つまり、この体はマルクのよくぼーがたっぷり詰まったぼでぃー。そしてライムちゃんはマルクの力になりたい。だから……好きにしていいよ……?」

「ヘンな言い方をしないでくださいっ! ――た、たしかに小さい方が安心できますけど……」


 マルクは自分の理性を必死に働かせることで精一杯だった。


「――はっ! 僕は何を言ってるんだ……!」

「マルク、さっきから顔が赤くてつらそう。だいじょうぶ?」

「ひゃうっ!?」


 ライムのひんやりとした手が、マルクのほおに触れる。


「ぷにぷに。スライムなみ。おすみつき」


 マルクのほおを優しく引っ張りながらそう呟くライム。


「やめてくださいぃ……お願いですから服を着て……!」

「でも、そんなものは持ってない」

「――言われてみれば」


 その時、突如として部屋の扉がノックされた。


「マルクさーん? 朝ですよー! 起きてください! 一緒に日の光を浴びましょう!」


 扉の向こうから聞こえてきたのは、クラリスの声だった。


「ま、待ってくださいっ! ――今はっ!」

「良かった、すでにお目覚めなんですね! ……あれ、扉に鍵がかかっていません。無用心なのはよくありませんよマルクさん!」


 ――しまった。部屋の鍵をかけ忘れていた。


 マルクが気づいた時にはすでに遅く、ゆっくりと扉が開き始めていた。


「おはようございます! マルクさ――――」


 そして、そこからクラリスが顔を覗かせる。

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