ママがかぜをひいたひ
小さなお子さんがいらっしゃる家庭では、こんな日常があるのかもしれませんね。
ママがかぜをひいた。
こほんとこほんと、せきがきこえる。
かいしゃからかえってきたパパはわらっていった。
「へぇ、めずらしい。おにのかくらんだな」
「おに?ママが?うふふふふ。おにのかくらんってなあに?」
いもうとのめいこがパパのふとももにだきつきながらきく。
「おにみたいにじょうぶなひとがびょうきになることだよ」
もう!パパもめいこも、のんきなんだから!
ママは、おねつがあるんだよ!
おねつがあると、すごくくるしいんだから!
ママは、おとといあたりから、しずかで、げんきがなかった。
わたしは、しんぱいでしんぱいでしんぱいで。
だって、いつもママはおおごえでわらって、ふんふんふんっておうたをうたってげんきだったから。
だから、トイレにおきたときにそっとみたの。
きのうもよるおそくまで、たいそうぎにゼッケンをつけていた。
そのまえの日は、せんたくものをたたんでいた。
パパとめいこにはまかせておけない!
ママをたすけなきゃ!
わたしは、ふとんにねているママのそばにいった。
おかおがあかい。
「マ…マ」
ママがめをすこしあけて、わらった。
「ようちゃん。ママ、だいじょうぶだから、ごはんたべておいで」
「ママ、わたしおてつだいしたい。ママのそばにいたい」
「だめ。かぜがうつったらたいへんでしょう」
「マスクする。てあらい、うがいもする」
ママは、すこしかんがえてわたしのほうをみた。
「じゃ、あまえちゃう。おみず、ちょうだい」
「はい!」
わたしは、いそいでれいぞうこをあけた。
すると、おみずとオレンジジュースがはいっていた。
『おみずより、オレンジジュースのほうがおいしいよね』
わたしは、コップにオレンジジュースをそそいだ。
ちょっとこぼしちゃった。
でも、はやくもっていかなきゃ。
ママがまっている。
ママは、オレンジジュースをみておどろいた。
けれど、すぐににこっとわらって、のんでくれた。
そして、わたしはママがいつもしてくれるように、やさしくおでこをなでた。
ママ、はやくげんきになって。
もっともっとなにかしたい。
「ママ、さむくない?」
「だいじょうだよ」
こほん。
わたしは、じぶんのふとんのもうふをひっぱりだした。
おもいから、ずるずるとろうかをひきずっている。
するとおふろからでてきたパパが、もうふをひょいともちあげた。
「ようこ。ほこりがたつだろう。それに、ママはちゃんとあったかくしているからだいじょうぶだ」
わたしのもうふは、いらなくなった。
「オレンジジュースをもっていったのは、ようこか?おくすりをのむときは、おみずだぞ」
「おねえちゃん、まちがえちゃったの?」
パパといっしょにおふろにはいっていためいこが、わたしをのぞきこむ。
「あっ、それから、ジュースこぼしたら、ちゃんとふきんでふいておかないとだめだぞ。気をつけような」
ぽろっ。
なみだがこぼれた。
いちどながれると、とまらなくなって、わたしはうわんうわんないた。
ママがよろよろとへやから出てきた。
「ようちゃん。ありがとう。ママ、うれしかったよ」
ママは、わたしをぎゅっとした。
「ママ、ママ~!」
「ありがとう。うれしかったよ」
そうしたら、パパがママとわたしをいちどにぎゅっとした。
「ようこ。ごめんな。パパがわるかった。せっかくてつだってくれたのに」
パパのてがあったかい。
「めいこも~」
めいこが、わたしのそばにむりやりわりこんできた。
「ふふ。くすぐったいよ、もう」
わたしは、わらってしまった。
「ママ、はやくかぜなおしてね」
「うん」
「よし!いまからパパがママのためにとくべつしょうがゆをつくるぞ」
「わたしもてつだう」
「OK!めいこもてつだってな」
「うん!」
ママが、かぜをひいたひ。
わたしは、ふらふらして、オレンジジュースもおくすりをのむから、あまりのめなくて、おいしくないしょうがゆをのんだママがかわいそうっておもったけれど、ママはずっとわらってた。
わたしは、ママがわらってくれたから、すごくほっとした。
ねえ、ママ、あしたはいっしょにねられる?
おわり
最後までよんでくださり、ありがとうございました。