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レイ戦記  作者: 倉羽瑛太
10/14

新第二部 新たなる出会い

1 

レイは、イーサン「湾」を離れ、ニルヴァに潜り込んでいた。ほとんど移動中の記憶はなく、彷徨っているうちにニルヴァの辺境に入った、が正確だった。あの場所から一刻でも早く離れたかったのかもしれない。遠くから、兵士崩れのゴロツキが2人、向かってくるのが見えた。レイはやっと地に足がついた感覚になった。

「・・・俺は、いつの間に、こんなところに・・・!敵!隠れる場所は、ないな。どうやり過ごすか、いや、戦うか?冗談じゃない、あれからほとんど寝てもいないのに?」

考えのまとまらないうちに2人が絡んできた。

「ようよう、ニイチャン?見ねえ顔だな?この辺りがニルヴァ中央から俺ら警護団に委託された土地だってのは、知ってるな?」

「へっへっ。ミリタンの残党軍からここ一帯を守ってやってるのは、俺らだぜ?委託料、払ってもらおうか?」

だが、レイには当然金がない。

「持ち合わせなどない。それに、イーサンからは誰も来ないのか?」

イーサン、という単語で2人が爆笑した。

「イーサン???あんな雑魚の国ならこの前の攻撃で全滅しただろうがよ?それとも、お前、まさか?」

「ちょうどいいや、そんな雑魚なら吊るして俺らの成果にしようぜ!どうせ住民にはミリタンかイーサンかなんて分かりゃしねえんだ!!」

襲い掛かる2人。レイは、ピンチを自覚したが、体は驚くほど軽かった。

(俺は、戦えるのか・・・?こんなコンディションでも??)

2人の初撃を難なく回避したレイは、3段覚醒でも発動してさっさと倒そうとした。しかし、ここで違和感を覚えた。

「炎が出ない???いや、なんだこれは?・・・がはっ」

レイの身体から出ていたのは、いつもの赤く輝く炎ではなく、黒く弱い炎だった。しかも、身体能力がほとんど向上せず、そのため攻撃をモロに食らってしまった。

「二段解放どころか、普通の発動状態並じゃないか、これじゃ・・・いや、仕方ないな。ショットガン!!」

弾数は普段より少ないが、それでも相手のレベルも低いため、直撃はした。

「ぐおおお・・・??何だこの炎、全然熱くもないし、ダメージもない。やはりイーサンは雑魚だ!!!」

「くらいな、コンビアタックパンチ!!」

「くっそ・・・」

レイは、どうにか回避した。普段ならどうでもよい攻撃も今や致命傷になる。苦し紛れに、ただの蹴りを入れた。すると、予想外の事態となった。吹き飛んでいったのである。

「ぐわああああああああ!なんて蹴りだ!!!」

「ぐっこいつ・・・体術は優れているのか?大丈夫か兄貴!!!」

レイは、のたうち回る相手を見て、訝しんだ。自分の今の蹴りは能力すらものせていないただの蹴りである。苦しんでいる敵は演技には見えない、そうあれは非エナジー技術者が攻撃を受けたかのような・・・

 だが、考える間もなくもう1人が襲ってきた。今度も蹴りを試しに入れてみる。

「なんだあ?こんな蹴りで兄貴が吹き飛ぶわけが・・・ねえだろうが!!」

全く通用せず、反撃を受けるレイ。やはり、ガードの精度も格段に落ちている。

「ぐっがはっ・・・何がどうなって・・・待てよ?」

「兄貴!動けるか!!」

「おうよ・・・仕返しだ・・・挟み込んで潰すぞ・・・そんな炎など、こけおどしが!」

2人のうち、兄貴と呼ばれる方に炎を集中させたが、やはり効果はないように見えた。だが、レイはすぐに合点したのである、彼は自身が思っている以上に、戦闘人だった。そのまま兄貴の方に突っ込んで、

「ただの蹴りだが!!!」

「舐めるな・・・・ぐわああああ・・・・」

ただの蹴りで兄貴は息絶えた。

「あ、兄貴いい!!!くそっどんな能力だ!!!」

レイは答えなかったのは、当然秘匿のためもあったが、急に限界が訪れたためであった。やはり放浪の疲弊が祟っていた。

(この炎は・・・多分、敵の防御力を焼くんだ、それで、ただの蹴りでも倒せた・・・エナジー技術の無い人には、ただのエナジー蹴りでも致命傷になるからな・・・だが、こちらの能力も生身並になってしまっては、リスクの方が大きすぎる、すぐに防御力を焼くわけでもなさそうだし・・・それに)

今は、弟を倒すだけの力はレイには残っていなかった。

「仇いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

だが、次の瞬間、彼は斬り伏せられていた。

「誰だ!!??」

大柄の男が立っていた。

「敵意は感じない・・・ニルヴァの人間じゃないのか?」

レイの問いに対し、男はこれまた長大な刀を腰に収め、敵意がないことを示してから、こう答えた。

「お前も、ニルヴァ人ではないな?俺は、ムサシ、究極刀大和と共に、グレイヴへの復讐を成し遂げるミリタンの剣豪だ。」

その力強さにレイは安心し、信頼しようと直感で決めた。

「俺は・・・」

そこで気絶してしまった。ついに緊張の糸が切れ、疲労が限界に達した。

 ムサシは、そんなレイを見て軽く嘆息し、彼の隠れ家まで運んでやった。

2 

 レイは、3日ほど眠っていたが、ようやく目を覚ました。

「いや、本当にすまない、自己紹介もできないで。俺は、レイ。イーサンの生き残りだ・・・俺も、グレイヴへの復讐を誓い、はした。」

「その点では同士だが、歯切れが悪いな?」

「貴方は・・・ムサシさんは、グレイヴを見たことがありますか?」

「いいよ、堅苦しいのは抜きで、ムサシで・・・いや、直接はないな、側近のカナタとしか戦ったことはないが・・・」

ここでムサシが胸の傷を見せた。

「まあ、負けた。どうにか奴の剣を破壊するので手一杯だった・・・この傷は手刀だ、剣は飾りだった。」

それでも、まともに戦えただけでも、レイには驚愕であったし、賞賛すべきことだった。そのうえで、あえてこう言った。

「グレイヴは、カナタのさらに数段上・・・いや、カナタにすら歯が立たなかった俺が言うことでもないのかもしれないけど、実際に見て、そう感じた・・・」

「お前さん、俺の見立てではもう少し強いと思ったがな?あのゴロツキ組だってなかなか強くて、同時には相手できないと思ってたしな・・・自信持てよ?それで、お前さん、この後、どうするつもりだった?」

「大陸に、俺の師匠、とも呼べる人がいる。会いに行って、修行して、グレイヴへの復讐を果たす。だが、船がなくて・・・」

ここでムサシは、我が意を得たりとニヤリと笑った。

「そこで、だ。ちょっとお前にはつらい話かもしれないが、イーサン湾から、間もなく第一号の大交易船が出る。そこに乗る計画を俺は立てている。」

「また、あそこに戻るのはつらいが、そんなことは理由にならない。どうやってだ?密航か?」

「いや、大手を振って正規に乗り込む。俺もお前も、ニルヴァに顔は割れてない。幸か不幸か、グレイヴ一行の歯牙にもかからなかったからな。ま、計画ってのはこの前提が成り立っているからこそだ。まず、これを見てくれ。」

ムサシが差し出したのは、一枚のチラシだった。

「警護兵、募集、か・・・こういうのは、軍の中心がやるんじゃないのか?」

「裏があるのさ。この船は、捨て駒さ。ニルヴァと正式な国交を結んでいる国なんか、大陸にはない。情報も少なくて、大陸は強力な軍事力があることしか分かっていない。まあ、情報収集と、可能なら拠点設置が目的なのさ。失敗前提のな。本命は、この船がドタバタしてる裏でコッソリ動くという寸法さ。だから、こんなに緩い。」

「詳しいな?」

「この辺り一帯の首長に尋ねたのさ。ちょっと脅しはしたがな?ともかく、計画としては、ニルヴァ中央も手を出しにくい規模となったゴロツキ軍団を俺達でぶちのめして、首長に実績を売り込んで、堂々と乗船。なに、最悪脅せばいいさ。片道でも構わない、謝金もいらないなんて言えば、通るだろう。大陸到着後はどうせ船団は壊滅するから、うまく逃れて自由行動!」

レイはムサシを見た目で判断したことを反省していた。肝心の制圧の部分はともかく、他の箇所については、一応の計画があったのだ。

「なるほど・・・だが、多分肝心のゴロツキ軍団制圧には俺は、やはり役立てないさ。見た通り、俺の能力は炎なんだが、こんな風に、黒くもないし、敵の防御を焼くなんて能力はなかったし、何より身体機能が向上しない。これじゃあ、とてもだが・・・」

まだ完全にムサシを信頼していないので、炎銃については話さなかったが、これも使用不可だった。ムサシは、しかし、さほど心配していないようだ。

「そのことだが、おそらく精神的な強い打撃による一時的な変調だろう。見たところ、まだ疲れも抜けきっていないようだな。イーサン出身・・・その土地をすべて吹き飛ばされたんだ、ちょっとの時間では立ち直れないだろう。むしろ、現状であれだけ戦えるところに、見込みがあるのさ。」

「だが、乗船に間に合わなければ意味がないだろう?」

「任せておけ、俺の剣は、高度な精神集中が必要で、そのための修行場がある。そこで瞑想すれば、多分治るさ。」

「そんなもんか?」

「そんなもんさ。さて、行こうか。実際時間の猶予はそんなにはない。」

レイは、ムサシに連れられ、旧ミリタンとニルヴァ国境地帯に向かった。道中、ムサシは、自分の速度に追従できるレイを見て、強さを確信していた。

 ムサシの修行場は、国境の山の中にある洞窟だった。

「さて、ここも多分訪れるのは最後だな・・・」

「ムサシ、洞窟の中だが、俺たちが入ったとたんに明るくなったが、誰かいるのか?」

「いないさ・・・まあ、ここで精神回復すれば、理由がわかるぜ。ここで座って、目を閉じれば、それで終わりさ。」

「簡単だな?」

「お前さんの場合は立ち直るまで、俺の場合は剣が振るえるまで目が開かないとも言うのさ。」

「おいおい・・・」

「まあまあ。それじゃ、始めようか・・・」

レイは、早速ムサシに倣って、座って目をつぶった。座禅のような格好であった

(なんだ、これは・・・頭の中に声が・・・?)

 「お主・・・なるほどな、つらい思いをしたのお?」

(あなたは、何者ですか?敵意は感じませんが、しかし、洞窟のあらゆるところから気配を感じます、それに、私の何を理解したのです?)

「ほほほ。すまんの。儂はムサシの師匠であった者じゃ。まだ生きとるぞ?お前さんのところと同じように、儂も大陸出身でな、帰らせてもらい、意識の一部をこの力光石に封印したのじゃ。」

(力光石?)

「何も知らぬのじゃな。よいよい。お前さんの精神の浄化までまだかかる。説明してやろう。力光石とは、エナジーに反応して、さまざまな力を発揮する鉱石じゃ。洞窟が光ったのは、もっとも基本的な発光の作用じゃな。他にも様々な作用があって、例えば、ムサシの剣はこの鉱石で作られておって、エナジーを用いて振るうことで飛躍的に切れ味を増すなどの効果がある。それに、お前さんの精神バランスを修正して、炎を浄化する、なんてのも可能じゃ。」

(意識の封印や、思考の読み取りもですか・・・すごい鉱石ですね?)

「まあの?貴重な鉱石じゃからな。もちろん、意識の封印などというのは儂だからできる高等技能じゃがな。ほほほ。まあ、これがミリタンには多く存在したことがニルヴァに真っ先に狙われた理由じゃ。そして、イーサンが消滅したのは」

(力光石が存在しなかったから。そういえば、奴ら、攻めるときはやたら回りくどく、陰でコソコソしていたが、あれは力光石の存在を調べていたからなのか・・・)

「そういうことじゃ。グレイヴは大陸の人間で、そこでも個人としては無敵じゃった。じゃが、大陸は広い。制覇は、とても一人では叶わぬ夢。そこで、力光石を大量に求めて、この島を見出したわけじゃ。その後の顛末は、まさに今じゃ。この洞窟も直に取り崩される。それまでして集めた石でどんな兵器を作るかは、興味はあまりないがの。」

(なるほど・・・でもまず、私たちは)

「みなまで言うな。全部分かっとるし、力を貸すからこそ、今こうして対話しているのじゃ。大陸で本体の儂に会ったらよろしく言っといてくれ。・・・さて、ここの儂がもつ情報は伝えたし、準備もできた。浄化するぞ、少し苦しいが、一気に立ち直らせるのじゃ、我慢できるな?」

(はい、ありがとうございました。・・・老師?)

「ほお!この一瞬で読み取りを僅かでも可能とするとは、びっくりの才能じゃわい。ムサシもうかうかしておれんぞ・・・では!!!」

(ぐっ!!!!!!)

老師の声が遠くなり、代わりに記憶がなだれ込んできた。イーとヤンが、ローチが、ノエルとレオンが、ライが・・・みんな死んでいる・・・先生たちはまだ生きているのに?死んだ?・・・・・どんどん何もかもが遠く混ざって、グレイヴがすべて吹き飛ばして、真っ白になって・・・

 そこまで来てレイは目覚めた。ムサシはとっくに目覚めていて、大和を見つめていた。

「俺は、どのくらい・・・?」

「いや、数秒さ。体感時間狂うだろ?」

「信じられないな・・・」

「さて、直ったか?やってみろよ。」

レイは、少しためらい、炎を起こした。元の赤い炎だ。

「戻った・・・!」

「改めて見ると、すげえな、これなら制圧も簡単だろう。よろしく頼むぜ?」

「ああ!・・・ん?」

見ると、レイの左手に力光石が握られていた。

「なるほど・・・黒い炎モードか・・・ありがとうございます、老師。」

その声はとても小さく、すでに出口へ向かっていたムサシには聞こえなかった。

「じゃあ、早速、作戦開始!!」

 ニルヴァの辺境を支配していた兵士崩れのゴロツキ集団は、昼には優雅にティータイムを楽しむのが慣わしであった。この日も、団長のイルガは、接収した高級茶を楽しもうとしていた。しかし。

「団長!襲撃者です!既に甚大な被害が!!」

「貴様、俺の楽しみを・・・:

「申し訳ありませ・・・ぐはっ」

報告兵が殺され、周囲の幹部たちに動揺が走る。

「イルガ団長は、自分のペースがお嫌いだから・・・」

「だが、緊急報告まで・・・」

「いや、我々も戦闘準備を・・・」

それらの囁き声も、普段ならイルガの嫌うものであったが、次の瞬間の轟音と侵入者でそれはかき消された。

「お前たちか?俺の楽しみを邪魔したのは?」

「そうだが?」

「じゃあ死刑だな。」

イルガは受け答えしたレイに向かって高速気弾を放ったが、あっさり回避された。

「まあ、こういう組織の一番偉い奴って、大体弱いよな・・・炎銃」

「躱した!?・・・がっ」

イルガはあっけなくその生涯を終えた。

「団長が!!!」

「いや、チャンスだ、あの二人を討ち取ったのが次の団長だ!!!」

幹部たちは次々臨戦態勢に入る。それを見てムサシも剣を抜く。

「さて、仕上げだ・・・レイ、剣術もできるのか?」

「炎棒も久々に使うな・・・いや、できない。近寄るのをはたきおとす棒さ、これは。」

「じゃあ必要ないな、俺が全部斬る。うまいこと援護してくれよ?」

「何をごちゃごちゃ「かかれえ!」」

幹部たちが襲い掛かってきた。

「やれやれ。大和!」

ムサシの一振りで先頭集団が薙ぎ払われた。そのまま突撃し、どんどん斬りはらっていく。

「すごいな、ありゃ。・・・自分のエナジーは防御に集中させて突撃して攻撃は大和の力か。うまいな。さて、俺も」

適当に炎棒で叩きながら、レイも援護の砲撃をした。

「四段超越炎砲乱舞!」

基地を破壊しながら炎砲を乱射し、こちらも薙ぎ払っていく。圧倒的であった。やがて。

「!!なんだありゃ、でかいな?」

ムサシの向こう側に毛深い巨体が数体いるのをレイは見た。

「お前たちがいくら強かろうと・・・ぐふっ」

「あの実験生物には勝てまい・・・がはっ」

「あっそ。」

ムサシは難なく追いすがるゴロツキを斬り伏せ、そのまま巨人も斬り倒した。

「おいおい、俺の分まで斬るなよ?炎銃!」

巨人も二人の攻勢を止めることはできなかった。

 数分後、基地は全滅し、ゴロツキ軍団は消滅した。

5

 ゴロツキ討伐から数週が経った。2人は今、交易船第一号にいた。

「ここまでは計画通り、だな。それもこれも、お前を発見できたからだ、ありがとうな、レイ。」

「それは俺のセリフだな、ムサシ。しかし、首長の歓待っぷりはすごかったなあ、あそこまで喜ばれることをしたかね、俺達?」

「したさ。これで二重課税もなくなるだろうし、いろいろ助かったみたいだな。さて、そろそろ沖に出るころだろう。外に出ないか?」

さすがに、レイはイーサン湾を眺められるほどには整理がまだついていなかった。外の人間に船が沖に出たことを確かめて、甲板に出た。

「さすがに気分がいいな。さて、俺達警護部隊は、到着までほぼ自由、のはずだったが・・・首長が無駄に売り込んでくれたおかげで、船内の規律維持まで任務にされてしまった。無駄な体力は使いたくなかったんだがな。」

「そう言うなよ、ムサシ。武器の常時所持ができたんだからさ。」

「それもそうかあ。」

ムサシはそう言うと、あくびをしながら刀を抜き、部屋に入ろうとした男に突き付けた。

「お前さん、なんか盗んだな?出してみな?」

「ひいいいっ、ごめんなさい、ごめんなさい斬らないで!」

「・・・中央に連絡してくれ、レイ。」

「はいよ。」

このような感じで、船内の任務は退屈に過ぎていった。

 そして、ついに大陸に到着した。船長より放送だ。

「さて、本船は間もなく、ノルガノ国の交易港に到着・・・なんだ!?こんな操作差は命令してないぞ!!」

レイとムサシは、放送の寸前に異変に気が付いていたが、やはりこの直後の轟音と衝撃には驚かされた。

「こっちが砲撃したのか?」

「そのようだな?」

レイの言葉にムサシが応える。さすがに船の砲撃ではムサシには取れる選択肢がない。その分気楽ではあった。この瞬間まで。

「ぐわっ・・・直撃か?おいおい、こっから泳げってか?大和重いんだぞ?」

「その必要はなさそうだ。見ろよ。小舟がいくつか出ている。あれが一応の本命かな?」

2人とも、船自体が陽動であることは知っていたが、それはこの船が完全な捨て駒を意味しないことも知っていた。

「港湾制圧部隊だな。船が沈む前に、一個奪って乗り付けるとしようか・・・大和!」

大和の一閃で船体に穴が開いた。

「直通だ、外の騒ぎに巻き込まれたら手遅れになる。」

「無茶するなあ・・・」

ムサシに呆れながらも、手段の有効性はレイも認めた。一気に下部まで飛び降り、まさに発進しようとしていた船を見つけた。

「失礼?ショットガン!」

「何者・・・ぎゃああ」

速攻で正規兵を吹き飛ばし、ムサシが船を発進させた。その直後に、交易船が崩壊を始めた。間一髪であった。

「やれやれ、最初からこんな調子じゃなあ。」

ムサシが沈みゆく交易船を見ながらため息をついた。

「まあ、想定よりほんの少し崩壊が早くなっただけだろ。さて、適当に港に着く前にこの船をノルガノの攻撃で沈めてやらないと。そこから泳いで、自由行動といこう。」

レイは冷静だった。

「そうだな・・・そういえば、お前炎なのに水は大丈夫なのか?」

「別に、炎を扱う能力なだけで、体が炎じゃないんだ、平気さ。そっちこそ、剣は錆びたりしないよな?」

「心配ご無用。さて、そろそろだな。」

2人を乗せた船に砲弾が直撃し、2人は海に投げ出された。破片などに注意し、十分潜行してから、目指していた別の海岸へと向かった。

 こうして、2人は大陸に上陸した。グレイヴ打倒への第一歩である。

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