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それは夢か現なるか

作者: 海藻 若芽

過去のリレー小説はこちら!

1「蛍」

https://ncode.syosetu.com/n6041fp/


2「霊魂」

https://novelup.plus/story/892938187/641855423


3 「何事にも負けない笑顔で」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890470020/episodes/1177354054890470036


4「花火」

https://novelup.plus/story/452424600


5「世界を繋いで飛んでゆく」

https://novelup.plus/story/844968312/819650126


6「シャボン玉」

https://m.magnet-novels.com/novels/62112


7「窓辺の夕焼け」

https://novelup.plus/story/640935518


8「ありふれた物語にHello!~特別な事しか出来ない男の話~」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890946488


9「ミチと蹊と道と路」

https://ncode.syosetu.com/n0073et/15/


10「炎の狂宴」

https://m.magnet-novels.com/novels/56376/episodes/177044


11「長閑な秋の午後」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891252132/episodes/1177354054891252149


12「偶然たる運命」

https://novelup.plus/story/281064366/207336038


13「電脳の古書店(電脳の妖精閑話)」

https://novelup.plus/story/650115440


14「言葉の魔法」

https://ncode.syosetu.com/n5122fv/


15「シーズ・ア・ウィッチ」

https://ncode.syosetu.com/n9856fe/9/


16「社畜の食卓特別編 『紡がれる物語』」

https://novelup.plus/story/939018689


17 「いつかどこかで」

https://novelup.plus/story/558769869

 ポケットの中でスマホが震えたのは、いつもの電車が来るのを待っている時だった。白雪が降ってこずとも、障害物なしに吹き込んでくる風は軟弱な高校生の身体を震わせるには十分すぎる寒さだ。できることなら手をポケットから出したくない。しかし、無視するのはそれで気が引ける。別に電車に乗ってから確認してもいいのだが、人差し指でスマホを擦りながら今か後かを考える。

さっさと確認してしまおう。俺はしぶしぶスマホをポケットから取り出した。画面に触れて通知を見る。

 メッセージはオカルト部の後輩の鹿田からだった。


「先輩方に見てもらいたいものがあります。昼休み、部室に集まってもらっていいですか?」


 続いて泣いているクマのスタンプの連発。様子からして焦っているのは分かるが、まずは落ち着け。

 鹿田のやつ、用件をまず伝えろ、と口を酸っぱくして言っているのに。あいつの耳にもそろそろタコが出来てもおかしくないのだが。

本人がいないところで注意しても仕方がない。ともあれ、鹿田がこういうメッセージを送ってくるっていうことは、俺たちオカルト部らしい“何か”が起こったということだ。

俺が返事をするよりも前に、オカルト部の花野部長が「その案件は猪野向きだから。行ってやれ」とメッセージが届く。恐らく、いや十中八九、鹿田を【遠視(みた)】のだろう。

花野部長は普通の人には使えない能力、いわゆる超能力を持っている。——俺もその一人なのだが。オカルト部はそういう特別な能力を持った人間たちが集まっている。勿論、全員が全員、そういう人間というわけではないのだが。その証明に、鹿田は何の能力も持っていない。色々な事件に巻き込まれやすいそういう特異体質な気がするが……。

俺は白い息を一度吐いてから、「分かりました。行きます。」と淡白に返事を返す。続いて、舞蝶先輩が「行く」と俺よりも淡白な返信をしていた。俺はポケットにスマホをしまうと、かじかんだ手へ手袋越しに、はーっと息を吐きかける。白い息が赤くなっているであろう指先をすり抜けて消えていった。面倒ごとで、なければいいが。


 昼休み、俺は昼食を終えると鹿田が待っている部室へと足を向ける。時間に真面目な鹿田のことだ、すでに来ているだろう。舞蝶先輩はマイペースだから、まだ来ていないかもしれない。

 俺はガラガラと引き戸を開けた。

左右を書類や本が詰まった事務棚に挟まれた部室には、ちょうど真ん中に置かれた木製もどきの長机を挟んで鹿田、そして意外にもすでに来ていた舞蝶先輩が簡素なパイプ椅子に座っていた。

鹿田は何故か申し訳なさそうな顔で伏し目がちに目を逸らしていた。だが俺が入ってくるなり、こっちを救世主にでも会った村人みたいにこちらをバッと見上げてくる。そんな目でこちらを見るな。一方、舞蝶先輩はブックカバーの付けた本を見つめたままでこちらを一瞥もしない。集中していてドアが開く音が聞こえなかったのか。そもそも興味がないのか。先ほどの鹿田の反応からすると前者の可能性が高い。一体どれくらいの沈黙の空間だったのか。鹿田、ドンマイ。

「よう」

「猪頭先輩、こんにちは」

「……こんにちは。ちゃんと来たのね」

「了解って送ったんですから、当たり前でしょう」

 声を掛けると舞蝶先輩はやっと本から顔を上げ、俺の方に視線を向けた。完全に音をシャットアウトしていたわけではないことに俺は少し安堵しつつ、舞蝶先輩の隣に座る。舞蝶先輩はこちらを一瞥したあとに栞を挟んで本を閉じる。そして、鹿田に視線を上げた。

 結局のところ、昼休みに部室に集まったのは俺と鹿田、そして舞蝶先輩の三人だけだった。

元々部員が多くはない。元々昼に集まってまで食事をするほど仲間意識もないから、そんなものだろう。部員の相談に花野部長や木札副部長が顔を出していないのは内心どうかと思ったが、あの人たちにも何かしらの予定があったのだろうと一人納得する。

人はこれ以上と思ったのだろう。鹿田がゆっくりと話を切り出した。

「お二人とも、来てくれてありがとうございます」

「いいよ、気にするな。あんなメッセージを出したってことは何か問題があったんだろう」

「授業があるの、早く済ませて」

「あ、はい、そうでした。じゃあ、この本を見てもらっていいですか」

 鹿田が鞄から一冊の本を取り出すとテーブルの上に置いた。本には真っ白な装丁に銀色で【東京五輪記念 聖火リレー小説集】と書かれている。

「東京五輪をテーマにした小説集か?」

「いや、内容としては様々な作家が書いた短編が載っているだけです。東京五輪をテーマにしているというわけではないみたいです」

「ということは記念に作家たちが作品を持ち寄ったってところか?」

「詳しいことは分かりませんが、多分そうです」

「ふぅん。それでこれのどこがおかしいんだ? 気になるところはないように見えるが」

 鹿田は一白置いてから重々しく答えた。

「実はこの本、朝起きたら僕の部屋にあったんですよ。そんな本、買った覚えも。受け取った覚えもないのに。勿論、家族に聞いても何も知らないって」

「なるほど」

「……」

 花野部長が俺に適切な案件と言った理由が分かった。俺の【過去(かこ)()】だ。あの人は今朝のメッセージを送ってきた鹿田を【遠視(えんし)】して、謎の本が今回の原因であると推測した。しかし、部長の能力ではその本がどうして鹿田の部屋に届いたのかまでは視ることが出来ない。だから、俺の【過去視】に白羽の矢が立ったのだ。俺の能力ならば、その本がどうして鹿田の元にあるのか調査できると踏んだのだろう。しかし、それならそこまで分かったうえでどうして花野部長はここにきていないのだ? 俺は心の中でうんと唸った。事件自体に興味を失ってしまったのか? いや、大きな事件が大好きなあの人のことだ。これぐらいのことならまだ動く必要がないと判断したのだろう。問題がもっと大きくなれば、嬉々として首を突っ込んでくるはずだ。そんな面倒ごとになる前に、迅速かつ簡単に解決したい。そのためには、やはりまずこれを見るしかない。

「さっさと見ちまおう。昼休みもあまり時間がないしな」

 何が起こるか分からない不安がないわけではないが、後輩に心配を掛けるわけにはいかない。俺は平静な顔を装いつつ、組んでいた腕をといて本に手を伸ばす。

「だ、大丈夫なんですか?」

「鹿田君、彼なら大丈夫だから落ち着きなさい」

 慌てる鹿田に、舞蝶先輩がぴしゃりと言った。その言葉に鹿田はちょっと固まったあと、膝に手を置いて固唾を飲んで見守っている。

 そこまで仰々しいことでもないんだが……。俺は額に変な汗をうっすらとかきながら本に手を置いた。目を瞑り神経を集中させる。深く深く息を吸って意識を潜らせていく。徐々に底が見えない暗闇へと落ちていく。地に足がついているはずなのに、浮遊感が伴っていくのは、何度やっても慣れない。なんというか、前後不覚というか、左右があやふやになるのだ。そんな感じで視界だけが真っ逆さまに落ちていっているように見える俺の前に光の玉がぽんと現れた。どうやら最初の目的地に着いたようだ。どんなものにでも記憶は宿るようで、この光はどうやら記憶の欠片らしい。誰かに教えてもらったわけでなく、俺が勝手にそう呼んでいるだけなのだが。この光に視線を集中させると、この光が持っている記憶の映像を見ることが出来るのだ。

 俺は、目いっぱいに光の玉へ意識を集中させた。

光の玉は雲一つない青空の太陽のように眩く輝くと、俺の視界を一気に塗り替えていった。

 光が見せたのは先の先まで白一色に包まれた部屋とも空間ともとれる場所だった。明らかに現実離れした空間にそこに一人、見たことのある顔の男子がぽつんと立っている。鹿田だ。ここにいる鹿田は何故か制服姿で何かを待っているのか時折青いフレームの腕時計を確かめている。

 鹿田が何度か腕時計を見ていた時、ふわふわと水面を漂うクラゲのように光の玉が白い空間の向こう側から現れた。俺は突然現れたように見えたそれに驚いたが、鹿田はいたってそんな風なことはなく、むしろ待ち人来たりといった感じで顔を綻ばせた。光は鹿田の近くまで飛んでくると、徐々に形を変え始める。普段の鹿田なら、その場で腰を抜かしてもおかしくない光景だが、今は不思議がったり慌てる様子は感じられない。見ているこっちがおかしさを感じるほどだ。

 光は二人の人型へと形を変えた。一人は車いすに座り、もう一人はその人に寄り添うように背後に立っている。だが、人型はあくまで人型。光の塊から変わることはなく、表情や服装はない。

 鹿田は緩んでいた顔を引き締め、深々とお辞儀をする。人型の光にも意識があるようで、鹿田にお辞儀を返した。お互いが顔を上げると、車いすの人型が自身の胸にそっと触れ、何かを取り出した。取り出されたのは白い装丁の本で、それを鹿田に手渡した。鹿田はそれをしかと受け取ると、固い握手を交わした。そして、それぞれは振り返ると、反対方向へと歩んでいったのだ。

 記憶はここで途切れ、俺の意識はまた闇の中へと一気に戻された。

あの後、鹿田は目を覚まして、枕元にある本を発見したわけか。どうして夢の中で受け取ったものが現実にあるのか、夢の内容を覚えていないのか。疑問がないわけではないが、鹿田が嘘をついているようには思えないから、本当に覚えていないのだろう。

さて、鹿田がどうやって本を手に入れた経緯は視えたが、どこから来たのか、どういった目的が全くもって情報が出てきていない。さらに潜る必要性が出てきたな。だが、過去視をしていようが時間は経過する。この空間に、あまり長居は出来ない。しかし、残念なことにだ。なるべく速く潜るべきなのだが、どれだけ神経を集中させても潜る速度は変わらない。底が見えない、この異次元の本がどれほどの時間を渡ってきたか想像もできないが、出来うる限り見て、手がかりを探すしかない。俺を頼ってくれる後輩のためにも。

 俺は集中してさらに過去の記憶を探していった。次に見つけたのは、『さぼうる』なる古めかしい喫茶店で本を読みふける男性。と思えば、次に見えたのは馬車で仲間たちと旅をする赤髪の少女の姿。しかし今度は学生の少年少女たちの恋模様を見せつけられた。その次は小説を書き上げた直後の少女。そして、最後に見えたのはガラス球を拾う黄色い猫目の不思議な少年だった。

そこからは、どれだけ深く意識を潜らせても記憶の欠片を見つけることが出来なかった。それだけ過去の記憶になるのか、それとも古すぎて消えてしまったのか、一番肝心の部分が何も明らかになっていない。分かったことと言えば、少なくともこの本がこの世の本ではないということだ。あのファンタジックな世界なんて見せられたら、誰だってそう思うだろう。様々な記憶の欠片をたどってきたが、国や人種はともかく、世界観が根底から違うのは今まで一度もなかった。なら、この本は別の世界を渡ってきたのだろうか?

……他の世界の存在の考察はやめておこう。こういうオカルト知識、いやどちらかといえばSFの分類なのか? 昔、舞蝶先輩にこの辺りの話を聞いた気がするが、いまいち思い出せない。……まぁいい。俺がここでグダグダ悩んでいても仕方ない。戻って舞蝶先輩にバトンタッチだ。

そろそろ目覚めるとするか。俺はゆっくりと意識を離していく。謎の浮遊感とともに意識が上へ上へと向かっていった。

俺は目を開ける。暗闇からの帰還には蛍光灯の眩しさは十分すぎて、開けきる前に思わず目を細めた。

「おかえりなさい。今回は無事に戻ってこれたのね」

 舞蝶先輩が起伏の乏しい声を掛けてきたので何度か瞬きをしてから顔を向けた。てっきり舞蝶先輩は読書でもして待っていると思ったが、俺をジィッと見つめてきていた。どうしてそんなに見つめてくるのか。そんなに変な表情でもしていたのだろうか。俺が不思議そうに首を傾げると舞蝶先輩はふいと顔を逸らして文庫本を読み始めた。なんだったのだ、一体。

「でも、本当何もなくてよかったですよ」

「まぁ視るだけだからな。命の危険なんて、そうそうない。そんなことよりも――」

 俺は過去視で見てきた情報について二人に説明した。鹿田は時々真剣な眼差しでこちらを見つめて時々相槌を打つ。舞蝶先輩は相変わらず本を読んでいるが、あの人にも興味のある話だ、耳だけは傾けてくれているだろう。全部話し終えると、舞蝶先輩がぱたんと本を閉じた。

「そうね。例えば、こういった話があるのだけれど」

 舞蝶先輩が肘をつき、ふわりとニヒルな笑みを浮かべた。目は楽しそうに、口は水を得た魚のように生き生きと語り始める。

「猪野君と鹿田君は、この世には並行世界が存在するっていう説は聞いたことあるかしら?」

「えぇ、まぁ。この世には、俺たちの世界とは別の世界が複数存在するっていう説ですよね。その中でも諸説あって、一本の大きな世界から微妙に違う複数の世界線に枝分かれするパターンや直線がいくつも並んでるパターンが、あるんでしたっけ」

 と、以前に舞蝶先輩が語ってくれた知識をちょうど思い出して語ってみたのだが。俺の覚え方が間違っていたのか、中途半端な覚え方が気に食わなかったのか、眉を細めてこちらを睨んできたが、すぐに真顔に戻る。

「……その通りよ。鹿田君、今の説明で理解できたかしら」

「はい」

「……ならいいわ。それで、その説の中でも意見が分かれるんだけど、それぞれの世界線に同一の個体が存在するのかしないのか。私としては存在すると思っているのだけれど。だから今回の件――鹿田君が経験したこの件は別世界線から送られてきたメッセージだと、私は思っているわ」

「メッセージ、ですか?」

 鹿田は首を左に傾げる。

「そう。誰が、どうして、いつから、こんなことをしているのかまでは私には知ることも視ることもできないけれど。何かを伝えるためにこれを行っているのよ。だから、鹿田君はこの本を次の誰かに繋げないといけない。ここで終わりだったら私が確実だと言えるのはこれぐらい」

 鹿田はうんうんと頷き、話を念入りに聞いていた。だが、ひとしきり話を終えた左から右にうんと首を捻らせた。

「ど、どうやってですか? 特別な能力なんて僕持ってませんよ」

「それは私も分からないわ」

 舞蝶先輩はあっけからんと言ってのけたが、鹿田は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になっている。

「何にも解決になってませんよね!?」

「そんなこと言われたって仕方がないじゃない。分からないものは分からないもの」

「じゃあ、僕は一体どうすれば……?」

 と鹿田は大袈裟に頭を抱えた。頼ってくれた手前、何とかしてやりたいのは山々だがこれ以上俺に出来ることはないのだ。

「なら猪頭君にいったん預ければいいんじゃないかしら?」

「はい?」

「だって今回は見えなかったけど、もっと時間を掛ければ視ることが出来るかもしれないでしょう?」

 確かに時間を掛ければ視ることが出来るかもしれない。だが、視れたからと言って結局それが解決策になるかどうかなんて。

 いや、そんな藁にも縋るような顔でこっちを見るな鹿田。確かにここで特殊な能力を持っているのは俺だけだ。だが、異世界に干渉する力なんて持ち合わせていない。俺が受け取ったとしてもそんな顔をしても無駄だ。舞蝶先輩はうっすらとした、微笑むように笑顔で俺を見守っているが本当は楽しんでいるぞこの人は。俺は絶対に受け取らない。受け取らないからな!


 その夜、夢を見た。見渡す限り白い空間に立っている。地面がなく浮いているように錯覚するが脚の裏が見えない何かに触れている。ここがどこなのかどうしてここにいるのか皆目見当もつかない。手元には一冊の本。しばらくすると、光の玉がぷかぷかと現れた。その光の玉は徐々に人型へと姿を変えた。俺はそのことになんの反応も示さない。まるでそれが当たり前のようだった。俺はゆっくりと近づくと、その人型に本を渡す。言葉は交わさなかった。人型は一度だけ頷くと、振り返るとそのまま駆けていった。俺はその背中を黙って見守っていた。


 ジリリリリ、とけたたましい音で目が覚めた。変な夢を見た気がするが、どうにも覚えていない。

 結局、昨日は鹿田から本を受け取った。あのままだと不安とプレッシャーでどうにかなりそうな顔をしていたし。受け取った本については時間がある時に探れるかどうか試してみることにしていたが、まだ見れていない。確か、昨日枕元に置いて……。

本がない。ベッドの下に落ちたのかと覗き込んでみるがどこにもない。親が持っていった? いや、人の部屋に勝手に入り込んで物色し本を持っていくような、プライバシーなんてどこ吹く風の人たちではない。ならば、と俺は腕を組む。

つまりそういうことなのだろう。俺は机に置いてあったスマホを手に取ると、いつものグループに短いメッセージを送る。

「解決しました」

 メッセージについてはまた返信が来るだろうが、またあとで見ればいい。

 次はどんな世界へと旅立ったのだろう。旅の終わりにどこへ行きつくのだろうか。俺は過去視しかできない。未来を視ることは出来ない。だが、きっと悪いことにはならないだろう。過去視で見たあの光の玉は、その温かみを感じたから。まだ見ぬ世界へと繋がっていく本に想いを馳せながら、俺は少し変わった日常へと戻ってくのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お久しぶりです。 まず、リレー小説であることに驚きました。 そして、パラレルワールドや光の玉。 くるくると行き来するイメージですね。 [一言] 他のリレー作品も読みたくなりました。
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