有名アニメ監督作品の出演が決まった娘から父へ
もしもし、お父さん? 今、大丈夫? もう、ご飯食べた? ……あ、今帰って来たんだね、じゃあ、これからご飯食べるの? ……そっかあ、遅くまでお疲れ様。
……えっ、私? うん、私は食べた、外で友だちとね。 ……えっ、いやいやいや、男の人じゃないよ、女の子。同じ事務所で声優やっている子だよ。 ……うん、私は元気。お父さんは? 風邪、引いてない? ……そっかあ、良かった、お父さんが元気で。 ……うん、そうだよね、お父さん、鍛えてるもんね。
あのね、お父さん、私から一つ、報告があります。 ……えっ、結婚? いやいやいや、それはまだ、残念ながら、先の話で。 ……うん、そうだよね、お父さんが元気なうちに、孫の顔を見せるって約束だもんね。結婚じゃないけど、嬉しいお知らせがあるんですよ。 ……そう! そうです! 決まったんですよ、あれが!
前に言ってた、やつ。 ……そうなんです、ありがとう! それでね、実は、ヒロインじゃなかったんだ。残念なんだけど。 ……でもね、そんなに落ち込んでないよ。ヒロインじゃないんだけど、とっても重要な役なの。しかもね、監督さんが私を推薦してくれたの!
……うん、そう! あの、新海監督だよ! 私の声が、イメージにぴったりなんだって! ……うん、ありがとう! お父さんに喜んでもらえて、すっごく嬉しいよ。 ……あのね、お母さんが亡くなってから、お父さんが私を育ててくれたでしょ?
反抗期だったから、大変だったと思う……。本当に……いっぱい迷惑かけちゃって……ごめんね……。
……うん、本当にごめん。……だからね、私、お父さんの若い頃の夢だった、声優に、絶対なりたかった! お父さんの夢を、私が叶えたいって、ずっと思ってたの……。
……うん、良かった……本当に良かった……お父さんが……(涙声で)お父さんが……今まで……私を……応援してくれたから……あきらめないでやってこれたんだ……。
……うん、ありがとう……。私ね、絶対、頑張るよ! もっともっと頑張る。だから、これからも応援してください! ……うん、本当に、ありがとう!