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思い込み

作者: まぐろ

彼女は言った。

「お母さんを助けてほしい」と。


彼女は優秀だった。

授業で質問などをすると、誰よりも速く手を挙げ発表をしたり、クラスの中でもリーダー的存在で、クラスメイトの先頭に立って行動をしたりするような子だった。


そして彼女は賢かった。

彼女自身から聞いた話だと、彼女は家事全般を全て自分でこなしていたという。

自分で料理を作り、洗濯を行い、買い物にも行き、そして、母親の看病もおこなっていたと言うのだ。

まだほんの子供で、小学校低学年の彼女が約一ヶ月もの間行ってきたと言うのものだから私でも驚いた。


しかし、彼女は掃除だけは苦手でゴミを袋にまとめることしか出来ないので部屋はゴミ袋でいっぱいだけど気にしないでほしい、と部屋に入る前に言ってきた。普通は出来なくてもおかしくはないと思ったが、口に出すわけにもいかないので、気にしないということだけは言っておいた。


そしていざ部屋の中に入ってみると、ゴミ屋敷のように玄関にまでゴミ袋が散乱しており廊下すらもゴミで埋め尽くされていた。

母親が寝込んでから一ヶ月と聞いたが、このゴミの量は以前から溜め込んでいたとしか思えないくらい多かった。


入ってすぐに感じたことはそれだけではなかった。

入る前から薄々匂っていたが、物凄い異臭が鼻の奥に突き刺さるように飛び込んできた。

最初は目の前に広がるゴミの匂いかと思ったが、それではないとすぐにわかるくらいの匂いだった。

しかしアパートの一室というだけあって広くはないため、臭いがこもっているだけだろうか。


彼女に導かれて足元に広がるゴミの合間を縫ってリビングへ来たが、匂いが強まったように感じた。

彼女はこの強烈な臭いが嫌と思っていないのか気になったが、自分の家の匂いが臭いと言われるのは本当だったとしても嫌だろう、と思い言わないことにした。


彼女が言うようには、目の前にある襖の扉の先に母親が寝ていると言った。

私は襖の前に立ったが、また匂いが強まるように感じた。この部屋にニオイの元があるようにしか思えなかった。


彼女が襖を開けようとしたところを止め、彼女に家に来て欲しいと言われてからずっと気になっていた質問をした。


「お母さんはあなたが看病してる時には起きなかったの?」


彼女は答えた。


「ううん、起きなかったよ。具合が悪すぎて起きれなかったんだと思う」


彼女の返答で私が想像できた範囲の中で、一番最悪の状況ということがわかった。



彼女は異常だった。






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[良い点] お母さんを助けてほしい点。
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