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後悔が先に立つことはなく

作者: たくみ

焼き付くような痛みを乗り越えた先にあったものは、身体の一部でありながら意識の通うことの無くなってしまっている両の腕と、それを現実として認識できずに呆然自失としている自分自身の姿だった。

身体は資本と鍛え、思い悩むことは性に合わない行動力を発揮し、困った誰かの助けになるのならと尽力してきた自分の、その両腕が使い物にならなくなったという事実は、自分で思う以上に大きな傷となって心の中に残っているようだ。


「もう少し上手くやれるもんだと思っていたんだが、なぁ」


そう呟く言葉の意味することは、この有り様に至った自らの行動に対する後悔ではなく、結果としてこの姿になってしまったことに対しての反省だ。

何のことはない、通り掛かりの誰かを助けるためにほんの少しの無茶をして、それが偶然にも上手くいかず被害が大きくなってしまったことにより、自分から首を突っ込んだ我が身へのダメージが甚大なものになったというだけの話である。

強いて悔いることがあるとすれば、自分の行動で助かったという相手から申し訳ないと頭を下げられたことだ。

勝手に関わったのは自分であり、自分のツケを自分で払っただけの結果に対しての謝罪されては、自分が余計なことをしたのではないかと認めさられるような気がして、何とも落ち着かない気分になる。

自分の行動によって助かったという選択を、間違いだったと思うことにも抵抗を覚えるからだ。


「とは言え、このザマでは仕方ないと思うしかないか」


自己犠牲の精神で持ち合わせている訳でも、身の安全を疎かにしていた訳でもない、単に行動に対しての結果に運が巡って来なかっただけの話である。

しかし現実が現実として覆らず存在している以上、目を背ける訳にはいかない問題だった。


「もしこの手が二度と動かなくなるようなら。俺は誰に対して、どうやって責任を果たしていけば良いんだろうか」


ただ行動することに身を費やしていれば良かった頃の自分では抱くことが出来ない悩みに直面したという事実は、身体以上に心への負担となって我が身に降り掛かっていたのである。

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