NO.1 異世界転移あるある
おまけを読むことをおすすめします。
ステータスを間違えました(2019/01/17
機械音と慌ただしく走る足音が聞こえる地下研究所。拘束衣を着た少女が、透明な液体に入ったカプセル状の機械に入れられていた。そこに所長らしき男が白衣を着ながら入ってくる。少し悲しげな顔をしている。そこへ一人の研究員が硬い表情をしながら入ってくる。
「No.01のシャットアウト準備が完了しました。いつでも実行可能です」
「そうか。位置についてくれ」
「はっ」
硬い表情の研究員が出て行くと男はカプセルに触れ、おでこをカプセルにあてた。
カプセルはとても冷たかった。
「すまないな、これしか方法はなかったんだ。許してくれ」
と、意識のない少女に許しを請う。
その時、先ほどの硬い表情をした研究員が今度は血相を変えて飛び込んできた。話が聞かれたかと一瞬男は思ったが、どうも様子がおかしい。まさか、上から違う方法に変えろと言う命令か?!すべての時間が無駄になってしm……。
「所長、NO.01の意識が目覚めそうです。今すぐシャットアウトしなければなりません!急いで指示を出してください!」
「……分かった。1分後にやれ」
なんだそんなことか。上からの命令かと思ったわ。なぁんだ安心、安心……って安心じゃないよ!あの子と一分しか一緒にいられないの?!嘘でぇ!
「分かりました。早くそこから離れてください」
それだけ言って研究員が離れる。
男はカプセルを強くたたき苦い顔をしたが、少し息をつくと楽になった。泣きそうになりながらも少女を見上げ、微笑んだ。
「ゆっくり休みなさい、カレン」
そう言って早々とその場を離れていく男。
ドア付近で少し振り返り何か言おうとしたが、何も言えなかった……。
カプセルは少しずつ凍りながら、小型クレーンでシェルターに運ばれた。
そして、少女カレンはこの世から消えた。
ある光を残して。
ペシッ、ペシッ、パシッ。
朝から何かが叩かれている音が洞窟の中から聞こえてくる。
「痛い、痛いよ、痛いってば!」
黒くて細い何かが少女を叩いていた。
最初は無視していたがだんだん強くなってくるので、布を引きちぎるような音が聞こえた後、叩いている奴を掴みながら起きる。
「何してくれてんの!?眠いんだよ、こっちは!」
目をこすりながら怒る少女、そう、この子は先ほど登場したカレンだ。
そして握っていたのを見るとびっくりして目が釘つけになる。簡単に説明すれば黒くて細い、先が丸い触手のようなものが尻尾から生えていたのだ。
「なにこれ……え、これが私のこと叩いてたの?」
今カレンの頭の中はハテナがいっぱいだ。
すると黒触手が勝手に動きだし、首を縦に揺らした。いや、触手に首はない。
というか、この触手は意思があるそうだ。
この触手をいじってはいるが本体への痛覚は一切ない。
「えっと、叩いたのは君?」
カレンが質問すると黒触手が縦に揺れる。
肯定しているようだ。
「なんで?」
黒触手は今の質問まで揺れていたが、質問を聞くと固まった。きっと、どう説明すればいいのか分からないのだろう。
「あ、ごめんごめん。難しい質問してごめんね」
そう謝ると今度は横に揺れた。
否定、大丈夫だよという意味だろうか。
「まあ、何でもいいや。というか、まずは状況整理だよね。手伝ってくれる?」
黒触手は肯定。
結果はこうだ。
まず、私は何度も暴れたせいで、永久冷凍されるはずである。
しかしなぜかこんな岩だらけの洞窟に転移。
そしてこの触手だが、転移する前の自分の武器であることが判明。
その時触手の意思はなかったという。
そんなことより今、一番大切なことである場所についてだが、異世界だということが判明。理由は簡単、洞窟の外を出て山道を歩いて行けば藁の屋根の家々が並んでいたからだ。
日本でも一番古くて瓦屋根である。まあ、竪穴式住居もあるにはあるがそこに人は住んではいないのだからカウントはしないだろう。
「さて、状況整理はこんなものかな。ここが異世界だとして、ステータスは出てくるのかな?一応クロは周りを探索して良いものがあれば持ってきてくれない?」
黒触手をクロと呼び、探索を命じる。
すると触手はみょーんと伸びていき洞窟の奥深くに消えていった。
さて、こっちは異世界あるあるをやっていきますか!
「ステータスオープン!」「フレイム!」「ウォータボム!」「ショックボルト」「…………!」……。
はい、結果は分かったと思います。
スキル名言った後に「ドッガァンッ!」や「ボカァンッ!」と言う音が聞こえてこない時点でおかしいと思いましたよ。
はい……。
先程から一時間ぐらい異世界あるあるをやっていたがすべて不発。その悲しみに沈んでいると奥からクロが戻ってきた。先端部分をお椀のように広げ、何やら掘り出し物を持ってきていた。
「おかえり、クロ」
私はクロがすべてを置き終わるまで待ってから言う。
するとクロはピクッと反応し、掘り出し物の中からテニスボールサイズの水色の水晶を転がしてきた。
不思議に思いながら水晶に触れると急に光りだし、AIのような男性の声が流れてきた。
『起動を開始します』
そう言って浮き始める水色の水晶。私とクロは驚き固まっている。
『お久しぶりでございます、主様。私にお触れください』
そう、水晶が浮いたまま話すのでまだ固まっていたが、クロが背中を叩き水晶を差す。
流石 にまた叩かれたくないので水晶に触れる。
『カレン様のステータスを表示します』
すると水晶がスライムのようにグニャグニャしだし、大きなボードのようになる。そこにカレンのステータスが表示される。
==========
『カレン』
種族:機械人 兵器種
状態:普通
Lv:1
HP:500/500
MP:×
攻撃力:55
防御力:60
物理耐性:45
魔法耐性:20
ユニークスキル:
【古代兵器Lv.1】【現代兵器Lv.10(max)】
耐性スキル:無し
通常スキル:
【古代語読みLv.1】
称号スキル:
【人間兵器Lv.--】【兵器の呪いLv.--】
==========
「おー!なんか、異世界に来たって感じですごいテンション上がる!でも、少しスキルの意味が分からないんだよなー。なんか転移、転生した人ってもっとスキルなかったっけ?」
テンションは上がるが、称号スキルや特性スキル、MPの横の×は何かを知りたいのだ。この際、すべてを教えてもらうかな?と言うわけでステータスを表示した水晶に聞いたところ、スキルの説明をしてくれた。
『【古代兵器】
転移後に獲得したユニークスキル。誰かを守ろうという気持ち、その一定の感情が高まれば全てのパラメーターが大幅に上昇し肉体が強化される。対象が消滅した場合は元に戻る。【現代兵器】と共有可能。他のスキルとも共有可能』
『【現代兵器】
転移前に獲得したユニークスキル。誰かを殺そうという気持ち、一定の殺意が高まると全てのパラメーターが大幅に上昇し肉体が強化される。対象が消滅してもすぐに元には戻ることは出来ない。【古代兵器】と共有可能。他のスキルとも共有可能』
『耐性スキルは案外取得しやすい』
『【古代語読み】
古代語を読むときに使うスキル。古代語が読める人はほとんどいない。森人は読むことができる』
『【人間兵器】
兵器種特有の称号スキル。通常モンスターであればEXPが2倍になり、ボスモンスターであればEXPが3倍になる。会ったことのないモンスターの情報を得ることができる。レベルの上限はない』
『【兵器の呪い】
兵器種しかない称号スキル。相手にも自分にもスキルやポーションによる回復量が半減する。神聖スキルの攻撃は2倍になる。この称号スキルは消すことは出来ない。レベルの上限はない』
「おお、楽しくなってきた!というか、クロはスキルじゃないのか」
そう言うとクロはうなだれて、ショボーンとしている。
何かだんだん人間の動きと似てきている。
「自分自身も忘れてたんだけど、『MP:×』ってなに?」
『MPと言うのは魔力です。×と言うのは一切無いということでしょう。主様は魔力がない体質なのでしょう。ですから魔法スキルは一切使えません』
なんと!
それ、まじですか。
悲しい結果。
異世界あるあるの夢がすべて消えましたね、はい……。
「あざましたー。魔法使えないんだったら何しようかなー」
あまりありがたいと思ってないようなお礼を言い、このあと何をしようか考える。
水晶は元の形に戻っていた。水晶って呼ぶのもなあ、後で考えるか。
んで、このあと何するか、だ。
ご飯、お風呂、人探し、街探し、もとの世界に戻る方法。
もとの世界に戻っても意味ないな……。
まあ、まずはご飯だな。この洞窟の中には食べ物は無し、モンスターも無しっと。
外に出るしかないですね。
クロが持ってきたガラクタの中からTシャツとチョッキを取り出し、拘束衣を脱ぎ捨て着替える。
外へ出る準備をしていると何か聞こえる。
何の音だ?
耳を澄ませると、泣き声、怒り狂った動物じみた声、金属がはじかれる音。
もっと、もっと、聞かないと。
苦しむ息の音!!
「行かなきゃ、助けないと!」
しかし、こちらに武器はない、どうする?
いや、あるじゃないか、とっておきの『道具』が。
『何か』を殺すと分かったからか、にやけてしまう。
おっと、これを見られると警戒されてしまう。街へ行ったときに口元を隠すマスクを買わなければ。
「殺されてなきゃいいなあ」
≪一定の殺意が集まりました。【現代兵器Lv.10(max)】を発動します≫
≪一定の感情が集まりました。【古代兵器Lv.1】を発動します≫
≪【現代兵器Lv.10(max)】と【古代兵器Lv.1】を共有します≫
「戦闘準備完了」
豆おまけ1
最初に登場した所長らしき男はちゃんとした所長。そして、作者にはロリコン説が浮上したが後にカレンの父親となることに。しかし作者の中ではまだロリコン説が浮上している。
おまけ2
すべてを思い出す前のカレン。黒触手の耐久値やどこまで伸びるかを試していると……。結果、黒触手ぶちぃ。そして、黒触手は怯えてそのまま1時間程現れることはなかったと言う。
おまけ3
『もう一つステータスを表示します』
==========
カレン:女:13歳
身長:146.6cm
体重:40.2kg
カッp……
==========
この先はカレンによって握りつぶされていて読めない。