容姿端麗、文武両道な生徒会長は俺のストーカーではない(願望)
真面目な会計さんと、オタクJK先輩の家庭料理(番外)
番外編です。
気がつけば、俺は椅子に座っていた。
座るまでの記憶がない。いつから俺は座っていたのだろうか。
周りを見渡すと、テレビやタンスなどの家具がキッチリ置かれ、生活感が漂っている。
誰の家なのか分からないが、オープンキッチンに目を向けると、見覚えのある二人が料理をしていた。
「あ、やっと目が覚めたんだ」
「もう廉たら、料理を始めてすぐに寝ちゃうんだから」
新妻のようなエプロン姿の水原先輩と雫が、作り終えた料理を運び、テーブルの上に置く。
定番の肉じゃがや焼き魚、卵焼きなどのおかずが綺麗に並んでいる。
「お腹空いてるでしょ?」
二人が俺の両隣に座り、雫が箸で卵焼きを摘む。
「はい、あーん」
過去の記憶が過ぎり、口がへの字に曲がってしまう。しかし、料理上手な水原先輩がいるんだし、流石に大丈夫だろう。
……念のため聞いておくか。
「全部二人が協力して作ったんですか?」
「当たり前じゃない」
それなら心置きなく口を開けるな。
「ただ……その卵焼きは雫が一人で作ったわよ」
開けた口を閉じようとしたが、後ろから俺に抱きついた水原先輩が無理矢理口を開けさせる。
なんとなく背中に柔らかい感触があるが、笑顔で卵焼きを差し出す雫を前にして、そんなの気にしている余裕なんてないわけで。
「廉。はい、あーん」
禍々しいオーラの卵焼きが俺に迫る。
嫌だ……やめてくれ……いやああああああ!!
「うわああああ!?」
布団を飛ばし、体を起き上がらせると、さっきまでいた部屋ではなく、いつものアパートに寝ていた。
どうやら今までのは夢だったらしい。
雫には悪いが、ひどい悪夢だった。
「……準備しよ」
朝の五時だが、また寝てあの悪夢を見るのではないかと思うと、再び布団の中に入る勇気はなく、そのまま学校に行く準備をするのだった。
時間は進んで昼休み。
今日は一緒に生徒会室で昼食をトラクトになっていたので、弁当(綾先輩特製)を持って、生徒会室に。
教師の頼まれ、断りきれずに手伝いをしたことで少し遅れてしまった。
生徒会室に入ると、すでにみんなが弁当箱を広げ、箸を進めている。
「水原先輩、作ったので食べてみてください」
「う、うん」
今朝の夢で出てきた二人は机を挟み、対面になるようソファに座っていた。
「あ、守谷。遅かったわね!」
なぜか安堵の表情の水原先輩。
「ちょっと先生の手伝いしてて」
「断ればよかったのに」
「頼まれたんですから仕方ないですよ」
「お人好しね。そんな守谷にあたしから卵焼きを恵んであげる」
「た、卵焼き……です、か?」
チラリと机の上に置いてある二つの弁当箱を覗く。
どちらも綺麗な卵焼きが置いてあり、美味しそうだが、今朝のこともあり、手を伸ばしたくはない。
相当嫌な顔をしていたのか、水原先輩が不安そうな顔を浮かべる。
「あ、あたしの卵焼きは、いや?」
「そ、それは……」
別にそんなことはないんですけど、卵焼き関連のフラッシュバックが起きて、否定する言葉がなかなか口から出てこないんです。
「……ご、ごめん。あたしの卵焼きなんか食べたくないんだね。ご褒美、とか言っといて罰ゲームみたいなことしてたんだね」
なんでそこで涙目なんですか!?
「も、もちろん食べますよ! うわぁー本当に美味しそうだ」
ひょいっと卵焼きを一切れ頬張る。
「あ、それ私の弁当箱」
あはは、道理で意識が遠のいてくはずだ。
それと雫。また黄色何号とか使ったな。見た目と味があってなーー
「守谷!? しっかりして! もりやああああ!」
読んでくださり、ありがとうございます。