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第3章 8話 最近の若者は……。

「いやー、美味しいですね。自分、朝はパンの方が好きです」


 東くんが何事も無かったかのように朝はパン派だという情報を伝えてくる。


「ああそうなんだ。東くんパン派なんだねえ」


「そうなんです」


 鈴木さんが何事も無かったかのように会話のキャッチボールし始めた。

 このオッサン……さっきまで動揺してたくせに。

 ここにきて冷静さを取り戻して、華麗にスルーしやがったな。

 めんどくさいことを後回しにして、他人任せにしやがった。


「俺はもう、ご飯派だわあ、朝はご飯だわあ」


 もう俺もスルーしてやる。

 俺だって大人のスルー技術の一つや二つ使えるんだ。なめるなよ。

 鈴木さんと目があって俺たちの間に、お前が切り込めよ的な何とも言えない空気感が漂い始めた時。


「おはよう皆の者」


 昨日遅くまでゲームやってた吸血鬼が遅れてやって来た。

 朝、寝てるこいつを起こそうとした時に「むにゃむにゃ、あと5分」という奇跡的なセリフをはいてたが、ホントに5分位で起きてきたな。


 だが、これはいい。

 いいスケープゴートが来てくれた。

 さあ、そこのおサルさんみたいな髪型した女性を見てびっくりしろっ。

 そして色々問いただせっ。

 俺とそこの太ったオッサンは横で聞き耳たてながら座ってるから。


「…………今日の朝はパンか」


 スルーしやがった。

 一瞬だけ東くんを見て微かに目を見開いた後、三点リーダー4個分位の沈黙で精神状態をニュートラルに戻しやがった。

 そしていつも通りの朝食の風景じゃないかとばかりに華麗にスルーしやがった。

 くそう、年期が違う。

 若造の我々ではこの女帝に太刀打ちできない。


 そもそもなんなんだ。

 東くんパーティーのヒューイとカガミはニコニコしながら普通に飯食ってやがるし。

 カワウソ子供組は普段通りにムシャムシャパンかじってるし。


 なんだお前ら、仲間の一人がある朝起きたら、性別変わって、なんなら骨格も変わってんだぞ。

 もっとリアクションしろや。


 ……なんだろうな。東くんの仲間達は仲間内でなんか話し合いとかしたのかもしれんな。

 なんかニコニコしてるし。

 そもそも彼女らは同じ部屋で寝起きしてるからな。


 じゃあなんで違う部屋で寝起きしているカワウソ子供組はノーリアクションなんだ?

 ……もしかして彼らは臭いとかで個体識別する種族だったんだろうか?

 見た目の違いをあんまり気にしないんだろうか?

 今更ながら謎の種族だわ、カワウソ族。




 そして結局みんなスルーして朝食が終わってしまった。

 見張りに配置しておいた召喚ゴーレム達を収納する。

 平原でゴーレムに返り討ちにされた魔物が落としたアイテムがそこかしこに転がっている。

 なんか、光る石みたいのとか、魔石的なのとかを拾い集める。


 ん?なんだこれ?

 ……ヨーヨーだな。赤茶けたヨーヨーが落ちてる。


アイテム名 ヨーヨー・ブロンズ

分類    武具

レア度   D+

攻撃力   18

価格相場  60000G~80000G


効果及び説明


ヨーヨー型の武器。

北ササラ国西部の平原に生息する魔物、からくりシープのレアドロップアイテム。

ヨーヨーにはブロンズ→シルバー→ゴールド→ダイヤモンドという種類があり、階級が上がるにつれてレア度、攻撃力が上がっていく。

ダイヤモンドになると攻撃力が60位になる。



 まさかの武器。

 そう言えば少年漫画でヨーヨー武器にするキャラが時々いるよな。

 ……いやこれでどう戦うんだ?

 必殺っ、犬の散歩っ!!みたいな?


「おい龍臣」


 ん?俺がヨーヨーで遊んでると後ろから京に話しかけられた。


「お前、なんでなんのリアクションもとってやらんのだ?」


 言わずもがな東くんに関することだろうな。


「お前もだろ?」


「……そもそもどうしたらいいのだ?正解はなんなのだ?おめでとうなのか?祝い事みたいなジャンルでいいのか?」


 どうなんだろうなあ……。


「うん、安田くん、僕もどうしたらいいんだかわかんなかったよ」


 鈴木さんも話に入ってきた。


「いやそもそも、いきなりあんなおサルさんみたいな髪型した美女になるとは思ってもみなかったしね」


 もはや骨格から違うからね。


「龍臣、おサルさんって言うな。ベリーショートって言ってやれ」


 ああ、ああ言うのもベリーショートって言うんだ。


「いや、あの男女逆転薬?いつか飲むとは思ってだけどね……なんで、彼は……あ、彼女?は今だったんだろうね」


 鈴木さんも考えてしまっている。

 まあ、東くんの中身が女性って言うのは安田パーティーの中では公然の秘密だからな。

 みんな気づいてるけど、今まで誰も口に出したりはしなかった。

 仇になったな。

 話し合っとけば良かった。


「そもそも、彼は、いや彼女?……東くんはあれだからな。東くんの中ではいまだにカミングアウトしてないってことになってるからな」


 みんな知ってはいるけども。


「うーん……」

「……難しい問題だね」


 二人とも悩んでしまった。

 東くんは思いやり溢れたいい子だからなあ。

 問題がデリケートすぎて、さすがの吸血鬼の女王様も土足で踏み込みづらい領域らしい。


「まあ、あれじゃないか?今日か明日には実は自分は心が女性なんです。だから薬飲みました。みたいなカミングアウトがくるかもしれないし、そしたら、おめでとうなり赤飯炊くなりしよう。だからとりあえず今のところは様子を見よう」


「そ、そうだね。赤飯炊くのはなんか違う気がするけど」


「んん、そうしよう」


 ダメな大人の必殺技、問題の後回しを発動させちまった。


 そしてアイテムを集め終わって、飛行船が平原から飛び立つ。

 明日にはミンストレルとやらに着く。



 ふわふわ進む飛行船の中、外の景色を眺めながら椅子に座ってまったりする。


「あ、まんじゅうプレゼントボックスやらせて」


 リンリンリン。


 いいよ。のリンリンリンだ。

 最近忘れてしまう時があるからな。

 まあもう、訳のわからないアイテムで俺の部屋にある金庫は一杯だが。


 一回目。


 何かくしゃくしゃの布みたいのでてきたな。



アイテム名 天使のシュシュ

分類    防具

レア度   B-

防御力   30

価格相場  2500000G~3000000G


効果及び説明


髪を結ぶシュシュ。

腕につけることも可。

装備すると、INT+30。



 髪の毛結ぶやつだな。

 腕でもいいのか。

 おかしいな、まんじゅうのプレゼントボックスは引いたやつが装備できるやつしか出てこないはず。

 腕につけろってことか?

 いやでもこれ女物だよな。



 二回目。



アイテム名 真理のセーラー服

分類    防具

レア度   B+

防御力   48

価格相場  6500000G~7000000G


効果及び説明


男女兼用。

装備するとSTR+10、AGI+20、VIT+10の効果がある。



 男女兼用のセーラー服ってなんだよ?

 海兵が着てるやつか?いやスカートじゃねえか。

 男が堂々とセーラー服着てたら色んなモン失うわ。

 全然兼用じゃない。


 実用性無しのばっかだな。

 三回目。



アイテム名 堕天使のブラジャー

分類    防具

レア度   A

防御力   80

価格相場  55000000G~60000000G


効果及び説明


男女兼用。

最強のブラジャー、装備するとスキル滑空がスキル欄に追加され背中に光の羽があらわれ空を飛べるようになる。

女性は下着として、男性は頭に被る被り物として装備できる。



 装備できねえよっ。

 ブラジャー頭に被って空飛んでたら変態の妖精だろうがっ!!




 ……なんだこれ、女物ばっかなんだけど。


 ええ?もしかして東くんにプレゼントしろってことかな?


 いや、シュシュはまだしもセーラー服やらブラジャーなんてプレゼントした日には間違いなくあの豪腕でぶっとばされるわ。


「……封印だな」


 部屋の金庫にしまいます。




 禁断のアイテムを封印して、あっという間に夕方、夕食時。


「おいしいですねえ、この肉じゃが」


 東くんが俺が作った肉じゃがをにこやかに誉めてくれる。

 子供カワウソや東くんのパーティーの二人娘が談笑している。

 我々大人三人だけは黙ってもそもそと夕食を食べている。

 若者達だけは何事も無かったかのように夕食が進んでいく。


 これはもうあれなのかな?最近の若者の特色なのかな?

 彼女らは細かいことは何も気にせずに生きられるって言う能力を体得した進化した人類、ニュータイプだったのかな?

 我々オールドタイプではもはや太刀打ち出来ないのかな?



 俺が変なことを考えてるうちに夕食が終わり就寝時間。




「龍臣、私明日朝食時にでも切り込もうかと思う」


 勇者が現れた。

 やってくれるのか勇者唯川よ。


「ぜひお願いします」


「うん、もう私ダメだ。さすがに気になって色々手につかない」


「じゃあ、よろしく」


「まかせろ」


「じゃあおやすみ」


 俺は自分の寝室に入る。

 ん!?あれ!?俺の寝室のベッドが二つになってる!?

 あれ!?吸血鬼がおれの寝室に入って来たけど!?


「なんだお前っ、客間のベッドこっちに持ってくるなよっ。いつも通り客間で寝ろよっ」


「なんだお前はこっちのセリフだっ。なんだ貴様、恋人と一つ屋根の下に住んでいて、いつまでも寝所別々とはどういう了見だっ、せめて同じ部屋で寝させろっ」


 くそう、東くんのことで頭一杯で隙をつくっちまった。






 そして運命の朝。


「いくぞ京」

「うん」


 俺と京はカワウソ村のドアノブを一気に回す。


「おはよう」


「お、おはよう安田くん」


 動揺している鈴木さんがいる。

 待っててくれ鈴木さん。今勇者唯川が切り込むからさ。


「おはようございます安田さん」


 ん!?なんか聞いたことある鬼みたいな声がするぞ。


挿絵(By みてみん)


名前    アズマ(地球名、東秀千代) ♂♀

年齢    17

職業    剣士

称号    無双

レベル   34

HP    253/253

MP    0/0


戦闘力   1380 


装備

ミスリルの大剣(黒)

魔法銀の軽鎧


所持スキル


剣撃無双


剣術レベル4


たて斬り、横斬り、一線突き、真空牙、切り裂き、千手剣撃


体術レベル3


正拳突き、まわし蹴り、飛び膝蹴り、鉄拳


パーティーメンバーステータス確認



説明


一日交代で男と女になります。



 なんでやねんっ!!!!

 一日交代で女になんのか!?


 んでなんで東くん本人やカワウソ子供組やら東くんのパーティーの二人娘は普通にニコニコしながら飯を食ってんの!?

 どういう精神の持ち主達!?

 そこにいるやつ一日おきに美女になったり鬼になったりすんだぞっ!!



 その日以降東くんは一日おきに女になったり男になったりするようになったが、もはや我々大人も最近の若者はなに考えてるのかわからないということで、完全にスルーすることにした。

カワウソ達はぱっと見で犬の雌雄がわからないのと同じであれ?ちょっと痩せた?位の認識です。


他の三人は大人をおちょくってるだけです。

次の日に男に戻ったことには本人も度肝を抜かれています。

東くんは今後女になったり男になったりします。


あと主人公とヒロインは同じ部屋で寝ていますが、パヤパヤなことはいたしません。

この小説は全年齢対象となっております。

子供ができたらコウノトリが運んできます。

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