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第3章 4話 飛行船が来たよ。

挿絵(By みてみん)



場所名 北ササラ国 王都ホシカゲ


説明


建国約三千年のなかなか歴史がある国の王都。

ナピーナップから南に千キロ位行ったところにある。

王都だけに限らず国全体で現在食糧難でやばい状況です。

急いで何とかしてください。


 俺は鑑定結果を見ながら、馬車だの飛行船だのが並んだ飛行船発着所にいる。

 朝にこの国の訳のわからない秘密結社を摘発して、今はもう日が暮れそうな夕方。

 あ、来たわ。

 夕焼け空に見覚えのある飛行船が見える。


「パパー」

「ママー」

「お父さんっ」


 子供カワウソ達が飛行船に向かって叫びながら手を振っている。

 見覚えのある飛行船が着陸して出口が開いた。


「ペペっ」

「ショコラ」

「タルトっ」

「ミカンっ」


 カワウソの親組が飛行船から飛び出して子供のとこに走ってきた。

 心配させたみたいだな。

 全部胡散臭い元王のせいだ。


「安田くんっ」

「安田さん、大丈夫ですかっ?」


 鈴木さんと東くんも出てきた。

 こっちも心配させたみたいだ。

 全部胡散臭い元王のせいだ。

 ケツバットされろ。


「大丈夫大丈夫、みんな元気だから」

「うむ、私がいて何かあるわけがなかろう」


 京がいつも通り偉そうにしてるわ。


「……ところで安田くん、その王冠はなに?」


 お、当たり前だが、俺の頭に乗ってる冠に気づかれた。


「王様になった」


 いい笑顔で言ってやった。


「……うん、……は?え、なに?」


「だから王様になった」


「……その王冠、どっかのお土産とかなんかじゃないんですか?」


 東くん、安田お兄さんはお土産屋さんで王冠売ってても買わないし、買ったとしてもこんな意気揚々と人前で着けないよ。


 ……うん、いや、嘘だわ。

 お土産屋さんで売ってたら多分買うし、意気揚々と人前で着けてはっちゃけるわ。

 俺ってばそういう人間だったわ。

 でもこれはお土産じゃなくてモノホンだからね。


「違うよ。正真正銘この国の王様の証だよ」


「………………またなんかとんでもないことをやらかしたことはわかったよ」


 鈴木さんがなんか納得した。

 よし、じゃあ。


「はいこれ」


 俺は鈴木さんの頭に王冠を被せる。


「……ん?なに?」


「じゃあ次鈴木さん王様ね」


「ええ!?」


「ちなみにその冠、被ってる人にはこの国の人間は誰も逆らえない魔法かかってるから」


「ええ!!!?」


 鈴木さんの二回目のええ!?と共に王冠の天辺の宝石がピカッと光る。

 これで、王位継承完了らしい。

 現役の王様が、じゃあ王冠あげますよ。って気持ちで王冠を次の人の頭に乗せるだけでいい。

 簡単。

 いや、国家的な儀式は何か色々あるらしいけどね。

 今回は省略です。前回も省略したけどな。


「じゃあ、鈴木さん、缶詰山程出してよ、厳密にはここにある馬車と飛行船パンパンにして尚余るくらい缶詰出して」


「………………食糧危機なの?」


「うん」


「……ヤバめ?」


「かなり」


「………………はあ、わかったよ。とりあえず食べ物だね」


 さすができるオッサンだ。

 理解も早けりゃ、話も早いな。

 じゃあ持ち前の食べ物スキルと王冠の権力で好きにやってちょ。


 鈴木さんが山程馬車が置いてある方に近づいて行って、スキルの缶詰精製を発動させる。


「おおっ、これは!?」

「金属の塊?」

「いや、中に何か入っている。何か書いてあるぞ、……黄桃?桃か?」


 周りにいる騎士だか文官だか、いやまあその両方か。

 これから各地に缶詰を運ぶ仕事をする人達がパンパンになった馬車を見てすごい驚いてる。


「中に食べ物が入っていて、こう、開けます。これは果物の蜜づけが入ってますね。こっちはパンの缶詰、あとご飯の缶詰です。五目飯とか鳥飯なんかがはいっています。甘味と炭水化物を優先しました。すぐに運ぶんですよね?各自準備が出来次第行って下さいっ」


 お、ちゃんと缶切り要らずのパッカン方式の缶詰にしてくれてるわ。

 そして超迅速な指示だし、さすがだわー。


「おお、素晴らしいっ」

「すごいっ、あの、王様?お名前をお教えください」


「えーと、鈴木です」


「す、鈴木王様っ、この食糧はどの程度出せるのでしょうか!?」


 うんそこ一番大事よね。


「……えーと、ですね。この国の国土を埋め尽くせる位……」


「そ、そんなに!?」


「……の一万倍位は出せます」


「い、一万倍!?」

「せ、世界が終わる」


 確かに全部出されたら終わるな。

 缶詰ラグナロク。



「う、うおおおっ、鈴木王、万歳っ」

「ばんざーいっ」

「ばんざーいっ」

「ばんざーいっ」

「わっしょーいっ」

「ばんざーいっ」

「わっしょーいっ」


 おおう、飛行船発着所にいる人々から万歳の合唱がでたぞ。

 なんかお祭り気分のヤツもいるけど。

 鈴木さんはなにやら困った顔してるが、全く足を止めない。今は飛行船を缶詰いっぱいにしてる。

 できる男は違うわ。

 俺なら調子に乗って踊っちゃうんじゃないか?

 あ、ていうか俺はばんざーいされてないんだけど?

 おい、安田王様のばんざいは?


「先生、我々は何をすればよろしいでしょうか?」


 あ、俺が下らないこと考えてたらピンタさんを先頭にカワウソ達が揃ってたわ。

 えーと。


 ウルトラ鑑定


鑑定結果


勇者鈴木のお陰で食糧は無限に出せますが、貴族が幅を効かせやすい国ですので情報不足などで貧乏な平民に食料が十分に行き渡らない可能性があります。

カワウソ達には各地に運ぶ馬車や飛行船に同乗させて目を光らせて貰ってください。


 うーん。


「まんじゅう、カプセル魔物山程出して」


 リンリンリンっ。


 まんじゅうの口から往年のガチャガチャのカプセルが100個位出てくる。

 このカプセルはまんじゅうの下級召喚魔法だ。

 カプセルの中には魔物が入っていて開けるとやたらかわいいビジュアルの魔物が出て来て戦ったりしてくれる。

 仲間にカプセル持たせれば、往年のカプ◯ル怪獣のような使い方もできる。

 いやポキモンの方がわかりやすいか。

 そんな使い方ができる。


「ピンタさん、悪いんだけど大人組で食糧運ぶ馬車とか飛行船に同乗して各地で食い物が貧乏な人にもちゃんとわたるように目を光らせて欲しいんだ。後、食い物はほぼ無限に出せるってことも伝えて」


 ピンタさん達にお守りとしてたくさんカプセルを渡しながら頼む。


「お任せください」


 ピンタさんがイケメンボイスで答えてくれる。


「じゃあ、よろしく」


「はっ」


 よし、できる太ったおじさんにできるカワウソ達が合わさった。

 これでもうこの場は安心かな。


 さて、じゃあここにいたら邪魔になるだろうし、俺はどうすっかな?

 あ、そうだ。


「文官さん、庭の財宝掘りに行こうぜ」


 なんだかんだ城からずっとついてきている最初に会った文官さんに話しかける。


「えっ!?我が家に!?」


「そう、あ、いや横取りしようとしてる訳じゃないからね。ロマンじゃないか、地面に埋まってる財宝掘り当てるとかさ」


 鈴木さんとカワウソ達以外のメンバーで馬車に乗ってこの文官のオッサンの家に行くことになった。


 ていうかこの人、名前なんだっけかな?


名前   ナキアミ・タンジア ♂

年齢   37才

職業   下級男爵

種族   人族

称号   平凡な文官


レベル  4

HP   33/33 

MP   5/5


STR  8

AGI  3

VIT  3

INT  9

MND  6

DEX  7


装備


下級貴族の服


所持スキル


綺麗な字


鑑定レベル2


説明


代々下級貴族の家柄の男。

またの名を三億の宝石が庭に埋まっていたことが発覚したラッキーガイ。

庭には宝石の他にもなんか色々キラキラしているので見に行ってもいいんじゃないでしょうか?



 ナキアミさんか、覚えづらいな。

 よし、ラッキーガイって呼ぼう。


 みんなで馬車に揺られながらまったりしていると、なにやらラッキーガイが急に慌て出した。


「ちょっ、ちょっとお待ち下さいっ、今気づいたのですが、我が家に勇者様のご一行が来るってことですよね!?」


「そうだよ。何を今さら」


「いやいやいやいや、色々準備がありますよっ、我が家はしがない下級貴族ですものっ、色々準備がありますよっ」


 準備があるってことを二回言うくらい準備があるんだなあ。


「気にするな、我々はただの旅人としてあつかうがよい」


 京が全く旅人とは思えない権威ムンムンな口調でたしなめてる。


「……は、はあ、……まあ、わかりました。じゃあ行きますか……」


 なんか抗うのを諦めたようだ。





「……え?騙されそうになったんですか?で?色々あって今宝を掘りに行くことに?」


 いい機会だから東くんに俺達が勇者召喚されたあらましを説明した。


「そう、三億相当の宝石だってさ」


 ワクワクするよね。


「……はあ、まあいいです。色々あったんですよね。自分寝るんで着いたら起こしてください」


 なんか理解するのを諦めたようだ。




 そして、ラッキーガイの家に着いた。

 なかなか立派な屋敷じゃないか。


「旦那様、おかえりなさいませ、その方々は?」


 あ、屋敷から執事が出てきた。

 おじいちゃん執事だな。


「ああ、いや、お客様だ。うん、お客様」


「どうも、お客様です」


 お客様でさっきまで王様だった安田です。


「いらっしゃいませ、私、当家の執事のセバスと申します」


 セバスさんか、チャンはついてないんだな。


「ラッキーガイ、さっさと庭に行くべ」


「え?ラッキーガイ?それ私ですか?ああ、まあ行きましょうか」


 もう、挨拶もそこそこにみんなで屋敷の中庭に行く。


「旦那様?中庭に何か?」


「ああ、よいのだセバス、こちらは任せて仕事にもどれ」


 俺達の説明とか色々めんどくさいからか、ラッキーガイはセバスさんを仕事に戻らせる。


 そして中庭だ。なかなか広いいろんな植物が植えてある。


「ええーと、たしか梅の木の下にあるのですよね?」


「そうだよ。あ、あれだね。まんじゅう、頼むよ」


 リンリンリンっ。


 ザクザクザクっ


 合点のリンリンリンと共にまんじゅうが梅の木の根本を掘る。

 まんじゅうのマジックバンド十数本ならあっという間だ。


 ……ん?なんか出てきたな。

 なにやら木の箱だ。

 まんじゅうが木の箱出して地面に置く。


「……まさか、うちの中庭にこんなものが」


「じゃあ、ラッキーガイ、開けて」


「は、はい、……ラッキーガイって呼ぶのやめてくれません?」


 うわ、すげえな。

 でっかい紫色の宝石。キラキラ。

 なんか他にも色々入ってるわ。


「う、うわわわわわ、我が家の庭にこんな、ひえーっ」


 ラッキーガイがひえーっって言った。


 ん?、なにやら銀色の箱がある。

 あれこれ、なにやら見覚えあるぞ。


ウルトラ鑑定。


アイテム名 ミスリルの箱


分類    雑貨

レア度   C+

価格相場  500000G~600000G


効果及び説明


希少な金属ミスリルで作られている箱。

物を収納することができる。錆びない。


余談


勇者田中が安田に残したアイテム。

安田にしか開けない。

中にはヤスダに向けた変な歌の歌詞が入っている。


ヤスダのヤはヤマンバのヤ〜♪

ヤスダのスはスパムメールのス〜♪

ヤスダのダはだんじり祭のダ〜♪


というセンス抜群の歌詞が書いてある紙製のゴミが入っている。




「…………」


 この箱だけ貰って家に帰った。

 中の紙はすぐ燃やした。

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