第3章 最終話 それから。
2話同時に更新してます。
ご注意下さい。
「で、その根本くんは無事に家に帰れたってことでいいの?」
「うーん、まあ、家ごと持ってきたわけだけども、帰れたと言えば帰れた……かな?」
今俺は変な空間で世界一どこにでもいる顔と定評がある田中くんに今回の事件の一部始終を語っている。
根本家召喚事件を解決した後、無事に?ミッションコンプリートしたってことで宴会になった。
やたら魚の塩焼きが並ぶ渋い宴会の中、へとへとだった俺はどうやらソファーで寝てしまったらしい。
そして寝てると時々俺の頭の中にやってくるアパートで隣に住んでいた友人田中くんが、俺の夢の中の世界に来訪した。
せっかくなのでお互いの近況報告をしようってことで、博士やら快盗やら色々話している。
ちなみに田中くんは別な世界で醤油の作成に成功したらしい。
田中くんはなにやらやり遂げた顔をしている。
「僕もそろそろそっちの世界に帰る用意しないとなあ」
「お、こっち来るの?」
「うん、そろそろねえ、そもそもこっちの世界至極平和でね。ぶっちゃけすることないんだよ」
「そうなんだ」
平和な方がいいじゃねえか。
『ちょっと、なに寝てんの?』
「うわあっ」
「……ビックリしたあ」
夢の中の世界に突然てるてる坊主が出てきた。
ビックリしたあ、自分の夢の中でビックリするってわけわかんないんだけど。
「あ、確か女神の、前にお会いしましたよね?」
『ああ、そうよそうよ、田中くんよね。おひさー』
人の頭ん中で何をのんきに挨拶してんだ。
「てるてる坊主、人の頭の中に急に入ってくるなよ。君ら二人が揃うとふくらはぎ痛い思い出が甦るんだよ」
『しょうがないでしょ?寝てんだもん。私そろそろ帰るし、みんなに挨拶するから起きて』
「あー、わかったよ。じゃあ田中くん、またね」
「はいはい、また連絡するからー」
というわけで目が覚めた。
ソファーで体を起こすと、京と鈴木さんと東くんのいつものメンバーがいる。
んん?なんかソファーの近くに男性が寝てる。
なんだこの人?酔い潰れたかなんかか?
……あっ、こいつ東くんナンパしてたやつだ。
「どうしたのこの人」
「東を強引に誘おうとしてな。綺麗に気絶させられた」
「首筋にチョップすると、人ってホントに気絶するんだね」
京と鈴木さんが状況を説明してくれる。
気絶させられたのか……。
東くんはいつも通りにこやかにしてるだけだ。こわ。
「なんか女神しゃまが帰るってさ」
「うん、聞いた聞いた」
俺は鈴木さんが伝えてくることに頷く。
勇者みんなでベランダに出る。
『じゃあね、またなにかあったら来るから~』
でもこのてるてる坊主どこに帰るんだ?月?
「うん、ありがとうね。まじで助かったよ」
「ありがとうございました」
「達者でな、てるてる坊主」
「すごかったです。女神しゃま」
みんなで別れを告げる。
『……神はみんな己の中に一つの世界を持ってるわ』
ん?帰り際になんか語りだしたぞ。
『己の中に確固たる世界を持つこと、それこそが神の証、そして己の中の世界を現実世界に無理矢理溢れさせ、現実を強引に己の世界に変化させるのが神の持つスキルの正体よ』
難しいこと言ってる。
『現実世界は残酷で強固、神の力をもってしても変えられるのは一部だけよ。だから神のスキルはすごく限定的で変な物がたくさんあるの』
「難しいぞ、てるてる坊主」
京がみんなの思ってることを代表して言ってくれる。
『でも安田っち、あなたの中にある世界は……』
安田っち?
俺、安田っちだったの?
『あなたの中にある世界は、キラキラで、優しくて、どんなシリアスなことでも軽く笑い飛ばしてしまう愉快な虹色の世界。誰もが求めて欲してしまう温もりに溢れた世界』
んん?
『現実世界という何よりも残酷で残忍な存在が、思わずあなたの世界の温もりに手をのばして、鈍色の現実世界をあなたの虹色に染めてしまうほどに綺麗で暖かい世界。あなたのスキルの万能性は、すべての神の敵であるはずの現実世界こそが、あなたの味方だからよ』
全然なに言ってるのかわからん。
『あなたのそばにはハッピーエンドしかないってことよ』
ええ?どういうこと?
『あなた達は彼を支えてあげて』
「もとより私は龍臣の妻だからな。妻は夫を支えるものだ」
「僕のできる限り」
「わかりました」
仲間達がてるてる坊主になんか真顔で話してる。
多分俺の話なのに俺がついていけてないんですけど?
『安田っちは好きに生きればいいってことよ。頑張りなさい』
そしててるてる坊主は空に帰っていった。
「あのう、すいません」
んん?ベランダで突っ立ってたら、話しかけられた。
あ、博士の父親だ。
「どうしました?」
「いやあ、なんか息子が大変お世話になったようで、まだ異世界転移とかよくわかってないんですが、とりあえず皆様にお礼を、ありがとうございました」
おお、改めてお礼を言われた。
部屋の中では博士が母ちゃんの手を引いて、なんか色々話してる最中だ。
親子でニッコニコだ。
よかった。
「いやあ、まあ、あっ、じゃあこれを受けとってください」
「え?なんです?」
俺は博士の父ちゃんの頭に王冠を被せる。
「いや、実はお宅の息子さんね。この国中に1000基位の武器つきのロケットをいたるとこに隠してるんですよ」
「ええ!?ロケット!?」
「だから、とりあえず王様として息子さんと一緒に国中にあるロケットをどうにかかたづけてください。危ないんでね」
「王様!?ええっ!?」
頼んだぜ博士の父ちゃん。
「龍臣、異世界に今日来たばかりの男を王様にするなよ」
「安田くん……無茶ぶりだね」
「安田さん、むちゃくちゃですよ。あの、自分達もお手伝いしますから」
俺は基本他人におんぶにだっこで生きていきたい男だからね。
いつも通りじゃまいか。
これにて3章完結です。
読んでいただきありがとうございました。
最後に評価などしていただければ嬉しいです。




