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第3章 15話 根本さんに会いに行こう。

「龍臣、あれが目的地の山か?」


 京が飛行船の窓から進行方向にある山を指差す。

 エルフの村を出てから2日、やっとこさ目的の山が見えてきた。


「そう、んじゃあ、この辺から歩いていくべか」


「どうして?もう少し近くまでいけるでしょ?」


 鈴木さんが、当然の疑問を投げかけてくる。

 それとも太ってて膝が悪いから歩きたくないのか……。

 両方か。


「うん、なんか根本さんが仕掛けた罠みたいのがあるらしくてさ」


「罠ですか?」


 女版の東くんが危なっかしい単語に鋭く反応する。


「うんまあ、罠っていうのかなんなのか」



鑑定結果


現在小ササラ山に来る者は根本の存在を知っているかどうかで選別が行われています。


根本の存在を知らないものが山に来ても特に何も起きません。


根本の存在を知っており、根本に害意を持っている者は根本の開発した警備システム「安全くん破壊者バージョン」によりえらい目に合います。


根本の存在を知っているが害意がなくただ根本に用があるものは「安全くん通せんぼバージョン」により通せんぼされます。


安田達は存在を知っており、害意がないパターンですので、通せんぼするヤツが出てきます。

厳密に言えば空気のつまったビニールの雪だるまみたいなヤツに思い切りタックルされます。

飛行船で行った場合飛行船にタックルされて、飛行船がものすごく揺れるし先に進めません。

徒歩で行った場合は、やはりタックルされますがこっちからも思い切りタックルしたりすれば強引に先に進めます。

ただし刃物や魔法による攻撃はだめです。

通せんぼバージョンが壊れたら破壊バージョンが出てきます。



 安全くんってなんなんだよ。


「まあ、歩いていくと雪だるまみたいなのがタックルしてくるらしいから、こっちもタックルしたりして強引に先に進もう。でも刃物とか魔法で壊したらダメ」


「「「「雪だるま?」」」」


 みんなよくわかってないらしい。

 俺もあんまよくわかってない。


「まあ先に進んでみよう」


 俺達は小ササラ山に向かって歩き出す。


「はっ!?」


 しばらく歩ってると、土の中から白い塊が出てきた。

 ホントにビニールの風船でできた雪だるま丸出しだな。

 そしてどうやらパーティーメンバー全員の前に一体ずつ出てきてるらしい。

 鈴木さんの前にいるヤツはでかくて、カワウソ達の前にいるヤツは小さい。

 どうやら個別に同じサイズのヤツが出てくるらしい。


 これが安全くん通せんぼバージョン。


 ドンッ。


 ん!?なんか京の方から効果音がした。


 おお、京が見事にタックルを食らってひっくり返っている。

 そしてむくりと京が起き出す。


「なんだこのだるまがーっ!!」


 ドーンッ!!


 おお、凄い効果音と共にドロップキックが炸裂したっ。

 安全くん通せんぼバージョンが十数メートル吹っ飛んだ。



 ――あっふっ。


 視界がひっくり返った。


 しまった。京に気を取られてて俺もタックルされてしまった。

 おお、これは思った以上にイライラする。


「安田くん、これはこう、だき抱えて前進すればいいんじゃない?」


 おおっ、鈴木さんが凄いアイデアを産み出したっ。

 鈴木さんが雪だるまを抱えて進みだした。

 すげえっ、あれならタックルされずに進めるっ。


 ……あ、ダメだ。

 雪だるまものすげえ暴れてるわ。

 雪だるまは鈴木さんに抱えられながら、全力で全身をぐいんぐいんさせて抵抗している。

 鈴木さんから「くっ」「なあっ」みたいなイライラな不快感丸出しの声がうっすら聞こえる。


「……うんまあ、イライラするね」


 鈴木さんは抱えてる雪だるまを普通におろした。

 鈴木さんらしく静かにイライラしている。


 カワウソ達の方からもシャーッ、だか、カーッ、だか獣の威嚇するような声がたくさん聞こえる。

 東くんパーティーの女子二人の狼狽する声も聞こえる。


「安田さん、自分の前にいるヤツはなんか、なにもしてこないのですが……」


 東くんの呼び掛けに振り替える。

 ……なんでだ?

 東くんの前にいる雪だるまだけなぜか邪魔をしない。

 むしろなぜか山に向かって進むのを促している。

 なぜだ?


「……美人だからかな?」


「おいっ、私は!?」


 一番はじめに一番強く当たられた吸血鬼の女王様がなにか言っている。


 ――おっふっ。


 俺もまたタックルされてしまった。




 

 



 そして俺達はタックルされ続ける中(一名を除き)を強引に前進して、イライラマックスで山の麓に到着した。


「お、山の麓につくと消えるんだな」


 山の麓につくと雪だるま達は地面に溶け込むように消えてしまった。


「あ、どうも」


 東くんのヤツだけ握手してから消えた。


「……で、どこにいるんだ?その根本とかいうクソガキは」


 なぜか一番強く当たられ続け、一番泥だらけにされた吸血鬼の女王様がイライラマックスで根本さんの居所を聞いてくる。


「えーと」


 ウルトラ鑑定。


鑑定結果


道なりに進んだところにある山小屋の中にいます。

しかし山道にもややこしい罠が仕掛けられています。


10歩進む度に足元にちっちゃい足首くらいの深さの落とし穴が出現します。

10歩目で空間魔法で落とし穴が足元に出現しますので回避不可能です。

落とし穴の中には蜂蜜がたっぷりつまっています。

落とし穴の深さはちょうど足首くらいまでなので、靴の中に蜂蜜がものすごい入り込みます。

なにもない山道で足から甘いにおいを漂わせた上に靴の中からなにからベッタベタになります。

気分的には最悪になること請け合いです。



「……最悪だな」


「え?なに?まだ何かあるの?」


 鈴木さんが臆した顔で聞いてくる。


「……まあ、進もうよ」


 みんなで山道に入る。



 ……7、8、9、ザプッ。


 はい、ホントに10歩目で蜂蜜入りのちっちゃい落とし穴出てきたー。


「うわっ、なにこれ!?……蜂蜜!?」


「なんだーっ」


「ぎゃーっ」


「きゅんきゅんきゅん」


 チャラチャララ~♪


「え?なにこれ?」



 鈴木さんが驚き、京だけなぜか腰くらいまでの深さのでかめの落とし穴に落ち、東くんパーティーの女子二人のぎゃーって声が響き、カワウソ達の狼狽した時に時々出るきゅんきゅん声が響く。


 そしてなぜか東くんだけは、10歩目と同時に心地のいいクラシック的な音楽が流れる。


 ……なんでだ?


「……やっぱ美人だからか?」


「私はっ!?」


 なぜか10歩進む度にデカい落とし穴が出てきて、一人だけ全身蜂蜜まみれにした吸血鬼の女王様がなんか言っている。


 どうしようかな。俺だけいま腰に引っ付いて寝てるまんじゅうに抱えてもらおうかな……。

 ……やめとこう。

 俺一人だけ落とし穴かわしてたら、蜂蜜だらけの女王様に目をつけられて落とし穴に引きずり込まれることになりそうだ。





 いや、ていうかこれなんで京だけ被害がでかくて東くんは被害0なんだ?

 こういっちゃなんだが、こいつも吸血鬼の女王だからなのか顔だけは美人なはずなんだが。

 ……やっぱガサツだからかな?



鑑定結果


東の性別で安全くんの選別システムと落とし穴の選別システムがバグっているからです。

唯川は吸血鬼の遺伝子情報のせいで選別システムがバグっています。



 まさかのバグ。

 安全くん意外とポンコツ。






 そして10歩進む度に足を蜂蜜だらけにして靴の中をベトベトにしながらやっとこさ目的の山小屋が見えてきた。


「あそこに根本とかいうクズがいるのか?」


 一人だけ全身泥だらけ蜂蜜だらけで、イライラが限界突破している吸血鬼の女王様が根本さんの居所を聞いてくる。


 この方、根本さん殺しちゃうんじゃないかな?


「ちょっと休憩しよう。みんなとりあえずシャワー浴びようか、京は特に」


 俺は持ってきた魔法の部屋の扉を開けて、みんなを部屋に招く。

 そしてみんなでシャワーを浴びて、京の心を落ち着けるために、田舎に引っ越して森の精霊的なヤツと仲良くなる姉妹のDVD上映会を開催してから外に出る。


「おい、私は魔女のヤツが見たいんだが」


「このイベント終わったらな」


 体を綺麗にし、ジブ○の力ですっかり機嫌がなおった吸血鬼の女王様と共に山小屋の前に立つ。

 えーと。



鑑定結果


山小屋の中に入り、奥にある壁の上から3列目右から3番目のレンガを24回押して、入り口のドアノブを7回捻ると隠し部屋の入り口があらわれます。



 こいつこんなんばっかだな。


「安田くん、このレンガ?これを24回?」


「そう」


 鈴木さんがレンガを24回押すのを見届けてから入り口のドアノブを7回捻る。


 ガゴンッ。


 はい、小屋の奥に階段が出てきましたよと。

 じゃあ早速みんなで階段を降りる。


 階段を降りると十畳位の小さめの部屋に出た。

 壁から天井から真っ白の部屋だ。


 そして部屋の真ん中に妙な機械と散乱した機械に使うのであろう部品チックな物……そして。


挿絵(By みてみん)


 チビッ子博士発見。


「だ、誰じゃ?」

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