第3章 11話 快盗パリパリオス。
名前 ヤナセ・ナナカジマ ♂
年齢 38才
職業 領主代行
種族 人族
称号 補佐上手
隠し称号 義賊の中の義賊
レベル 23
HP 117/117
MP 86/86
STR 33
AGI 65
VIT 32
INT 101
MND 85
DEX 80
装備
風小僧のマント
怪力グローブ
所持スキル
風魔法レベル1
気配遮断
体術レベル3
正拳、回し蹴り、空気踏み、雷蹴り、クミン式魔法体術初段
無限空間
擬態(装備効果)
アイテム知識
説明
ヤスダ達がこの都市に来てはじめて出会った頭ツルツルのおじさん。
表舞台ではくそみたいな領主の補佐をしながら領主がアホみたいなことをする度に平民に迷惑がかからないように手を回していた。
裏では表での立場を使い、貴族達の情報を集めて悪事を働いている貴族の屋敷や城に忍び込み盗みを働き、そこで得た金品で困窮する民に施しをしていた。
この国における正義の味方のような存在。
ただし、残念なことに頭はツルツル。
現在倉庫にてロケットを解体中。
俺が鑑定して悩んでると、ナナセさんが懐からなにかを取り出した。
「現場にこれが」
……なにこれ?なんかカードみたいなやつに、「財宝は快盗パリパリオスがいただいた」と書いてある。
まじか、分かりやすいことするなあ。
「快盗パリパリオスという盗賊がこの都市にはいるのです」
ナナセさんが睨み付けるようにカードを見ながら説明してくれる。
「……じゃあナナセさん、とりあえず現場に戻って、捜査して」
「はっ」
ナナセさんが返事するや否やロケットがあった隠し倉庫の方角に向けて走り出す。
「おのれええっ、パリパリオスめえぇぇっ!!!」
星空にナナセさんの慟哭がこだまする。
……あの人、快盗追っかける警部的なのポジションの人だったんだなあ。
「安田くん、快盗の正体誰?」
「一番最初にあった頭ツルツルのおじさん」
「え?あの人?」
あ、やべ、鈴木さんのナチュラルな問いかけに思わず正体言っちまった。
……まあいいか。
「龍臣、ネズミ小僧的ないい方の泥棒なのか?」
京が地球における義賊に例えて聞いてくる。
「なんか例えが古いけども、そうらしいよ。今も危ないからってロケット解体してくれてるらしい」
「安田さん、どうするんですか?捕まえます?」
東くんが捕まえるかどうか聞いてくる。
「いや、この国だと正義の味方らしいから、基本的に放置の方向で」
「して、残りのロケットはいかがします?先生」
「うん、じゃあ勝手にロケットを解体してくれるようだから、他のも任せよう。快盗っていったらなんでもできる人達だしね」
「……なんでもできるのかい?」
鈴木さんが疑問らしい。
なんでもできるでしょ?だって快盗だよ?
じゃ、方向性も定まったところで、今日はもう寝よう。
次の日、領主の館で事件の経過報告を聞くことになった。
「申し訳ありません。依然パリパリオスの行方はつかめておりません」
ナナセさんが、悔しそうに快盗の行方がわからないと話している。
俺達は王様である東くんを真ん中に据えて、会議室みたいなとこに集められて話し合いをしている。
騎士やら兵士やらが沢山集まってるなあ。
領主代行のツルツル頭のおじさんももちろんいる。
彼は我々勇者勢の後ろに真剣な顔で立って、会議の進行の補佐をしてくれている。
ちなみにおもいきり犯人でもある。
忙しい人だ。
「申し訳ありません。東王様、……うわあ!?ど、どちら様ですか!?また王様変わったんですか?」
説明することに集中して見ていなかったのか、ナナセさんが東くんの顔を見て度肝抜かれた顔をしている。
うんまあ、一晩たって性別が変わってしまっているからね。
「いや、ナナセさん、それ東くんだから」
その子、一日おきに性別変わるニュータイプなんだ。
「ええ!?」
「東です」
美人な顔でニコニコしながら、改めて東くんが自己紹介をする。
うん、めんどくさいから仕切り直そう。
「で、ナナセさん、ロケットは見つからないの?」
「は?、あ、はいっ、申し訳ありません。ロケットの行方も依然つかめておりません」
「ああ、そう、ところで話は変わるんだけどね。昨日行ったアジフライ屋あるじゃん?」
「……え?はあ」
「あそこの地下室に隠し部屋があって、そこにも魔導ロケットが見つかったのよ」
「ええ!?」
「地下室にある三段目の列の一番左端のレンガを38回押して、二段目の列の右から三番目のレンガを7回押すと隠し部屋が開くから、んで中にロケットあっから、騎士団はまた警備しといて」
まあ、ぶっちゃけゆっるゆるの警備でいいけどね。
「は、はいっ、わかりましたっ」
ナナセさんがやる気だした返事をする。
「うん、地下室にある三段目の列の一番左端のレンガを38回押して、二段目の列の右から三番目のレンガを7回押すんだよ?」
「はいっ、覚えましたっ」
うん、いい返事だ。
まあ。別にナナセさんに向けて言ってるわけじゃないんだけどね。
「ちょっと、領主代行のヤナセさん、ちゃんとメモをとってっ」
ちゃんと覚えたのかっ、ツルツル快盗のおじさんっ。
「え!?は、はい、ちゃんと、とっております」
ツルツルおじさん突然ふられてびっくりしてるけど、むしろこれあんたに言ってっから。
「うん、じゃあ今日は解散」
「や、安田様、行方知れずのロケットの捜索はいかがいたしますか?」
「……じゃあ、迷宮入り」
昨日の今日で迷宮入り。
「ええ!?」
「そんな過去のことより未来を見てっ、アジフライ屋の地下を守ってっ、僕らの未来も守ってっ」
「過去のことって、つい昨日の話ですよ!?なんですか僕らの未来って!?」
「過去の出来事なんてなんでもいいんだよっ、未来に生きろっ」
「なんでもいいんですか!?よかないでしょ!?」
迷宮に入っちゃったんだからもういいんだよっ。
そして、その日の夜。
「申し訳ありません安田様っ、また盗まれてしまいましたっ」
「……ああそう」
「現場にいた警備の騎士達はみな眠らされ、気がついた時には隠し部屋はもぬけの殻でした」
「……よし、じゃあ、明日また同じ会議室で話し合おう」
「はっ、申し訳ありませんっ」
そして次の日の会議室で。
「あ、東王様はまた男に戻ったのですか?」
「東です」
東くんがいつも通りにこやかに返事をする。
で、俺がまた爆弾を投げ込む。
「実はね、またロケットが見つかったのよ」
「ええ!?」
「うん、じゃあまた隠し部屋の開き方を教えるから、また警備してね」
「や、安田様、盗まれたロケットはいかがいたしますか?」
「……まあ、無くなったロケットはみんなの心の中にあるしさ、それでいいじゃない」
「「「「………」」」」
ナナセさんをはじめとした騎士達は、よかないだろって顔丸出しだが、それでいいじゃない。
「で、今回はロケット隠されてる5箇所の隠し部屋の開け方を説明するから」
「ご、5箇所もあるんですか!?」
残りあと四十箇所以上あるよ。
「……ほら、そこの領主代行のおじさんっ、ちゃんとメモってっ、柱の先っぽを9回押すんだよっ」
「あ、はい……」
ちゃんと聞きなさいよ、主にあんたに説明してんだから。
そしてその日の夜。
「申し訳ありませんっ、安田様っ、また盗まれてしまいましたっ」
「……全部盗まれた?」
「全部盗まれてしまいましたっ」
「よし、じゃあ今日は寝る。ナナセさんも家に帰って寝なさい」
「お休みなさいませっ」
なんかナナセさんがやけっぱちになってる気がするな。
……よし、寝るべ。
また明日だ。
「……安田くん、やりすぎじゃない?」
「そうですよ安田さん、ただロケット持って行って欲しいだけなら、もう領主代行の人に直接言えばいいんじゃ……なんでわざわざ騎士団を動員するんですか?」
寝ようと部屋に戻る途中で、鈴木さんと東くんがとんちんかんなことを言ってきた。
「なに言ってんのダメだよ、快盗の正体は誰も知らないていを守らないと、直接ツルツルおじさんに言うなんて、あなたが快盗だって知ってますよって言ってるようなもんじゃん、絶対ダメ」
「そ、そういうものなの?」
当たり前じゃん。
「……しかし、ここの騎士団ポンコツ過ぎやしないか」
京がぼそっと呟く。
うん、そうだよな。
なんで5箇所全部盗まれてんだろうね。
いや、こっちとしては狙い通りだからいいんだけどさ。
鑑定結果
パリパリオスの捜査に乗り気じゃない勇者勢を見て、怪盗と勇者勢が繋がっていると感じ、勇者勢の中に現役の王様もいることから、権力に流される形で騎士団の人達は手を抜いて警備しています。
ああ、なるほどな。権力万歳。
そして日に日にロケットは無事に盗まれ、日に日にツルツルおじさんの頭のツルツル具合がくすんでいった。
そして隠し部屋の処理が30ヶ所を越えた辺りで。
「もう直接私に言って貰えますっ!!!?」
会議室に向かう途中の廊下でツルツルおじさんからキレ気味に文句を言われた。
「私の正体気づいてますよね!?もう私に直接言ってくれませんか!?騎士団の目をかいくぐって盗むのえらい大変なんですけど!?なんでわざわざ騎士団に言うの!?」
あれ?えらいキレられたな?
おかしいな、俺なりに快盗のルールに乗っ取って動いていたはずなのに……。
なにもイラストの案が浮かばなかったので、この作品におけるかなりのレアキャラである鈴木さんのサボテンことトゲ蔵1号を描きました。
普段は鈴木さんの部屋の机の上にいます。




