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第3章 1話 勇者召喚されたけども。

鑑定結果


勇者召喚されました。



 俺は鑑定結果をボーッと見ながら、うねうねキラキラしてる空間を京とちっさいカワウソ達と共にふわふわ浮いている。


 なんてこった。

 さっきまでナピーナップのみんなとの別れのイベントの最中だったのに。


 安田さん今さら勇者召喚されるの巻。

 ……どうしよう。


「龍臣、でなんなんだこれは?とりあえず手を繋いどこう」


 不思議な空間で京が話しかけてきた。

 何で手を繋ぐ?

 でも正直今のこのわけわからん空間にふわふわ浮いてるっていう状況は、冷静に考えれば考えるほどめちゃめちゃ怖いのでありがたい。

 ぐっと力強く手を繋いでいてほしい。


「先生、ふわふわしてるよ」

「……してる、ふわふわ」


 今度はカワウソが話しかけてきた。


「しかしあれだな。普通に話とかできんだな」


 なんだろうこの不思議空間。恐。


「そうだな。で?どういう状況なんだこれは?」


「なんか勇者召喚されたとかなんとか……」


「……勇者召喚ってなんだ?」


「いやだから、俺達が召喚されたんだべな」


「……どこに?また別の世界にか?」


 あ、そうか、多分そうだよな。

 勇者召喚っていったら別の世界に飛ぶのが定番だろうしな。

 ……えっ?俺達別な世界に飛ばされてんの?

 おいっ、子供カワウソとか家族との永遠の別れだったのか?

 マジかよ。

 ……えっ、俺もう鈴木さんとか東くんとかピンタさんに会えねえの!?

 マジで!?こんなタイミングで急に!?うそだべ!?


 ウルトラ鑑定。


鑑定結果


ナピーナップから直線距離で約1060㎞離れた場所に召喚されました。

ちなみに国名は北ササラ国、安田たちがナピーナップから向かう予定だったヒゲ王様の後輩の国です。



 次に行くはずだった国じゃねえかっ!!

 同じ世界どころか俺たちだけ次の目的地にちょっと早く着くだけじゃねえかっ!!

 なんの意味もないイベントだわっ。

 勇者召喚とか大層なこと言っといてなんだっ。

 無性に腹立つ以外に何の意味もないっ。


 直線距離で約1060㎞って、北海道と大阪位しか離れてねえじゃんっ。

 その位の距離感なら手紙かなんかで呼んでくれたら行くわっ。

 ワケわからんっ。

 なんだこのクソイベントっ。




「あ、先生なんか飛んでくるよー」


 俺と違いまだ状況を把握してないはずのピンタさんの娘のペペちゃんが呑気に話しかけてくる。

 こんな意味不明なふわふわした空間をふわふわ浮いてんのに、平常心だ。

 すげえデカイ肝っ玉の持ち主だな。

 安田さんのビー玉サイズのヤツと交換してくんないかな。



「龍臣、なんだあれ?」


 あ、京もカワウソ達が見つけたなんかを発見したらしい。

 なに?みんなの目線的に俺のちょうど後ろの方に何かあるの?

 俺はふわふわしながら、なんとか後ろに振り向く。


「……うーん?」


 えー、なにこれ。


挿絵(By みてみん)


 ……UFOだわ。

 まじかよ、空飛ぶ円盤か?

 しかも古ーいデザインのヤツ。

 昭和のデザインだわ。

 ていうかなんでだよ。

 なんで急にSFだよ。


 UFOが俺達の目の前にふよふよ飛んでくると、ウィーン、ガシャンっ、みたいな分かりやすい音がして下の方がなんか開いた。

 ……ええ?なにこれ?宇宙人?宇宙人出てくんの?


 ……あっ、ホントに出てきた。

 分かりやすい銀色の体した目がでかい宇宙人が二人?二匹?出てきた。

 これあれだな。グレイとかいうやつだ。


 いやこわっ。なにこれめっちゃ恐い。

 俺達捕まって改造されちゃうんじゃねえの?

 宇宙人こわっ。

 もう宇宙人ってフレーズすら恐い。


「……地球の方ですか?」


 ……日本語で話しかけられた。

 マジかよ。

 勇者召喚されたと思ったら、変なふわふわした空間でUFO出て来て宇宙人に日本語で話しかけられた。

 なんだこのクソイベント。


「……はい、日本人です」


「ああ、やっぱりっ、あなた日本の方よ」


「そうだね。はじめまして、私はナミビアンヌヌ=ニルヴァーヌヌヌヌ、こっちは妻のカンヌヌ=ニルヴァーヌヌヌヌ」


 自己紹介された。

 ……ヌが多い。


「……安田龍臣です」


「私は妻の唯川京だ」


 いや妻ではない。妻ではないし、宇宙人の名前はヌが多いし。

 もう頭パンクしそうだわ。


「ペペです」

「ショコラです」

「タルトです」

「……ミカンです」


「あらー、可愛らしいわあ、あなたカワウソちゃんだわ」


「本当だねえ、安田くんと言ったかな?良ければ我が家でコーヒーでもどうだい?もちろんみんな一緒に」


 宇宙人にコーヒー誘われたわ。

 え?これ家なの?


 あれ?

 ていうか俺達、なんかUFOにさらわれたみたいに勇者召喚されたよな。

 そして今UFOに乗ることになってるの?

 なんだこれ?

 これが異世界方式のUFOによる誘拐なんだろうか?

 間に勇者召喚っていうファンタジー要素挟むのが、異世界式キャトルミューティレイションなんだろうか?







「え?じゃあ神様だったんですか?」


 UFOの中に誘われた俺達は普通にテーブルに椅子スタイルでコーヒーを飲んでる。

 SF感全く無い。

 UFOの中普通のリビング。

 そしてなにやら宇宙人の世間話?を聞かされてる。

 この宇宙人達まさかの神様だったわ。


「そうですよ。地球を見守る役目の神様だったんですよ」

「うん、妻の言うとおり我々夫婦は地球の見回りの担当でね。いやー、よく写真取られたりポカをやらかしたものだよ。すごいよね最近のカメラは、画素数が違うもの、画素数が」


 ……ああ、そうですか。

 UFO乗ってる銀色の宇宙人に画素数誉められたらカメラ作ってる会社の人も本望だろうね。


「なんかメキシコとかでよく目撃されてたやつは?」


「ああ、私達だね」


「あのロズウェルがどうとかってのは?」


「あれも私達だね」


 全部あんたらなの?円盤の形とか違くなかった?

 あとなんかアメリカだかで捕まったりしてなかったか?

 まあ、頭パンクしそうだからもうなんでもいいや。


「いやー、地球生まれの神に会えるとは、嬉しいねえ」

「本当ですねえ、あなた」


「ふむ、神な、龍臣がそんなこと言ってたが、私は今だにピンとこんなあ」


 吸血鬼が話に入ってきた。


「うふふ、あなたはもともと別格ですもの。あなた卑弥呼さんでしょ?あなたは神々が最も注目していた中の一人だもの。神になったところであまり変わらないでしょうね」


「ふふふ、まあな。私だからな」


 吸血鬼がなんか調子に乗ってるわ。

 あとその邪馬台国的なキーワード言うのやめて貰えないかな?

 俺そこのとこスルーしようとしてるからさ。


「しかし凄い。やはり地球出身の神は別格な子が多いね」


「本当ですねえ、卑弥呼さん、いいえ唯川さんはレベル56、それに安田くんはレベル86ですって、私そんなレベルはじめて見たわ。私達夫婦でもまだ40前後なのにねえ」


「うーん、レベルとかいまだによくわかんないんですけど」


「ははは、まあ、神としての力量の指針だと思えばいいよ。昔いた先達の神がわかりやすくシステムをいじって数値化したんだ」


 旦那の方が説明してくれるがやっぱりよくわからんね。


「それにその腰についている綺麗な箱の子なんてレベル70よ。凄いわね。カワウソちゃん達はとても可愛らしいし」


 お、なんかまんじゅうが褒められたぞ。


「もう羽も出てるなら、一人前の天使なのねえ」


 ……ん?天使?


「……天使ってなに?」


「……え?、あ、知らなかったのね。その子は天使よ。神の使いと言えば天使って相場が決まってるでしょう?」


 マジかよ。まんじゅう天使だったのか?

 あ、この羽そういうことだったの?

 魔法的な何かだと思ってたわ。


「パーティーメンバーだったかな?確かそれに入っているならみんな天使だよ」


 ほう、俺の仲間って天使候補だったのか。

 え?じゃあそのうちピンタさんとか背中に羽生えんの?

 カワウソの背中に羽が?

 それじゃあ動物と動物の組み合わせになるな……。

 禁断のキメラ誕生か。


 ていうか、あれ?俺のパーティーメンバー、隣にいる吸血鬼含めて日本人めっちゃ入ってんだけど……。


 ……まあ、もうなんでもいいか。

 ただでも勇者召喚されてる最中に宇宙人にさらわれてコーヒー振る舞われてるわけだからな。

 これ以上はもうなにも消化できないよ。


「地球の大仕事が終わったから、私達夫婦は少し休みを貰ってバカンスに行く途中なんです。こういう場所で他の神に会うことなんて滅多に無いのに、やっぱり六十億も神が増えたからか神の世界は本当に賑やかになったわねー」


 バカンス……。


「……六十億人が一気に神様とか、珍しいことだったんですか?」


 京と同じで、いまだにピンと来ない。


「そうだねえ。地球の子達が神になるまで神の総数は八百万位しかいなかったからね」


 確かに八百万にいきなり六十億プラスはとんでもない増加ではあるな。

 八百万って言うと、やおよろずってやつか、神様の数知ってるヤツが昔の日本にいたのかな?


「普通は高次元宇宙に移行する時に生命体は数える程度しか残ってないからねえ」


「そうですねえ。うちの宇宙だと、私達夫婦の他に三人位しか生きていなかったですものねえ。でも最近絶滅しがちな原因がわかったとか神様ニュースでやっていましたね。私達とは畑違いの分野だからよくわからないけれど。どこかの神が宇宙の真理にたどり着いたとかなんとか、きっとすごい神様なんでしょうね」

 

 なんやねん。宇宙の真理とかスケールでかいわ。

 きっと禿げた博士みたいなヤツがそんな事したんだべな。


 ……んん?、あれ?なんか最近そんな事を見た気がする……。

 崩壊のサイクルがどうとかいうやつを向田さん家に乗り込んだ時に見たような。

 ……あれ?すごい神様、俺か……?

 ……いやいや、まさかまさか。


「……夫婦の他に三人位って、それは生命体がほぼ絶滅していたということか?惑星規模でか?まさか宇宙規模でか?」


 吸血鬼が思いきり切り込んだ質問をしやがった。

 やめろよ。絶滅しかけた話なんて重たい話題は避けろよ。


「……両方だね。宇宙規模で知的生命体がいたのは我々の星だけだった。いや地球もそうだよ。あの宇宙でも知的生命体がいたのは地球だけだよ」


 マジか、NASAの人がっかりだな。


「……もう、2億年も前の話になりますねえ」


 マジか、恐竜もびっくりだな。

 ていうかこの宇宙人たち2億才なの!?

 えっ、2億!?

 どんだけ長生きだっ。


「どんだけ長生きだっ」


 あ、吸血鬼がつっこんだ。

 思考がシンクロしたわ。


「ははは、神の世界ではもっと長生きしている方々もいるよ」


「そうですねえ」


「……失礼だが、その年齢は本当か?自己というのは歳月とともに磨耗し、最終的には植物のような精神になると思っていたが」


 吸血鬼が小難しいこと言い出した。


「まあそうですねえ、でも意外にそのままですよ。私、人だった時からピカリめくり揚げが好きでしたけど、2億年たった今でもまだ好きですしねえ」


 ピカリめくり揚げが食べ物なのかなんなのかすらわからんが、2億年ってすげえな。


「カンヌヌ、ピカリめくり揚げがあるのはうちの星だけだよ。安田くん達にはわからないだろう」


 旦那の宇宙人が補足してくれる。

 うん。なにもわからないよ。

 でも別に大してわかりたくもないよ。


「ああ、そうですね。失礼しました。ピカリめくり揚げというのは五十枚くらいのカードを裏返して2枚ずつめくって、同じ模様のヤツが揃ったらそのカードをもらえるんです」


 神経衰弱じゃねえか。


「で、それを揚げて食べるんです」


 あ、食べ物だったわ。

 なにその遊戯と食欲の融合。

 神々の遊びだな。


「まあ、つまり唯川さんが心配しているようなことはあまり無いよ。人はいつまでもなんとなく人なのさ、自分というものは中々どうして無くならない」


「……ふむ、そんなものか」


 小難しい話のようなアホみたいな話のような。

 ああ、そういえば女神しゃまもなんかそんな事言ってた気がするな。

 俺がこむら返りで痛がってる時に横でそんな事をぶつくさ言ってたような気がする。

 いつまでもギャルのままだとかなんとか。

 今時ギャルってなんだよ。

 その時に神様が長年悩んでた絶滅問題が俺のお陰で解決したみたいなこと言われたのを、今明確に思い出したけど。

 めんどくさいからスルーしよ。


「……おや、どうやら出口に着いたようだね」


 出口?宇宙人の夫が外を見てなにかを知らせてくれる。

 UFOの窓から外を見ると確かに変な穴がある。不思議空間に真っ黒な穴?黒い丸がある。

 ええ、あそこに入るの?怖……。


「……じゃあまあ、コーヒーごちそうさまでした」


「はい、またいらしてくださいね。あ、それとこの空間は時間の流れが違うから、出口から出ても、入って来たときとほとんど時間経過がないはずだから安心してくださいね」


 ……時間の流れが違う空間ってなんだよ。

 ひたすらおっかねえだけの追加情報だわ。


 宇宙人夫妻に見送られながら俺や子供カワウソ達がUFOの出口からおっかない空間に出る。

 

「では宇宙人夫妻よ。さらばだ」


 吸血鬼が偉そうに別れの挨拶をしている。


「唯川さん、君は精神の磨耗を心配しているようだが、我々神は心でも肉体でもなく、魂の脈動で動く。神の魂は不滅だ。安心して彼を支えてあげなさい」


「……努々魂に刻んでおこう」


 ……なんか侍みたいなやりとりしてる。




 そして俺達はUFOがどっかにふわふわ飛んでくのを眺めながら、不思議空間にまたふわふわ浮き出した。


 目の前に真っ黒な穴がある。

 この中に入んのか……。

 この空間も怖いが、この穴も怖いんですけど……。


「これが出口か?龍臣」


「みたいだわ」


 じゃあ、ウルトラ鑑定。


鑑定結果


穴に入って出ると、召喚した勇者を騙して利用しようとしている王族がいます。



 ……ああ、ありがちなイベントだわ。

 なんだこのクソイベント。

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