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チェンジリング  作者: 香美味
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8.小さな仲間

8話目です。

 次の日、ランベルト先生の書斎にて。


 ランベルト先生は特殊なモノクルをかけて僕等と二匹を交互に見ている。


「早過ぎますねえ。ガイドには。全く、言う事を聞かない様ですねえ。」


『ガイド』とは、ガイド・フェアリーとかインフォメーション・ドールとか呼ばれているもので、嘗て、冒険者アズベルド・ハインラインが、ダンンジョンで迷い脱出が困難になった時、目の前に小人が現れ、道案内をしたのが、認識された始めと言われている。


「普通は、鍛錬の末、体内に魔石を宿し、そこから、溢れ出たモノが形をなす。」

 ランベルト先生は、改めて僕とルジェルを見る。

「やはり無いですねえ魔石が。魂か何かを切り取ってガイド・フェアリーにするなど聞いた事がありません。」

「一度、その大カマキリとは、ゆっくりお話がしてみたいものです。」

「僕的には、二度と会いたくないですが、会う事が有れば伝えときます。」


「とにかく、ハワード氏には、魔石は無いと伝えて下さい。」

「分りました。」

「君達は、冒険者です。どのような結果であろうと、自分で判断して決めなさい。流される事無く。」



 ギルドとか冒険者ギルドとか言っているが、正式名称はカルネ冒険者協議会だ。

 ハワードさんは、そこの代表理事(理事長)だ。(みんなは陰で、ギルマスと呼ぶ)

 午後一に、ロベルトさんに連れられ、理事長室に向かう。


 ノックし扉をあけると、チョイ悪系なナイスミドルがいた。思わず、チョイ悪系ザンネンミドルのロベルトさんと比べてしまう。


「ハワード、話してた二人だ。やはり、魔石は無いらしい。」

「取り合えず、この容器の中に。」

「おう。」

 ロベルトさんが、バルドを出し二匹を容器の中に入れ、容器のふたを閉める。


 二個の透明なガラスの容器。材質はガラスではない様だ。ふたを閉めた瞬間、僕とシャンディとを繋げていた何か(リンク?)が途切れるのを感じた。


「この容器は、シルフィやウンディーネを運ぶための物で、霊や魔素的なモノの通過を遮断する。普通運ぶ時は、魔石の一カケか二カケを入れておく。」

「入れていないと、エネルギー切れで、そのうち消滅する。」

「因みに、ガイドが消滅しても、君達の身体には何ら影響は無い。」


 ケースの中でシャンディが泣き叫び取り乱している。


 ルジェルの犬モドキは四本の脚ですっくと立ち、微動だにせず、こちらを睨んでいる。(この違いは・・・)


「シャンディ!」思わず叫ぶ。

「どうして、このような事を。」


 彼らが言うには、身体に魔石を宿した者の中で、ほんの一部の者がガイド・フェアリーを具現化する。大半の者は、魔石が肥大化するだけで具現化しない。

 特殊な器具が無い限り、ガイド・フェアリーは、ガイド・フェアリーを持つ者しか見ることが出来ない。


「それじゃあ理由になりません。」

「お前ら、言う事を聞かせられねえだろ。」


 例えるなら、小説家が、キャラクターを設定した時、本の中で、キャラクターが勝手に、小説家の意思とは関係なく動き回るのに似ているらしい。個性を持ったガイド・フェアリーは、その個性に沿って動く。

 しかし、魔石が出来るほどの経験を積んだ者は、精神的にも強く、ガイド・フェアリーを従わせる事が出来るらしい。

「小僧、シャンディなんて、あっさり名前付けちまって。余計、キャラが固定化されて、従わせるの大変になるぞ。」


「それと、このギルドで強いのは誰だ?」

「シルベーヌさん・・・・・・・・あ!ロベルトさん」

「ハイハイハイ・・・で、ガイド持ってるのは?」

「ロベルトさんとシルベーヌさん」

「つまり、ガイド持ってる奴は、強えんだ。お前ら以外。」


 ガイドを持つぐらい強い人に、僕等が強者として認識される。

 強い人が良い人ばかりではない。悪意のある警戒をされたり、無意味な力比べをされる危険性がある。


 僕等は、ガイドを隠す事も、従わせる事も出来ないのだ。


「最後に一つ。お前らの成長の事だ。」

 冒険者として経験を積んでいると、魔石を宿すほどの体験をすることがある。

 魔石を身体に宿すと、限界を突破する事が出来たり、特殊な能力を持ったりする事が出来る。


 だが、常時ガイドに魔素を供給している僕等は、僕達は身体に集まった魔素が結晶化する前にガイドを通して、体外に出てしまう可能性が強い。


「君達は、おそらく、余程の無茶をしない限り魔石を宿すことは無理だ。」

「どうする?このままケースを閉じたままにし、ガイドを消滅させるか。それとも蓋を開けるか。自分で決めろ。俺は、お前達の成長には、ちょこっとばかし期待している。後悔だけはさせたくない。」


 ケースの中でシャンディが苦しそうだ。魔素が切れかかっているのかも知れない。

 ルジェルは、ボーパルを見つめていた時と同じ目で、自分のガイドを見ている。

(相談するべきじゃない。相談して決める事じゃない。)



「ケースから出して下さい。僕は、このまま、この子とやっていきます。」

「チビ助は。」

「僕もこのまま。」


 蓋が開けられ、シャンディがしがみついてくる。「頑張ろうな。これから。」


「よかったな、犬っこ・・・呼びにくい。 お前、ガフな。」


「名前、・・・キャラが固定化・・・チビ助、人の話聞いてねえだろう。」


「ねー。もう大丈夫だよねー。」

「「ねー」」二匹がハモる。



 ハワードとロベルトさん、ランベルト先生も絡んで、僕等の為に態々時間を取って、本当にガイドを消去するつもりだったのか。

 それとも、ショック療法でガイドの従わせ方を学ばせる気だったのか僕には分らない。



------------------------------------


 ギルマスやロベルトさんとの出来ごとの後、ガイド達はある程度、言う事を聞く様になった。


 しかし、偶に誘惑に負けてしまう事がある。ルジェルのガフ(ガイド)は、骨付き肉の魅力には勝てず、

 僕のシャンディは珍しい物の魅力には勝てない。(シャンディは好奇心が旺盛なだけで、決してオッパイ星人ではない。ただ、マリアンヌさんの超巨乳が彼女にとって珍しい物だったようだ。)


 それでも、最初に比べれば、かなりの進歩である。

 そして、僕達は、次の段階として、ガイドを隠す方法を、身につけることにした。

 場所は、コレージュのランベルト先生の書斎だ。応接セットを隅に移動し、空いた空間で練習をしている。

 コレージュに来ると直ぐに書斎へ直行し、朝から晩まで、ほぼ缶詰状態だ。

 僕は道場での練習を休み、ルジェルは牧場とギルド会館の仕事を休んでいる。

 ある程度の、目処が立つまで続ける予定だ。


 その方法は、ガイド達が僕等の身体の中に隠れた状態で、僕等の動きに合わせて動き、はみ出ないようにするのである。

 訓練とは言わずに、ゲームだと説明すると、ガイド達はノリノリでやってくれる。


 パスで繋がっているので、意思の疎通は完ぺきだが、急激な変化には、若干対応が遅れるようだ。


 急激な変化時の練習として、僕達は木の短剣を使って、乱取りをすることにした。もちろん寸止めだ。


 寸止めの為、体格差による力押しが通用せず、純粋なスピード勝負となっている。


 普通の試合なら、体格差にものを言わせ弾き飛ばし、バランスを崩したところを狙えば勝負がつくはずだが、寸止めルールが効いている。

 野性味溢れる、セオリーを無視した動きをするルジェル。道場で研鑽を積み、理詰めの動きをする僕。


 ルジェルの動きには無駄が多い。だが、その無駄が僕の予測を狂わせる。中々勝負がつかない。

 それに・・・ランベルト先生の高そうな花瓶が邪魔だ。 はっきり言ってウザい。


 ガイド達も隠れる事より、相手を倒す為の隙を見つける事に集中しているようだ。


 ガイドを隠す練習という当初の目的を忘れかけた頃、ランベルト先生が、ある提案をした。


 乱取りの途中で、ガイドがハイタッチをするのだ。

 ゆっくり百を数え、百と同時に、ガイド達が姿を現し、中央でハイタッチをする。


 姿を現す動作を加える事で、メリハリが生まれ、隠れている時の注意力がかなり増した。

 しかも、うまく出来るようになれば、小さな魔石のペンダントが貰えるとし、ガイド達のモチベーションを上げる。


 この方法は、かなり効果的で、ガイドを隠す技術は飛躍的に上達した。


 そんなこんなで、一週間、ランベルト先生から、やっと及第点を貰えるまでになった。

 明日からは、平常業務、普通の生活に戻れる。


 最後に、約束通りペンダントを貰う。

 僕のは薄い赤色で雫型にカットしてある。ルジェルのは薄い緑色で卵型だ。

 ガイド達も喜んでいる。


「小さな皆さん、その宝石の中に隠れる事は出来ませんか?」とランベルト先生。

「「うん、やってみる」」


 なんと、あっさり宝石の中に入ってしまった。(最初にいってよ。)


「先生、こんな方法があるなら、練習しなくてもよかったのでは・・・」

「物事には順序があるのです。」


 宝石の中で大人しくしているガイド達、僕等は久しぶりに静かな落ち着いた時間を過ごした。


7話とサブタイトルも入れ替わっています。

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