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チェンジリング  作者: 香美味
3/37

3.新米調剤師

3話目です。

 一度目の模擬戦の後、僕の生活は少し賑やかになった。


 カルネに来て二年間、脇目も振らず道場中心の生活を送って来た。

 コレージュで知り合いは出来たが、友人は道場関係のみだった。


 今年は最終学年という事もあり、みんな忙しい中にも、他者との交流を持とうとする雰囲気がある。 

 模擬戦で話題の幅が広がったことも大きい。


 だが、そのような中、異彩を放っているのが、ルジェルの周りである。

 何故か、おっさん率が高い。


 本草学など、一般の者も受ける事が出来る授業もあることはあるが、今まで、それほど多くは無かった。

 今年に限って、冒険者っぽい人が、多いのだ。(ルジェルがいるなら俺も~・・・てか。)


 因みに、本草学の授業はランベルト先生で、彼らがコレージュ在学中も、ランベルト先生だったらしい。(その時に学んどけよ。)


「バトラー・ランベルト未だ居たのかよぅ。」

「幾つだ。変わってねぇー。」


 ルジェルは寮で、ランベルト先生の蔵書を学んでいるらしく、授業では、助手の様なことをしている。


 教室の一番後ろの席で、ノートも取らず、授業を受けているオヤジ共。

 はっきり言って、ウザい。

「現場で呑気にノートなど見てられるか」とのことで、必要なところだけ、頭に叩き込んでいる・・・みたいだ。


 偶に、知らない植物を持って来ては、質問をしている。

 僕らとしても、カルネ近辺の植生を知る上で、とても役に立つ。

 写真や絵と、実物は違うのだ。


 持ってきた植物や鉱物等々は、そのまま錬金の実習に使われる。

 錬金と言っても、調剤がメインで、初級回復薬が生成出来れば、合格である。

 重要なのは、主材料、副材料の無い状態で、代替えの材料を用い、如何に目的に合う品を、作れるかである。


 錬金メンバーの中でも、住み分けは出来ているようで、一般的な材料は他の生徒、マニアックな素材は、ルジェルが扱うらしい。


 作ると、効能を知りたくなるのが人情で、みんなに、ばら撒いている。

 データを取っているらしく、後で体調をしつこく聞いてくる。

 ランベルト先生のチェックが入っているので、おかしな物は飲まされていない・・・はずだ。


 道場でヘトヘトになる僕にとって、回復薬は有りがたい。


 回復の主成分は、糖類とクエン酸で、速効性の付与魔法が掛けてある。

 決して、欠損部位が生えてくるような代物ではない。


 偶に、何やら怪しげな薬(媚薬(笑))も、試作しているようだ。

 オヤジ共が、ハイランドエルクの角(に似た物)や、咬みつきタートルの肝(に似た物)や、エレクトリックイール(に似た物)等を、ルジェルに渡して、悪い顔をしていた。

 怪しげな薬(媚薬(笑))の効能のデータを、いつ取っているのかは、秘密らしい。

 ただ、回復薬の製造では、理解できなかった%(割合)と純度の概念の必要性を、怪しげな薬(媚薬(笑))を試行錯誤している内に、理解出来るようになったらしい。

 (パソコンの苦手な人が、ネットの十八禁動画で、マスターするのと同じだろうか。)


 彼が研究者の目で、我々を観察している時、我々は一服盛られているのだろう。

 殆どの場合、回復薬なので大事には、至らず寧ろ歓迎されている。


 怪しげな薬(媚薬(笑))の生成に対し、ランベルト先生は、『錬金を志す若者が一度は通る道だ』と目を細めるだけだった。

 相変わらず、どこかの貴族の筆頭執事のようなたたずまいのままゆったりしている。


 おっさんから小僧まで、世の男どもは怪しげな薬に対し寛大だった。

 エビの様に腰を曲げたり、鼻血を出す者もいたが寛大であった。


 その反面、女性への受けは悪かった。

 特に、リリアーヌとマルティナは、実力行使で止めにきた。


「なんてもの作るのよぉ。没収よ。」何故か僕までに叱られている。

「あなた達コンビでしょ」


 マルティナが飲んだ薬が当りで、動悸が激しくなり、身体が熱くなったらしい。

「変なもの入ってないよ」

「だったら成分レシピ教えなさいよ」

「やだ」


 リリアーヌも錬金を学んでいるので、成分レシピを聞けば、判断できるらしい。

 ルジェルは、苦労して開発したレシピを、教えたがらない。


 2人掛りで、ルジェルを捕まえようとする。

 マルティナは、剣士を目指す女の子で、背は僕と同じくらいある。

 足はルジェルより早いだろう。

 一つ年下のリリアーヌは魔法が使える。

 軽く肘を曲げた状態で、上に向けた人差し指の周りを、小さな炎が回っている。

 実は、女子でありながら、ナンバーワンの模擬戦コンビだ。


「ルジェル君捕まえるの、手伝ってくれたら、関係無い事認めてあげる。」


 是非もなし、である。『ルジェルすまん』

 あっさり捕まえて、ルジェルにレシピを吐かせ確認する。(確認するのはリリアーヌだが。)


「強壮剤とカプサイシン・・・辛みを付与魔法でうまく取り除いてる。

 大丈夫なのは分ったけど、女の子に飲ませちゃだめ、

 動悸が激しくなるのを、カン違いする子もいるでしょ。」


 結局、変な薬で無い事は、納得してもらえたが、怪しげな薬の製造は中止となった。(表向き)


 オヤジ共は、強壮剤で雰囲気を楽しむらしい。『それで女性とうまくいった』という話は聞かない。


 とにかく、錬金系の生徒が練習で作った回復系の薬を、剣士系の生徒や、仕事で疲れた生徒(一部冒険者)が飲み疲れを癒す。

 この需要と供給の図式は、多少紛い物が混じろうと、止まらないのである。

 オヤジ共が、怪しげな素材を、こっそりルジェルに渡す行為は、無くならないのである。


-------------------------------------


 練習で作られる薬について、誰も話題にしなくなったころ、一人の女性がコレージュにやって来た。

 ケバイ感じのおば(お姉)さんだ。


 ランベルト先生と話している。

「こちらで作っている回復薬、飲み過ぎた次の日に丁度いいの、

 お店で売っていないみたいだし、定期的に分けて下さらない。」


「滋養強壮の薬は調合出来ますが、奥様が御使用されたのは、私の手による物ではありません。

 その者、今日は牧場に寄ってから来ますので、今しばらくお待ち頂くこととなります。」


「お店の時間まで、未だ充分時間がありますので、待たせて頂きます。」


 コレージュの応接室に移動し、待つ事になった。(何故か僕まで)

「グレン君、ルジェル君はまだかね?」

「今日は、見てません。」

「えっ、ルジェル!  ルジェルってあの・・・」

 おば(お姉)さんは心なしかソワソワしているようだ。


 しばらくして、応接室のドアが開き、ルジェルが入って来た。


「ルジェルちゃん・・あなたが、ルジェルちゃんなの?・・・ごめんなさい・・・ルシアンを許してあげて。」

 おば(お姉)さんは、ルジェルに駆け寄り、抱きしめながらそう言った。(はなしが見えない。)



 ルジェルは、一瞬目を大きく見開いた後、状況を理解したのか、無表情になり

「おばさん?・・・・そっか。」


「ルジェルちゃん、寂しかったでしょ。心細かったでしょ。お姉さんと一緒に住む?」

「大丈夫。みんないるから寂しくないし。ギルドも登録したし。一人でも大丈夫。」


「ランベルト先生、この子の後見は?」

「教会行きには、忍びなかったので、私が後見しております。」

「今後は、私が後見人ということで、よろしいでしょうか?」

「構いませんが、彼の事は弟子の様に思っておりますので、私もそのままでお願いします。」

・・・そんなこんなで・・・・


 しばらくして、おば(お姉)さんは、目の回りの化粧が崩れ、ヤバい状態で帰って行った。


 そして、薬は予備が無かったので、作り次第に届ける事となった。

 

-------------------------------------

 2日後に完成し彼女のお店に届ける事となった。

 何故かランベルト先生に頼まれ、僕も付き添いで、お店に向かっている。


 お店は、冒険者ギルドに近い飲み屋街に在り、名前は『木漏れ日の花かんざし』、3軒長屋の右側で他の2件は食べ物屋だった。

 中に入ると、カウンタにテーブル席が5席、いわゆるスナックだ。

 そのまま奥へ通される。


「ママー、お客さんよー。多分、ルジェちゃん。 しかも二人。」

「ばかねぇ、ちっちゃくて可愛い私のルジェちゃんは、ただ一人よ。」


「ルジェちゃん早速来てくれたの。お姉さんうれしいは。細マッチョのお兄さんもありがとう。」


 奥は、控え室で3名ほど店員の女の子が寛いでいる。

 下着姿の子もいるが、僕等が入っても、全く動じない。

 目のやり場に困っていると、早速からまれる。

「お兄さん顔が赤いけど、こういうお店初めて?細マッチョ触ってもいい?」

 (って、もう触ってるし。胸あたってるし。)


「あんた、あたしが目付けてんだから、ちょっかい出さないでよ。」

「ママにはルジェちゃんがいるじゃない。」

「うるさいわね、私は欲張りな女なの。」

「年下の男の子なんて初めてなんだから、ママ相手でも遠慮しないわよ。」


 などと、グダグダになりかけた雰囲気を、ルジェルの不用意な一言が引き裂いた。


「おばさんこれ。約束の薬。」・・・・・一瞬で氷点直下だ。


「ルジェちゃん、 お姉(・・)さんの名前は、ルイーゼっていうの。

 この前は、柄にも無く取り乱して、名乗って無かったわよね。

 ルイーゼお姉さんって呼んでくれる。

 何ならお姉さんでもママでもいいわよ。」とルジェルの頬を、左右に引っ張りながら言う。


「ルイーゼでもいい?」

「年下の男の子に、呼び捨て!!・・・新鮮だわー」

 機嫌は直ったようだ。流石、おば様キラー恐るべし。


 薬は、定期的に持って行くことになった。

 態々辛さを取り除く必要は無いらしく、色んな味が有る方がうけるらしい。


「お代は?」

「材料代タダだし、練習だからいらない。」

「じゃあ、ジュースやノンアルコール、お隣から出前も取れるし、サービスしちゃう。」



 御馳走になって、ギルド方向に帰る。

 (沢山の料理が出ただけで、大人のサービスがあったわけではない。念の為。)



 多分、薬はどうでもよかったんだ。

 ルジェルに会う、定期的に会う口実がほしかったのだ。

 新米調剤師が、有り合わせで作る薬の効能など、タカが知れてる。


 それが、分っているからルジェルは、薬代をタダにしたのだ。

「おまえって、わかって無い様で、よくわかっているよなあ。」

「何が?」

「んー」

「だから何が?」

「んー」



 ルイーゼさんがルジェルの為に必死になり、周りの女の子も、ルジェルを温かく迎える。

 ルシアンて言う人。多分ルジェルのお母さん。

 あのお店の中で、結構好かれていたのだろう。

 そう思いたい。


主人公がどっちか分らなくなってます。

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