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Starry Pandemonium  作者: 焼肉の歯車
第一編 灰色の胎動
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第二章 吸血事件 2.一つの対立線

 クリスが寝たところを見計らって、修人は一人散歩に出ていた。

 時刻は四時半。冬の時期は太陽が沈むのが早いらしい。これは自転や公転から考えられた推論でしかないのだが、太陽を見たことがない修人には知りようがないことだ。ただ、街を照らす疑似的な太陽であるランプはその色をオレンジ色に変えていて、もうすぐ街は暗くなる。


 夕日、というらしい。


 歴史で習った話では、太陽は西の地平線の向こうへと沈んでいくのだとか。その際、地平線から届けられる太陽の光は街を黄金に染めてしまうらしい。

 夜が明けなくなって五年経ったある時に、ひとりの人間がこんなことを言ったらしい。


『夕日は夜の始まりであると同時に朝への期待だった。空を橙色に染め上げたあの輝きは、太陽からの別れのあいさつではなく、待ち合わせを約束した照れた顔に見えた』

「だから、もう会えないのが寂しい、か……」


 その言葉は特に心に残っていた。

 理由は、分からない。


「どうだったんだろうな……」


 泣きそうな顔でそんなことを呟いた。


「じゃあ、日が上らなくなる前の夕日は、きっと泣き笑いだったのかもな」


 つぅー、と。

 修人の右目から涙が伝った。


 ――この世界は、俺と似ている。


 街が茜色に染まる中、修人はその向こうの夜空だけを見ていた。


 ――嘘の輝きと、永遠に暗いままの世界。


 伝った涙の跡を、冬の北風が嘲笑うように引っ掻いた。痛い。

 暗い空。暗い夕方。暗い心。

 全部が、閉じている。

 すると、見上げる空に白い点々が増えて行った。

 徐々に大きくなるそれは、修人の頬に落ちるとひんやりとした冷気で体から熱を盗んでいく。


「雪、か……」


 雪はどんどん積もっていく。

 ますます自分と似ていると思い始めた。

 こんなにも暗い空は己の未来で、静かに積み上がる雪は自分への嫌悪で、凍っていく街はこの心だ。

 今こうやって、吸血事件を解決するために教会へ足を運ぼうとしていること。あるいは、クリスを家で保護していること。

 全部が、意味のない行動だ。


 ――くそ。


 そして、そんな風に思ってしまう自分が嫌いだ。殺したい、死ねばいい。けれど、死ぬことは許されない。

 誰かを助けることや社会のために動くことに、意味は必要ない。

 意味がなくてもやらなければならない。善行は、無心で行わなければならない。

 なぜならば、何か対価を求めた時点で、それは善行ではないのだから。


 人を助けることは良いことだ。それは分かる。しかし、報酬を得るために人を助けることは間違った行為だ。

 誰かに見られて、好かれたいから人を救う。

 カッコイイ、偉い、優しい、君はヒーローだ――そんな風にチヤホヤされることを求めて善い行いをすることほど醜悪なことはないだろう。

 恐怖から社会を守るために、何の力も持たないただの高校生が連続殺人犯を追う。なるほど、確かにそれは英雄的行動だ。だが、そこに『英雄願望』などあってはならない。ヒーローになりたいから事件を追うなど、自己顕示欲の塊のような行動動機は最も唾棄すべき醜い感情だ。


 風鳴修人は、無心で善行を成さなければならない。

 如何な下心もあってはならない。

 何も求めてはならないのだ。

 赦しも、救いも。

 それを求める自分は醜い。


『普通』に憧れた。『平凡』を願った。『当たり前』に焦がれた。


 だがそもそも、修人にそれを求める権利はない。

 だって、自分は彼ら普通の人達とは違うのだから。

 クラスメイトと笑い合うことは許されない。

 恋人と手を繋いで街を歩くことは許されない。

 あらゆる幸福は、許されていない。

 自分は違う存在だ。他とは違う所にいる。

 風鳴修人は、拒絶されていて――隔離されている。


「……こんな悩みも、持っちゃいけないな」


 そんな風に自嘲して、感傷的になってしまった心を振り払った時だった。



「僕の顔を殴った男が、そんな顔をするなよ」



 聞き覚えのある声が背後から投げられた。どこか生真面目な印象を与えてくる少年の声だ。

 振り返ると、背に深紅の槍を背負った赤髪の少年が修人を真っ直ぐ睨んでいた。

 口元を引き結び、つかつかと歩み寄ってくる。


「オルガ=ディソルバートだ。改めてよろしく、風鳴修人くん」


 そう言って、笑顔を浮かべて右手を差し出した。


「……どういうつもりだ? 俺とお前がよろしくする理由はないはずだ」

「そう構えないでくれ」


 差し出された右手を無視して、修人は厳しい視線をオルガに送った。対する赤髪の少年も、修人の敵意を汲み取ったのか、差し出した右手を引いた。


「話がある。少しいいかな」

「……クリスのことか」

「それもある。が、他にもいろいろとね。少し歩こう。喫茶店で話さないか? こんな所にいれば目立つ」

「……ああ、いいぞ」


 修人は首を縦に振り、オルガと共に歩き出した。


☆ ☆ ☆


 自宅マンションから伸びる坂道を十分ほど歩き、途中の交差点で左へ曲がるとフェルミン神父の務める教会に着き、その交差点もまっすぐさらに十分ほど進むと、デパートやファッションブランドの店を始めとした数多の商業施設が建ち並ぶ区画に出た。

 二人は世界的に有名な喫茶店のチェーン店に入ると、それぞれカウンターで注文を告げた。


「すいません、ティークリームフラペチーノひとつで。サイズはトール」

「はい、かしこまりました。そちらのお客様は?」

「僕はホットココアを。サイズはトールでお願いします」


 ニコニコと人の()い笑顔で接客する大学生のお姉さんにお金を払い、隣によけてドリンクを貰う。

 適当に席を見繕って座ると、オルガはストローに口を付けて飲む修人を見つめて、


「下品なチョイスだな」

「あ?」


 ピキリ、と修人のこめかみの辺りで嫌な音がしたような気がした。


「お前こそココアって……コーヒーは飲めないけど見栄は張りたいお子様かよ」

「君はココアの良さを分かっていないようだな。ココアは甘いだけじゃない。その奥にあるカカオの風味も楽しむものだろう? まさか知らなかったのか……? いや、まあそんな装飾だらけのゴテゴテとした成金趣味のようなドリンクを飲んでいる時点で程度は知れるか……」

「たかがチェーン店のココアでなに語ってるんだよ。ていうか、そんなにホイップが乗せられたココアを飲んでる奴に言われてもパッとしないんだよ。カカオ収穫するところからやり直せ」

「それは君のような野生児にこそ似合う仕事だろう。内定は確かアフリカのナイジェリアだったか? 早く僕のために上質なカカオを採ってくるんだな」

「はあぁあ? カカオの収穫量一位はコートジボワールですけど? ナイジェリアはそんなに高くないですけど? 勉強間に合ってますか?」

「頭が悪いのはどちらか。僕は例えとしてナイジェリアを出しただけだ。そうやって自分の知識をひけらかさないと自分の優位性も証明できないのかい? 本当に浅はかだね」

「なんだコラやんのか」

「僕は別にいいよ。君が大怪我を負って終わりだ」

「武器使っておいて殴られたお前が言っても強がりにしか聞こえないぞ」

「さすが、女の子に守られながら不意打ちで一発入れた男は言うことが違う」

「あ?」

「なんだ?」


 …………………………………………………………………………………………………………。

 賑やかだった店内は一気に絶対零度にまで冷えてしまった。赤髪と黒髪の少年はそんな店内の空気など知らぬとばかりにバチバチと視線をぶつけ火花を散らしていた。

 一触即発の雰囲気の中、しかし先に矛を収めたのはオルガであった。


「まあいい。今ここでそんな言い合いをしたって意味はない」

「……まあ、そうだな」


 修人も冷静になって熱を冷ました。


「それで、話って何だよ」

「主に二つだ。一つは察している通りクリスティアのこと。もう一つは――」


 そこで彼は言葉を切って、


「吸血事件のことだ」


 瞬間、修人の気配が一気に変わった。それまでの年相応の子供らしさはどこにもない。

 ただそれは、数々の被害者を出しているこの事件の犯人に対する怒りでもない。例えるならば、そう――使命感、のようなもの。

 オルガは修人の気配の変化に気付きながら、あえて無視して話を続けた。


「君もこの街に住んでいるのならそろそろ耳に入れたはずだ。全身の血を抜かれた死体の話だ」

「ああ。俺も昨日知ったところだけど、一週間で四人もその被害に遭っているらしいな。お前もそれを追ってるのか」

「そうだ。……あの時少し名乗ったかもしれないが、俺は『総聖堂』と呼ばれる前旧教の総本山直轄の〝十一尖兵〟という暗部組織の一員でね……今回のような『人ならざる者』の起こす事件を解決することを仕事している」

「ていうことは、今回の事件は吸血鬼が起こした事件だってことで良いのか?」

「ああ。君ももう予想はしていたか」

「そもそもクリスがこの街を出ないのはこの事件を解決するためだっていう話だったしな。俺はその事件に協力することになってる。そして、話を聞く限りお前があの場所にいたのは――」

「僕も事件を追っているからだ」


 世には人の手では裁けない事件がある。UKVにおける吸血鬼の犯罪などは彼ら独自の刑罰によって吸血鬼を裁けるのだが、それ以外の国――即ち人間や長命種といったその他の種族の治める国においてはそうはいかない。不死身かつ強力な彼らを罰するには、相応の力を持った者が執行しなければならない。


 それが〝十一尖兵〟である。


 吸血鬼に限らず、理から外れた全ての悠久種や長命種、幻獣種、そして人間の悪行を裁くための刑罰執行機関こそが総聖堂〝十一尖兵〟なのだ。


「今回僕がここに来たのは、クリスティアがこの近くで目撃されたという証言に加えて、この事件があったからだ。明らかに人外の……というよりも、吸血鬼の所業としか思えない事件。それも一週間で四件ともなれば僕たち〝十一尖兵〟も動かざるを得ない」

「なるほどな。それで、話っていうのは何だ?」

「別に、特にはないよ。君も何か手掛かりを掴んでいるようには見えないからね。ただ、何か分かったら教えてくれ。君とは馬が合わないし、クリスティアをめぐって色々あるだろうが、共にこの事件を止めたいという気持ちは同じはずだ」

「確かにな。本当に不本意だけど、そこに関しては同意だ」


 修人は心底嫌そうな顔をしながらも首肯した。


「ただお前も情報は寄越せよ。同じように事件を追っているんだ。情報は共有するに限るし、クリスをそこから遠ざけるってことも必要だ」

「君、なにを……? 君のような一般人よりもクリスの方が強いに――いや……」

「ああ。聞いた話じゃ、クリスはもっと早く街を出るつもりだったけど、この事件を解決するために残っているらしい。てことは、この事件は多分クリスが来てから起きてるものだ」

「なるほど、なら……犯人はクリスティアを狙っている可能性が高い、か……」

「まあ、こんな事件を起こす意味は分からないけどな」


 とはいえ、双方手がかりを何も掴んでいないのならばこれ以上話す意味はない。話題は変わり、本題――つまり、クリスティア=アイアンメイデンという少女の話へと移行した。


「彼女の扱いについてだ」

「扱いって、物みたいに言うなよ」


 ぞっ、と。

 つい先ほどまで同じ事件を追う者同士の、目に見えない極限に細い繋がりのようなものが一瞬にして断ち切られ、両者の間にある空気が絶対零度にまで冷やされた。


「結論を言うよ、風鳴修人」


 両者にある絶対的な隔絶、埋まらない溝、譲れない一線を言葉も無しに自覚して、オルガは明確に修人を敵とし、呼び捨てにした。


「僕はクリスティアを殺す。彼女をこの永遠の苦しみから解放するために、その命を奪う」

「そうか。なら俺はその逆だ。絶対に殺させない。なにがなんでも守る」

「そこまでする意味は? 彼女と君が出会ったのは昨日だったはずだが」

「誰かが誰かを助けることに意味は必要ない。そこに意味を見出すことは間違ってる。知ってるとか知らないとかは関係ないんだよ。助けるもんは助ける。それが当たり前だ」


 告げる修人の底抜けに黒い瞳は、どこまでもそう信じて疑っていない。狂的なまでに助けるということを神聖視しており、人助けとは無償で行うべきだと説く。


「俺はクリスを助ける。お前から守る。あいつを生かす。それだけだ。それ以上もそれ以下もない。話す余地はない。助けると決めた以上は助けるだけだ」

「僕は自分を歪だと考えていたが……それでも君よりはましだよ、風鳴修人」

「そうかよ。……なら俺からも一つ聞かせろ」

「なにかな」


 話の矛先が己からオルガへと変わった段階で、既に修人の瞳から危険な色は消えていた。

『人助け』という概念においてだけ彼はその瞳に狂気を宿すが、基本的にはそこまで危険な人間ではない。

 修人は少しだけ意地の悪い顔を浮かべると、


「お前――――クリスのことが好きなのか?」

「――――――――――――――――な、」


 その瞬間、オルガの頬が一気に紅潮し、


「な、なな、なななッななななななっ、な、な……なに、くそ! うる、うるさい黙れ!」

「好きなんだな」

「おい」

「好きなんだよな?」

「おい……本当に」

「好・き・な・ん・だ・よ・な?」

「ぐぐぐぐぐぐ……う、……す、……す、す、すき、だ……ッ」


 認めた。顔を羞恥と怒りで赤くして、それでもオルガは答えた。


「ああ、そうだとも……僕は、彼女に惚れている。彼女のことが好きだとも……」

「ロリコン」

「やめろッッッ!」


 ガタンッ! と勢いよく椅子から立ち上がって修人の胸ぐらを掴んだ。


「い、いいか……? 別にこれは、その、アレとかではないからな……! 別に、その……そういうわけではなく!」

「あ、ああ分かった、分かったごめん。ちょっと揶揄(からか)っただけだ」

「クソ……」


 修人が素直に謝ると、オルガは呼吸を落ち着けて着席した。ゆっくりと深呼吸をして気持ちを静めると、キッと修人を睨んだ。


「まあいい。別に隠しているわけでもないからな」


 オルガの反応を少し楽しんだ修人は、そこですっと表情を厳しいものにした。

 オルガもまた、修人のその表情の意味を悟ったのだろう、「言え」と促して質問を待った。


「なら何で、殺すだなんて結論に至ったんだよ」

「……当然の疑問、か」


 感情と行動の矛盾など、とっくに自覚済みだ。それを聞かれた事だって一度や二度ではない。同じ〝十一尖兵〟の内には、「くだらねェ感傷だな」と切り捨てられてしまったこともある。

 それでも、彼はこの信念を曲げるつもりはなかった。正しいと、思っている。


「クリスティアが何年生きているか、君は知っているか?」

「さあ? ただ、千年以上前の記憶はないって聞いたぞ」

「そうか。僕も全部を知っているわけではないけれど、ただ……その過去を少しだけ聞いたことがある」

「まあ……ロクでもないものだとは、思う」


 千年以上も生きる不老の少女。そんな存在が世に認められるわけもないことは確かだ。〝十一尖兵〟や、それを真似た魔族狩りの組織、あるいは正義の味方を自称する何者かに討伐されかけたこともあるだろう。

 そして、そんな彼らから逃げるために人を殺したこともあるかもしれない。今は魔術も何も使えないが、昔は魔術を使えたかのような口ぶりだったのであながち間違いではないだろう。

 一日共に行動した限りでは彼女は享楽的で適当な性格をした少女にしか思えない。だが、その実、胸の奥底にどんな感情を隠しているのか、それは修人にもオルガにも分からなかった。


「昔……僕が彼女と出会った二年前のことだ……彼女はこんなことを言っていた……」


 ――ふん、私を救うなど無理だよ。諦めろオルガ。その気持ちだけ受け取っておいてやろう。

 ――私はな、別に救われたくはないんだ。


「その表情を見ていられなくてね……好きな人が、あんな風に全てを諦めたような顔をすることが許せなかった」


 だから、殺すというのだろうか。


「周囲から見れば間違った考え方なんだということは分かっている。けれど、彼女を救うことは出来ずとも、その苦しみから解放することはできるはずだ。なら、そのためには――」


 全部終わらせるしか道はない。

 しかしその言葉をオルガは発さなかった。

 簡単な話だ。好きな女の子を殺すしかその子を苦しみから解き放てないなどという残酷な事実を、修人とそう変わらない年齢の少年が認められるはずがないのだ。

 オルガの表情は暗い。これまで見てきた中で最も暗い。

 彼は、殺したくないのだ。


「そうか」


 オルガの考えを聞いて、修人はゆっくりと目を閉じると数秒黙り込んだ。

 視線を受けていることを自覚しながらも無視する。

 そして――


「それでも、関係ない」


 修人はきっぱりと言い切った。


「どうしてだ。理由を聞いてもいいか?」

「悪いけどそれは俺の心に留めさせてくれ。……ただ、やっぱりどんな理由があっても、俺は殺すだなんて方法で誰かの命や笑顔を諦めたくない。それで救いを諦めたくない。たとえあいつが全部諦めていたって――」


 それは、確かに狂気なのかもしれない。

 風鳴修人という人間は(いびつ)で歪んだ人間なのかもしれない。

 彼は誰にも理解されないような爆弾を抱えていて、それはきっと危険なものなのだろう。

 自己満足や自己犠牲ですらなく、英雄願望や憧憬への負い目もない。

 ただ、無のままに人を救おうとするその歪さ。

 過剰なまでに無償であることにこだわるその在り方。

 だけどそれでも――



「俺が、クリスを助けることを諦める理由にはならない。

 あいつが諦めていようと、俺は諦めない」



 風鳴修人は永劫誰かの幸せの踏み台であらなければならない。そう己に課している。

だが、それは人として(いびつ)で間違っていることで、そんな心の在り方はあってはならない。

 それは修人にだって当然分かっている。だけど、こういう時に思うのだ。

 こうやって自分を縛っているからこそ、いざという時に動けるのだと。


「ならばやっぱり、僕と君は相容れないね」

「そうだな。俺は諦めない。たとえお前がどれだけ強くても、クリスがどれだけ頑固でも」


 道は分かたれた。二人は相容れない。歩き出す方向は同じなれど、道は遠ざかって交わることは一生ない。

 それを理解したオルガは立ち上がり、最後に告げた。


「今は事件を解決するのが先だ。クリスの問題に関しては後回しにせざるを得ない。風鳴修人、時が来たらきちんと決着を付けよう。それまでは休戦だ」

「了解した。裏切るなよ」

「裏切るメリットがない。では、また機会があれば会おう」


 そう言って彼は店を出た。


「…………守る、か」


 小さく呟き、その意味を考える。

「この事件が終わったら、クリスと街を出ることも考えないとな」


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