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6 三角関係

 権力を示威するような壮大な構想と細部にわたる曲線的装飾技巧が施された回廊をセレジェイラは一人歩いていた。と、聞こえてくるのはやはり自分に対する憎まれ口。


「聞きました? マリエッタ様を悪者にして殿下に告げ口をしたとか」

「随分と厚かましい方ですわね」

「リアム殿下にはダイアナ様がいらっしゃるというのに我が物顔で殿下にお仕えして!」


 自分としては真面目に秘書の仕事をしているといのに本当に面倒くさい。セレジェイラだって遊んで暮らして望む結婚が出来るのならそうするのに……いや、遊んで暮らす自分の姿は想像できない。例え高位貴族の妻となっても家事は少し自分でやってしまいそうだ。家事などしなくとも、貴族の務めと言えばノブレス・オブリージュ「高貴さは(義務を)強制する」という事で、奉仕活動などがある。今では資金だけ出して人任せにしてしまっている貴族(もの)が多いが、どうせなら企画から自分も参加すれば面白いのにと思いすらする。集まって人の中傷をするようなお茶会に出るよりはよほど有意義だろうに。

 そんな取り留めないことを考えながら令嬢たちの誹りを無視して歩いて行こうとすると一つの声が聞こえた。


「お止めなさい」


 それは令嬢達を嗜める綺麗な澄んだ声。


「貴女方もセレジェイラ様が有能な方だということは聞いているのでしょう。人を羨むのはお止めなさい。自分を辱めるだけですよ」


 自分を庇ってくれる声に思わず振り返ってその姿を確認すれば、黒い髪に黒い聡明そうな瞳の美女。涼しく刺すような美しさはセレジェイラにはない大人の女の魅力を醸している。彼女はリアムの婚約者筆頭とされているダイアナ公爵令嬢だ。

 噂話に花を咲かせていた令嬢たちは口を噤んだ。身分が高く、王太子の婚約者筆頭であるダイアナには口答え出来ないようだ。しかも彼女達はダイアナの取り巻きでもある。

 その場の冷えた空気に近くを通りかかる者たちは、またひそひそと言葉を交わし通り過ぎていく。そこに一つの足音が近づいた。


「何をしているんだ?」


 僅かに怒気を孕んだ声。こんな女同士の言い争いのようなことにわざわざ口を挿んでくる声の主はリアムだけだ。

 リアムはセレジェイラが令嬢達と上手くいっていないことを知っている。上手くいかないのは自分の所為だとも知っているがそれは改める気が無いようで、そういう場を少しでも目にすれば反って優しくセレジェイラに接し令嬢達を嗜めるどころか煽るような態度をとる。それは『お前達など入り込む余地もない』と言いたげな余裕あるものだが、今日は少し違う。

 セレジェイラを背に隠し令嬢達に冷たい視線を向けた。


「殿下! 私達はなにも……ダイアナ様の為に……」


 令嬢達は苛めていたわけではないと必死に取り繕おうとする。リアムはダイアナの為にと出た事で、訊ねておきながら令嬢の弁明の言葉には耳も貸さず、お前達はその他大勢だとでも言いたげな態度でダイアナに対峙した。


「ダイアナ、お前はこういった低俗なことはしないと思っていたがな」

「……申し訳ございません」


 リアムのお前が首謀者かと決定したような物言いに、ダイアナは否定するでもなく頭を下げた。


「違う!」

「!?」


 途端に上がった鋭い否定の声に人々は驚いて声の主の方を一斉に見た。声の主はリアムの影にいるセレジェイラだ。リアムもなぜお前がと言いたげな表情でセレジェイラを振り返った。

 セレジェイラはそれを見ない振りをして、リアムの陰から出るとダイアナの手を取った。


「ダイアナ様、ちょっと此方へ!」

「何をなさるの!? 伯爵令嬢ごときが失礼よ!」


 セレジェイラの態度に批難の声を上げたのはダイアナではなくその他の令嬢方だった。


「煩いですよ。そういうことは隠れ蓑を使わず単身私に文句が言えるようになってから言ったらどうです!」


 セレジェイラは彼女達をきっと睨みつけて、そのままダイアナを近くの空き部屋へと連れ込んだ。


「セレジェイラ様、彼女達の暴言はお詫びします」


 部屋の扉を閉めセレジェイラが手を離すとダイアナは深々と頭を下げた。その態度にセレジェイラは眉を顰めた。


「ダイアナ様! たとえ彼女達がダイアナ様の取り巻きだとしてもダイアナ様が詫びる必要はございません! もう子供ではないのですから責任は彼女達に取らせるべきです! それからそんな話ではないのです!」


 やはりダイアナは清廉な人柄だ。見た目が冷たい印象を与えてしまう美人は損をする。セレジェイラはそれをよく知っていた。

 これは一言言ってやらなければならない。セレジェイラは腰に手を当てた。


「ダイアナ様は殿下のことをお慕いしているのでしょう!? あの場のあの態度は違うでしょう!」


 言われた言葉にダイアナは目を丸くした。


「……あの?」

「ダイアナ様のような普段から毅然とした女性は涙です!! あそこで謝りながら涙でも見せれば殿下も確実にダイアナ様のものです! しおらしい姿を見せるのですよ!」

「……あの……なんのお話で?」

「殿下を虜にする話です! ダイアナ様のようなちょっと見た目が冷たそうに見えてしまう美女はとにかくそのギャップを狙うのです。普段毅然とした女性が殿下の前でだけ涙する。守ってあげたくなるでしょう!ダイアナ様だって本当は泣きたい時もあるでしょう? いつも澄ましていずにそういう姿も見せればいいのです。気高い貴女がそうすることは容易ではないでしょうが、殿下には甘えてみて下さい。それが成功の秘訣です! いいですね!?」

「……セレジェイラ様は殿下のことをお慕いしていませんの?」


 ダイアナは驚きの表情のままセレジェイラに問いかける。


「してません。もっと堅実な方を探しています。いい方がいらっしゃったら紹介してください。では私は行きますね」


 セレジェイラはそれを呆れ交じりにきっぱりと否定して部屋を出た。



「セレジェイラ。何をしていた? ダイアナは?」

「むかついたのでちょっとお説教を。手は出していません。疑うのならご自分でご確認を。私は先に執務室に戻ります。失礼いたします」


 部屋を出れば待っていたぞとばかりにリアムに詰め寄られ、セレジェイラはにっこりと丁寧に返事をして横を通り過ぎる。

 まだそこに居たのかと言いたい令嬢方の「なんて不遜な」という声は聞こえない振りをしてセレジェイラは足取りも軽く執務室へと歩いて行った。



 リアムはダイアナのいる部屋の扉を叩き中に入った。部屋の中には静かに佇むダイアナの姿。


「ダイアナ。セレジェイラに何を言われた?」

「……殿下はセレジェイラ様を選ばれましたの?」

「質問に質問で返すな」

「申し訳ありません……」


 リアムの問いにダイアナは潤んだ瞳で彼を見上げた。冷たい声で窘められれば俯いてほろりと涙を零した。


「どうした? お前が泣くとは珍しい。……言い方がきつかったか?」

「いえ……いいのです……」


 ダイアナのこんな弱々しい姿は初めて見たとリアムも僅かに躊躇う。

 ダイアナの取り巻き達が彼女を盾にセレジェイラを虐めていると思ったが違うのだろうか。

 セレジェイラが誹謗に傷つかないと思っているわけではない。けれど彼女はそんなことに負けるような気質ではなくむしろ御すことが出来るはずだと思っていた。

 だが、ダイアナが相手となると話が変わる。彼女は未だリアムの婚約者筆頭で彼女自身の身分も高い。その身分の高さ故リアム自身も彼女を簡単には蔑ろに出来ないのだ。ダイアナがセレジェイラを苛めるよう唆すような女性でないことは分かる。それでも、この期に取り巻きを抑制できない彼女に責があると叱責しようとしたのだが。


「おい、本当にどうしたんだ? セレジェイラが間違ったことを言うとは思えんがそれほどきつく言われたのか?」

「いいえ……そういう事ではなく……わたくしは殿下をお慕いしているのです……」

「……ダイアナ……」


 ダイアナははらはらと涙を零す。普段毅然とした彼女の儚い姿にリアムも揺れた。それでもリアムには彼女を心から慰めることは出来ない。


「すまん……俺は……」

「……少しは可愛いと思っていただけました?」

「……は?」

「意地悪を言われたのではないのです。殿下を虜にする方法を伝授していただいたのです。どうでした?」


 ダイアナは涙を拭い顔を上げた。その顔は普段から目にする背を伸ばした公爵令嬢だ。しかも満足気に微笑んでいる。


「お前ら……!!」

「殿下。どうでしたかと訊いているのですが」


如何にも不機嫌に眉を顰めるリアムにダイアナは臆することなく微笑み再度訊ねる。リアムはしてやられたと小さく零し嘆息した。


「……正直、可愛いと思った。揺れるものもあった。が、俺を謀るとはお前もいい度胸だな」

「ありがとうございます。これは本当に使えそうですわね。ふふ。セレジェイラ様の嗾けたことですので寛大なご処置がいただけるでしょう? けれど、可愛いと思ったという割には口付けもありませんでした。以前の殿下なら、そうして下さったでしょうに」

「お前も言うようになったな」

「もう一度お訊きします。殿下はセレジェイラ様を選ばれましたの?」

「選定中だ」

「殿下の妃は殿下の一存で決められるのですもの。心のままに従えばよろしいのですよ。わたくしは束縛して下さいませんでした」

「あれは束縛でもしないとすぐに何処かに行ってしまうからな」

「気のない相手なら何処に行こうが気にもかけないものですよ」


 そもそもが束縛するということがそういうことを意味しているのではないか。ダイアナはそう思う。“セレジェイラが間違った事を言うとは思えない”さらりとそんなことを言うほど信頼していて。この殿下がなにを躊躇っているのだろうか。


「ダイアナ、お前は妃となったとき俺の浮気を許せるか?」

「ただの浮気ならば権力者()の甲斐性でございましょう。その程度、殿下の妃という地位がわたくしを支えてくれます。殿下は妃となった女性を蔑ろに出来る方でもありません。どうしても欲しいと言うのであれば側室も……一人ならば許します」

「寛容だな。いい女だ」

「けれど、愛してはいただけないのですね」

「……ダイアナ、後で話がある。十八時に執務室に来てくれ」

「分かりました」



 そんな話をしてリアムが執務室に戻れば、セレジェイラは楽しそうに仕事をしていた。そして「ダイアナ様って綺麗で廉潔な方ですよね! 私は王子妃に相応しいと思います!」とにこやかに言ってくる。リアムは「そうだな。相応しいと思うぞ」と顔も見ずに答えた。




 春の終わりの宵の口。王太子の執務室には二人の男女の姿があるが、親密というよりはどこか切迫したような雰囲気だ。


「ノール国第二王子エリック殿から君に婚姻の申し出をしたいと親書が届いた」


 王太子リアムは事務的な口調で対面しているダイアナに言った。


「エリック殿下……半年前に外交にいらした?」

「そうだ。君をダンスに誘っただろう。正妃にと言っている。君が私の婚約者筆頭としての立場にあると知っていての借問だ。彼も真剣だ」

「……反対はしていただけませんの?」

「しない。君の心に従ってくれ」

「わかりました。お受けします」


 ダイアナは瞳を閉じ承諾した。


「いいのか?」

「ええ。わたくし王妃になるのが夢ですので。エリック王子も素敵な方でしたし」


 リアムが再度問えば今度は穏やかに笑みを向けた。


「そうか」

「……少しは惜しいと思っていただけるのでしょうか」

「ああ。勝手な言い分だが即決されると悲しいものがある」

「本当に勝手ですこと。ですが、惜しいと思っていただけるのでしたら一つ頂きたいものがございます」

「なんだ? 出来る範囲で叶えよう」

「お別れのキスを」

「いいだろう」


 リアムはダイアナとの距離を詰め、顔を上げ瞳を閉じるダイアナの艶やかな唇に触れ、離れた。


「軽いキスですね」

「挨拶だろう? これ以上は出来ん」

「どうしてですか?」

「好色な男は嫌いだと言われる」

「まあ、殿下が縛られるとは。ふふ。では、挨拶でいいので、もう一度……」


「ラピス!」


 差し出された唇にもう一度リアムが触れようとしたとき、休憩用の部屋の扉が小さく開いていたのか、華やかで澄んだ声が聞こえ、同時にラピスが飛び込んできた。それを捕まえようとしたのだろう続くようにセレジェイラも部屋に入ってきた。


「セレジェイラ……まだいたのか……」

「今日はラピスと遊ぶ時間が無かったので今……それより……すみません、私すぐに下がります!」


 セレジェイラが飛び込んできたのはリアムがダイアナに触れようとする間際だった。セレジェイラは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに視線を逸らしてラピスを抱え上げると部屋を出て行こうとした。


「いや! まて! 誤解するな!!」


 慌ててリアムはセレジェイラの腕を取った。腕を取られたセレジェイラはさらに慌てた。


「こんなことをして誤解されるのは殿下ですよ! 手を離して!」

「セレジェイラ様、誤解しないでくださいませ。これはお別れの挨拶です」


 取られた腕を振り解こうとすれば、聞こえたのはリアムのものではない落ち着いた美しい声。セレジェイラは抵抗をやめ、きょとんとして声の主ダイアナを見た。ダイアナはセレジェイラに微笑みかけている。でも彼女はなんと言った?


「……お別れ……?」

「ええ。わたくしは正式に殿下の婚約者候補から外れます」

「どう、して……?」

「殿下には気にかかる方がいらっしゃるのですわ」


 ダイアナの一言にセレジェイラは瞳を見開き、ラピスから手を離した。ラピスの方は軽々と着地したが、セレジェイラの方は俯いて震える声を出した。


「殿下……貴方が……」

「ああ」


 ダイアナの『気にかかる方がいる』という言葉にどんな反応を返してくれるのかとリアムは若干期待を込めて返事をしたが。


「憎い!!」

「はあ!?」


 がっと襟首を掴まれて愕きの声を出した。


「ダイアナ様のような美女に想われ袖にするなんて! 私が王子なら誰よりも幸せにしてみせるのに!」


 なおもセレジェイラはリアムの胸を叩き、悔しいとばかりに言う。


「……お前、ソッチの趣味なのか?」

王子(おとこ)ならと言っているんです!」

「まあ、セレジェイラ様。わたくし幸せになりますのよ。隣国の王子殿下より求婚されましたの」

「隣国の王子殿下?……お受けするんですか?」

「ええ。女は愛されて結婚したほうが幸せになれるといいますもの」

「……いや! 嫌です!! 駄目!!」


 今度は悲し気にダイアナを見て、その腕に縋りつくと懇願した。


「セレジェイラ様?」

「勝手ですけれど、ダイアナ様は私の母や姉に似ていて……貴女がリアム殿下の妃になって下されば殿下にお仕えする甲斐もあると思っていたのに……ダイアナ様ならと思っていたのに……他国に行ってしまうなんて……殿下の甲斐性なし!!」

「おい……俺はダイアナを引き留める道具なのか?」

「ほかに何の価値があるんですか!」

「いい加減にしろ! たまには俺にもそうやって縋れ!」

「いやー! 何のために縋るんですか! ダイアナ様、助けて!!」


 ダイアナの腕にしがみつくセレジェイラの手を強引に取ろうとするリアム。またそれを拒むセレジェイラ。

 これは確かに告げるのを躊躇うか。セレジェイラの心の在処が分からない。


「ふふ……。これは気分がいいですわね。わたくしもその気はありませんけれど、セレジェイラ様のように可愛い方から慕われれば悪い気はしませんわ。しかも殿下より慕って下さるなんて。どうぞ『お姉さま』とお呼びください」

「ダイアナお姉さま!!」

「なあに? セレジェイラ。わたくしが隣国に嫁ぐのはまだ先の話です。それまでは甘えてね」

「お姉さま! 大好き!!」


 ぎゅうっとセレジェイラはダイアナに抱き着くとダイアナも抱きしめ返した。


「まぁ、可愛い。それこそわたくしが男ならば生涯大切にしますのに」

「ダイアナ様……」


 セレジェイラは潤む瞳でダイアナを見上げた。


「ふふ。わたくし、ひとりとても誠実な方を知っているのですけれど、セレジェイラ様をとられるのが悔しいので内緒にしておきますわ」

「まあ、ダイアナ様ったら」


 セレジェイラがするのは甘えるように照れた顔。いい気分でいられないのはリアムだ。


「見つめ合うな! 本気で怒るぞ! お前は俺のものだ!」

「勝手なことを! ただの秘書官です!!」

「すぐに変えてやる!」

「解雇ですか? 望むところです! そうなったらダイアナ様の女官として隣国に付いていきます!」

「誰が許すか! そんなこと!! 俺の妃として永久就職だ! こっちに来い!」

「嫌だと言っているんです!」

「何が嫌だ!?」

「殿下は女性にモテるから嫌です!」

「なんだそれは?」

「挨拶で唇にキスを出来る人ですもの。浮気をするでしょう! すぐに私に飽きて捨てるでしょう。だから嫌です!」


 逃げた妻と逃げられた夫のような応酬が微妙な空気で遮られた。リアムは眉を寄せ訊ねた。


「理由はそれだけか?」

「………概ね」


 静かな訊ね方にセレジェイラもダイアナの腕にしがみついたまま居心地悪そうに返事した。


「浮気をしなければいいんだな?」

「殿下のような人はします」

「どう言ったらしないと信じる?」

「どう言われても信じられません。殿下は浮気をします」

「言い切る理由は?」

「顔が良くて何でも持っているからです!」


 セレジェイラの父がそうだった。


「なるほど、父親の事がトラウマになっているんだな」


 図星をぐさりと刺されセレジェイラは黙った。リアムは考えた後、にっこりと笑った。


「いいことを教えてやろう。捨てられないよう手管をおぼえればいいんだ」

「は?」

「手管は俺が一から教えてやろう」

「いやあ!! 変態!!」


 さあ、来い、とばかりにリアムはセレジェイラの腰を引き寄せた。思わぬ言葉にダイアナにすがる力が弱まっていたセレジェイラはリアムに拘束された。


「殿下、セレジェイラ様。見ていて楽しいのですが、とりあえず私は下がりますのでその後でやっていただけます?」

「ああ、早く行け」

「嫌! 私も行きます!」

「セレジェイラ!」

「ふふ。殿下、三角関係ですわね」

「楽しそうに言うな、ダイアナ!」

「楽しいので」



 その後、王宮ではしばしば三人でいる姿が目にされることになる。修羅場かと思えばダイアナとセレジェイラは本当に仲良く微笑みあっている。リアム王子は両手に花かと噂されるが、実際にそれを間近で目撃した人々は。


 寄りかかるようにダイアナと腕を組む幸せそうなセレジェイラ。眼福の美女の戯れ。それを引き剥がすリアム。


 この三角関係はなんなのか、とまた噂を呼ぶことになる。


 そうしてもう一つ。それはダイアナの差し金なのか、セレジェイラを敵対していた令嬢方が『男を虜にする方法を教えて下さい』と頭を下げに来ることがあったとか。

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