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お狐様の見る世界  作者: ネナイコ
第2部 未来と神様
25/28

夢の話

「将来の夢は?」


よく周囲から聞かれる質問だ。

その度に私は


「まだわからない」


と答える。


「ミサオはどうしたい?」


隣に居る天日様が私に聞いてくる。


「まだわからない」


私は答えた。


「そうか」


天日様は私を理解してくれたのか、それ以上何も言わずに部屋を出て行った。


友達は将来の自分を予想して理想の自分を語る。

私にはそれが全く理解できなかった。

自分が何かになることを想像できないからだ。


「人は夢を持っている、お前は?」


蜃気楼のように揺れ動き、近づいてくる女性、そう、今日出会った神様だ。


「ひどいやつだ」


「ひどいやつだとも」


女性は周囲の風景に溶けるように消えていった。


部屋は窓が開いてるにも関わらず恐ろしく静かだ。


気晴らしに部屋の本棚から本を一冊取り出して読んでみるが、

内容は頭に一切入ってこない。

字は書かれているが文章は常に変化し、内容も暗号文のように不規則で二重の意味で読めない。


私は本を読むことを諦め、本を元の場所に投げ捨て部屋を出ようとする。


足が泥に埋まったかのように動かない、とてつもなくもどかしい。

わずか数メートルを歩くだけで何分も経過しているようだ。


苦戦して部屋を出ると私はコンビニにいた。


目に映ったチョコレートを買おうとしたが、レジ前でお金がないことに気づいた。


「お客様お会計は?」


「お金が無いです」


「買えませんね」


「そうですね」


「盗んでもいいんですよ?」


「盗みません。犯罪だから」


「そうですね」


視界が歪み自分が立っているのか寝ているのか座っているのかわからない視点になる。




私は神社にいた。




「人間は人間。ミサオちゃんは?ミサオちゃんかな…」


楓さんが耳元で囁く。

振り向いても誰もいなかった。



私は部屋にいた。

何もない、壁は剥き出しのコンクリート、家具はベットと木の机。

机の上にはかわいいクマのぬいぐるみ。



部屋の隅に置かれたパイプ椅子に私が座っていた。


「はじめまして」







はっきりとした視界で部屋の天井が見える。

寝起きの頭でぼんやりしているが今まで見ていたのは夢だと理解した。


天日様と散歩に出かけて、体調が悪くなって、家に帰って…

外は少し明るいが、夕焼けで部屋が少し赤くなっていた。


夢の内容を思い出したが、最後の部屋は記憶になかった。

アニメやドラマのシーンを思い出しただけかもしれないが、

妙にはっきりしていて現実と区別がつかなかった。

それでも脈絡のない展開だったので、夢だと気づけなかった自分が少し不甲斐ない。


そろそろ夕飯の準備をしよう。

今日は稲荷寿司の日だ。

今日こそは天日様を唸らせるような一品を作ってみせるぞ。

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