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お狐様の見る世界  作者: ネナイコ
第1部 ミサオ
18/28

ルールの話

「あああ!冷蔵庫のプリンが!」


こんな漫画や小説でしか聞けないようなセリフをまさか自分が言うことになるとは。

ひとりっこなのでなおさら。

冷蔵庫には私がデパ地下で買っておいた少しお高いプリンが入っていた。

入ってい「た」なので、もうない。風呂上りに冷えたプリンを食べたかったのに。


「天日様ー!冷蔵庫のプリン食べました?」


「食べとらんよ」


「ええ…そうしたらお母さん?」


「あ…」


夕食後に優雅に一服していた天日様がやっちまったな的な顔をしている。

恐らくお母さんが食べているところでも目撃していたのだろう。


「ミサオの母上なら同じのを買ってきてくれるじゃろ…」


「いま!いま私が食べたかったプリン欲はどうすれば良いんですか!もー…」


プリンの気分を解消できずモヤモヤだけが残る。

名前か…名前を書いておかなかった私が悪いのだろうか。


「気持ちはわかるが、無いものは無いと諦めんとな」


「…名前書いてなかったけど、そこは空気を読んでいただきたかった」


買い置きしているヨーグルトを1つ取り出して、天日様の対面の席に着く。


「今日は2人とも遅くなると言ってたな」


「会社とパートの飲み会だそうで。2人ともお酒強いから心配は無いですね」


「ミサオは酒豪になりそうじゃな」


「どうでしょう」


お酒…かぁ、美味しそうに飲んでいるところを見ていると飲みたくなるが

火がつくようなものを直に飲むのかと思うと少し気が引ける。慣れなのだろうか。


「天日様もお酒強いですよね」


「自分のペースを知っておるからな、無理をしないだけじゃよ」


一升瓶を1時間で空にする神様の意見は参考になるのだろうか。一応覚えておこう。


「お酒に関わらず、何か自分で制約とかルールみたいなものって設けてます?

冷蔵庫の中身には名前を書くレベルでも良いですけど」


「ルールか。そうじゃなぁ、無益な殺生はしない、とかかの」


「有益な殺生ってあるんですか」


「難しいことを聞いてくるな。例えば目の前に害をなす輩がいるとして、話ができるなら説得するし、

1回痛い目に合わせてわからせたり…とにかく排除するという考えは最後に持っていく。

それでも本当に駄目で自分以外のものに手を出すようなら、排除しなければならん。

それは有益だとわしは思うよ」


「なるほど」


相槌を打ってヨーグルトを口に入れる。


「あとは三時のおやつは絶対死守じゃな!」


真面目な話から突拍子もないルールが飛び出し、ガクッとなった。


「確かに天日様おやつの時間何か食べますもんね…」


三時のおやつ以外でもおやつを食べているような気がするが…

しかし、それでこの体型を維持できるとは恐るべし神様。


「そういうミサオはどうなんじゃ?自分の中でルールは設けとるのか?」


「私ですか?うーん…」


自分でルール設けているというかなんというか。


「法に従う、ですかね」


「ほう」


「ギャグですか?」


「違う違う。それで、その心は?」


ギャグではなかったようだ。


「私達、というか人って社会の中で生きてるわけじゃないですか。

なので、その社会の中のルールを守るのは当然というか」


「普通の人間なら誰でも守っとるような気もするが…」


言われてみれば誰でも無意識に守ってるような気がする。


「いや、ミサオの場合は徹底しているか…車の気配が無くても赤信号待つしのう。

それに犯人と対面してもなお冷静に警察に通報する奴はなかなか見ないと思うぞ」


そうなのだろうか。


「ミサオ。もし、社会のルールや法に縛られない奴がミサオに襲いかかってきたら…どうする?」


どうだろう、確かにそうなるとルールを守っていても意味がない。

なぜか天日様はこの質問を真面目に聞いている気がする。


「…逃げるんじゃないですかね」


「そうか」


天日様はいまの回答で納得してくれたようだ。


「先日の名無しのようなものに襲われたら警察ではなく、わしを呼べ」


「天日様をですか?スマホで?」


「まー…その方が確実かのう」


「もし一人でそういう目にあったらそうしますね」


思えば天日様が家に来てから神様やその類のものと遭遇するようになった気がする。

神様のオーラっぽい何かに引き寄せられているのだろうか。

私がヨーグルトを食べ終えるまで、天日様は何も言わずこちらを見ながらお茶を啜っていた。


「んんー。じゃあ、私部屋に戻って宿題やってますね。天日様はまだお茶ですか?」


軽く伸びをして席を立つ。ヨーグルトの空き容器は三角コーナーに捨てた。


「観たいテレビ番組があるんじゃよ、終わったら部屋に行く」


「はーい」


テーブルに置いたスマホを手に取り自室へ向かう。

今日のノルマは数学のやつだったかな。

教科書を読み返せばわかるとは思うけど、駄目なら真紀に聞いてみるか。

…部屋から風の音が聞こえる。窓開けっぱなしだったかな。

部屋は暗いがスイッチの場所は体が覚えている。スイッチを入れて机へ




何かいる。


生き物?鬼?いや、これはいつかの式神だ。


それよりも、もっと、黒い、禍々しい。


窓が開いてたから?でもなぜ、何が目的で?


手に持っているのは私の防犯式神、もう片方はスプレーかん

















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