第3話
ユーリが宿屋の硬いベッドで意識が落ちると同時に
かちりと切り替わる。
「ふぁ」
薄暗い部屋の柔らかいベッドの中で有理は目をこすりながら上半身を起こす。
有理目の前には慣れ親しんだ自分の部屋が広がる。
教科書が置かれた勉強机、少しよれた黒いランドセル、まだ上手く吹けないリコーダー、誕生日に買って貰った携帯ゲーム機の夢釣人2。
少なくとも自分が夢から醒めたことを有理は感じた。
ベッドの近くに置いて有ったまだアラームがなって居ない目覚まし時計を見る。
時間は六時だった。
「灯はまだ眠っているか……
起こすのも悪いし……」
隣のベッドで寝ている灯を起こさないようにしてそろりと部屋から抜け出すとすぐ右側にある階段を降りる。
階段を降りる度にいい臭いが下から漂ってくる。
「お父さんおはよう」
「おはよう有理今日も早起きか、偉いじゃないか」
リビングに入った時にソファーに腰かけて新聞を読んでいる父の背中に有理は挨拶をする。
「あら、有理おはよう、朝御飯は用意するから少し待っててね」
台所から茶碗や皿が乗ったおぼんを持って出てきた母はテーブルに料朝御飯を配膳しながら有理に言う。
炊きたての御飯や味噌汁が有理の鼻腔をくすぐる。
「うん」
その言葉に有理は答える。
ソファーに座りテレビを見る。
朝早いからかその目に映るはただのニュースで有った。
・
・
・
「「行って来まーす」」
朝食を食べ終え歯を磨き服を整え有理と灯は家を出ていく。
たまたま二人の兄弟しか居ない通学班は足は軽やかにそして一直線に自分の学校に向かう。
その道すがら……
道中の赤信号で足止めを食らっていた時……
「ヨう◎※#……」
有理はその不思議な唸り声を聞いて振り替える。
それはほのおだった。
それを見た有理はあるはずの無い記憶が頭に映る。
そのなはくとぅぐぁ。
ふぉーまるはうとのきゅうしはいしゃであり。
ないあるらとほてぷのてきたいしゃ。
有理は頭を抱えるこれはなんだ。
この記憶はなんなんだと。
「ほウ、ワタしヲ見てもその様子やハリ目をかケタ甲斐有っタ」
聞くな聞くな聞くな聞くな聞くな聞くな。
奴の声を聞くな。
有理は耳を押さえるが意味も無くそれは聞こえる。
「お前はなんだ?知っているのか?」
ならば少しでも情報を得ようと
有理はほのおの人型に唸り声で問いかける。
「ユーリ、それを知るのはまだ早い」
その言葉に対しクトゥグアは答える。
有理はクトゥグアの声が鮮明に聞こえる。
「いずれ知る、もう時間のようだしまた会おうユーリ」
その言葉と共に少女は消える。
まるでそこには居なかったように……
「お兄ちゃん大丈夫?変な唸り声あげてたけど?」
灯のその言葉共に有理は前を見る。
信号は青になっていた。
「大丈夫だよ、灯」
その言葉と共に有理は道路を渡る。
「そう……」
灯もそれに着いていく。
学校はもうすぐだった。