第2話
ガタンガタン
ユーリは馬車に乗り揺られていた。
なんでもこの馬車はベルクス帝国の首都に向かっているらしい。
袋に入った水を飲み堅くて変な味の黒いパンとそれよりも硬く塩辛い肉のような物をかじりつつ
対面に座るマントを取り自分と同じように肉とパンをかじるフェルディスを見ながらこうなった要因を振り替えるのであった。
「ユーリ、君にはベルクス帝国の首都に来てもらう」
槍を下ろしたフェルディスは言う。
「……わかりました」
その言葉に対し有理は粛々と従う。
「素直なのは感心するが疑問に思わないのか?」
そうフェルディスは言うが有理はもう森の中で動物を殺し続ける悪夢は見たくないのだ。
「ふむ、まあ良いだろう私について来い
そうそう名乗るのを忘れてた私の名前はフェルディス・コノートだ」
そして黙ってるとそう言いながら歩いていくフェルディスを見て有理はそれについて行った。
そこからはトントン拍子だった。
森の出口につくとフェルディスは少し待ってろと言うと消えたのだ。
その後、少しするとフェルディスが馬車と共に来て来てそれに乗りこんだのだ。
なお龍は戻れと有理が念じると背中に戻るようで有った。
そして今に至る。
「ユーリ、そもそも君はベルクス帝国ひいてはその周りについて何処まで知っている?」
肉とパンを食べ終えたフェルディスが揺れながら聞いてくる。
「全く知りません」
パンと塩辛い肉を無理やり飲みこみ水で流し込んでから
有理はそう答える。
「ふむ、まずは其処からか……
まあ時間も有ることだし少し教えてやる
ベルクス帝国はここ一帯を治める帝国だ
今の帝はルー3世
そして私の仕える国である」
「次はミルド王国連合
帝国に対抗するために複数有る王国や都市国家が寄せ集まった連合で
我が国と100年戦争中といっても今では小競り合いをしている程度の
ほぼ名目だけの戦争だがな」
「最後にクト教国
魚人の国家でクトゥ教という宗教
により統制されている国だ
るるいえだのなんだの言ってる変な連中だが海軍は最強の国だ」
「あとは小国が何個かあるが大国といえるのはこの3つと言ったところだな
とそろそろ中継の村に付く頃あいか……」
その言葉を聞いた有理は馬車についた覗き穴から顔を出す。
その先には十数個の家屋が道に沿って並んでいた。
そして村に近づいて行くと薄い何かが通りすぎる感覚を有理は感じた。
「これは?」
この不可解な感覚をフェルディスに質問すると……
「結界を通るのも初めてか……
害はないから心配するな」
フェルディスは少し呆れながらもそう答える。
馬車が道のあるところで止まる。
その馬車の横には他の家屋より幾分か大きい建物が有った。
「ユーリ、ここが今日の宿……言ってもわからないか
とりあえずついてこい」
そう言いフェルディスは馬車を降りるとその建物に向かう。
「宿の意味くらい知ってるよ
ご飯食べたり…………………………
一晩明かす場所でしょ」
その有理の言葉にフェルディスは目を細める。
言葉が数瞬だが不自然に切れたか。
思い付く限りだと契約魔法あたりか。
それとも私の知らない別の何かか。
しかし結界を知らないのに宿を知っている、どういう事だ。
…………
「フェルディス?」
有理が宿の前でぽつんと立っているフェルディスを少し心配するように
声をかける。
「すまんな、少しぼーっとしてた、行くぞユーリ」
フェルディスは自分の考えている事をとりあえず横におき有理を
先導する。
「騎士様、冒険者の宿厳風亭にようこそ」
宿の女将はそう言い料金を言おうとすると……
「女将、一番良い部屋を頼む」
そう言いフェルディスは懐から金貨を2枚出すと女将に渡す。
「サー金貨じゃないですか!?
貴族向けの部屋などこの宿には……」
金貨を渡された女将は怯えながら言う。
「何釣は要らん、ただ少し口を固くして欲しいだけだ」
その言葉に女将は止まる。
口を固くその意味は……
「フェルディス、終わったの?」
フェルディスの後ろから有理が歩いてくる。
「騎士様、こちら部屋の鍵になります
部屋の場所はこちらの階段から登って2つ目の部屋になります」
有理から目をそらしながら女将はフェルディスに鍵を渡す。
「わかった、ユーリ行くぞ」
「食事は部屋にお持ち致しますね」
「もう寝るからけっこうだ」
その言葉にそう返しつつフェルディスと有理は階段を登り部屋に向かって行った。
部屋はベッドが2つ置いてあるのみの簡素な物だった。
板切れに布を張り付けたベッドであったがもう襲われないという安心感、疲れと満腹感により有理はそのまま横になると寝息をたてる。
それを横で見ながらフェルディスも同じようにベッドに横になり
「不可解な事が何個かあるが……何はともあれ面白くなりそうだな」
そう言うと寝息をたてるのであった。
廻る廻る夢は廻る
「ふむ、無垢龍は帝国か……」
「置く場所間違えた?あの子一応ラスボス候補の筈でしょ~」
「錯乱するとふんだんだがなぁ……」
「一応他の連中は想定の通りに動いてるけど……」
「……まあ良かろう、役割は移ろう物だ」
「そう……で、どうするのよこれから?」
「まずは数年は様子を見てそれからプレイヤー達に来て貰うか」