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モヤモヤする少女

「はぁい! おまちどおさま! チョコパフェにキャラメルパフェよ!」

 何回見ても素敵!

「わぁい! ここのチョコパフェ大好き!」

「うふふ、私の料理でここまで笑顔になってくれるのは嬉しいわ。このカフェやっていてよかったぁって、報われる気持ちになるもの。ハルちゃんはここに来る度に無邪気な子供みたいに笑ってくれるわよね!」

「えへへ……ここに居ると、何故か、小さい頃に戻っている気がするんです」

「コーヒー淹れました。店長」

「んまぁー! 本当にありがとうね燐斗君! 今日はバイトの日じゃないのに……今月はボーナスをあげちゃう!」

「大丈夫ッスよ。自分がやりたいからやっただけッスから。給料だけで十分ッスよ。……ってか、前々から思ってましたけど、十分過ぎますよ」

「あら? そう? 私的には燐斗君の頑張りに釣り合っていると思うけどぉ……?」

「俺の頑張りはそんなに高くないッスよ……」

 ううん、そんなことないよ。燐斗。

「もー! そんなに自分を卑下しちゃ駄目よ! お髭が濃ゆくなっちゃうわよ! ……なんつって」

「…………」

 面白いと思うんだけどなぁ……あ、そういえば燐斗、朝私に言ったのと同じような事を言われてる。

 うん、燐斗も、自分を卑下してるよ。

「まあ、さっぶいオヤジギャ誰がオヤジだコラ。……コホン。オネエ様ギャグは置いといて。燐斗君の美味しいコーヒーを淹れるその才能には、とおぉっても助けてもらっているのよ」

「うん! 私、珈琲(コーヒー)は苦手なんだけど、燐斗の淹れる珈琲は美味しくて大好きだよ!」

 私かウチの家族くらいしか知らなかった燐斗の珈琲の味を他のお客さんも知ることになったのは、少しだけ嫌だったなぁ。……けど、バイトを始める前より燐斗は成長しているし、仕方ない、よね。

「……ありがとう」

 ……可愛い! 顔が真っ赤だよ燐斗! あれ? 私はさっき何を考えていたんだっけ?

「それにね、燐斗君。あなたはとおぉっ……ても優しいじゃない! きっと、人一倍、誰かのために一生懸命に頑張ってきた(はず)よ」

「……店長、店内の頑張りだけに限定しないとバイトへの給料が増加し続けますよ」

 でも、なんだか嬉しそうだなぁ、燐斗。

「……そうね。上に積み上げていくと大変なことになりそうだわ。まあ、うちのバイトって燐斗君一人だけなんだから遠慮しなくてもいいのだけど」

「……店長、後でお話があるんッスけど」

 ……? 他にお客さんもいないからここで話してもいいのに……

 もしかして、私がいるから?

「あら? 何かしら? デートのお誘い? ……自分で言って虚しくなっちゃったわ。まあ、いいわ! さあ、アイスが溶けないうちに早くパフェを召し上がれ! ……さて、私も休憩! 燐斗君が淹れてくれたコーヒーをゆっくりと飲みましょうっと」

「ええ。いただきます。……って、ハル、食べないのか?」

「……話って、私に聞かれたくない話?」

 こんなことを言って、嫌われたら嫌だけど、誤魔化されるのも嫌だ。

「聞かれたくないっていうか、俺と店長に関係がある話だし……いや、ここの常連のハルなら関係があるかもな。……まあ、隠すようなことでもないし言うよ。……竜子をこの店でバイトさせたいなって思ってるんだ」

 ……え?

「あら、竜子ちゃんって、さっき言ってた同棲している女の子?」

「女の子って歳でもないんッスけどね。……でもアイツ、色々あって世間知らずなところがあるんで、社会勉強をさせたいと思って」

 うん、さっきベンさんが言ったとおり、燐斗は優しいなぁ。竜子ちゃんの事を放っておけないんだろうなぁ。

「なるほどね……詳しい話は、今度その子にここの仕事の見学をさせるから、そのときに聞くわ。希望の日を聞いておいてちょうだい」

「ありがとうございます!」

 燐斗、嬉しそうだなぁ……

「……ハル、顔が怖い」

「……へ!? そ、そうだった!?」

「……竜子とルナの事を隠していたり、それでハルに心配をかけたりモヤモヤさせたりしているのは分かっているんだ。……ごめん」

 ううん、燐斗の気持ちも本当は分かっているの。燐斗が、私を何かに関わらせないようにしていることも、何となく気づいている。

「ううん。私も、燐斗の事をきつく縛り過ぎていたのかもしれない。私、嫉妬しやすくて……」

 私が傍に居ない間は燐斗の時が止まる、なんて訳がないのに。

 もしもそうなら、どれだけ素敵だろう。

「……ハルは俺の支えだよ。こんな事を言うのは恥ずかしいけど、居なくてはならない存在だと思う。……顔が赤くなっているだろうから出来れば見ないでほしいけど」

 ……可愛い、けど。

「燐斗、最近、たくましくなったね」

「……そうか? まあ、精神面ではかなり鍛えられたというか」

 本当に何があったんだろう。

 ……きっと、竜子ちゃんたちと関係があって、私とは関係のない事だったんだろうけど。

「……お二人さん、お熱いところ悪いけど、その熱さでパフェがダウン寸前よ!」

 お熱い、のかな? 燐斗は私の事を想ってくれているのかな?

「おっと! 早く食べないと! ……ハルもほら! チョコパフェを食べているときのハルの顔、可愛くて、俺、好きだぞー?」

 笑顔でそういう事言うのは、反則、でしょ……きっと、こういう『好き』とか、私の事を可愛いって言うのは本当なんだろうなぁ。

 うぅ、恥ずかしい……!

 バイトを始めて、竜子ちゃんたちと会って、燐斗は成長したんだ。でもそれは私の知らないところで、私の知らない燐斗に『変わって』いっているって事になるんだよね。

 ……複雑だなぁ。

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