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確かめる女 ×

【注意】

・残虐な描写




 丁度同刻、昨日とは別の某県某町の公園で、例の女、(くすのき) 魅依(みい)はベンチに独り腰を掛けて、鼻歌を歌っている。

 囚人服には、まるで血の雨の下に晒されたような赤黒いシミが付着している。漆黒の首輪はつい先程、女の自慢の怪力によって呆気なく砕け散ってしまった。スカートから伸びていた鉄球は鎖だけを残して消えてしまっている。

 大勢の人間に追いかけられたが何の苦労もなく、彼らを殺す、あるいは撒くことが出来た女は、ここぞとばかりにくつろいでいる。確かに、この時間帯のこの狭い公園は人が居らず、居たとしても公園を急いで通り過ぎる人くらいだ。

 それでいい。彼女に気づいて騒いだりでもしたら、殺されるだろう。一般人は彼女に気づくことなく、今まで通りの平穏な日常を過ごしていればいい。

 しかし、どうやらそういうわけにもいかないようだ。

 またしても、心苦しい光景が繰り広げられるのであろう。


「ふんふふふーんふふー ふふふふふー」

 凄い。やっぱり凄いや! この力! あんなに沢山の人に追いかけられてもぜんっぜんへっちゃらだぁ!

「ふふふん ふふふふふふふー」

 すっごく気分がいい! 今なら何だってできる! 昔から気になっていたことを確かめることもできる! 誰にも止められない! 誰にも『駄目!』って怒られない!

「ふんふふふーんふふー ふふふふふー」

 あのお姉さんに感謝しないと! 本当にありがとぉ!

「ふふふんふー ふふふんふー ふふー」

 ……ふう。この歌、結構好きなんだよねぇー。みーが大好きなゲームのBGM。

「……うーん」

 これからどうしよっかなー。……せっかくだし、首都、行っちゃう? 東京、行っちゃう?

「……あ」

 赤ちゃんが泣いてる……だんだん、こっちに近づいてきてる?

「……隠れよっと!」

 そうそう、赤ちゃんでしたいこと、確かめたいこと、あったんだよねぇー。

「あぁぁぁぁ! あぁぁぁぁ!」

「……よしよし、良い子だから泣き止んでー」

 わあ! ラッキー! 綺麗なお洋服だ! そろそろ変えたかったんだよねぇー! この服!

「……」

 ぬきあーし、さしあーし……赤ちゃんが泣いているし、普通に歩いても気づかれないかもだけど。

「よっ!」

 首を狙って手刀だぁー!

「っ!?」

 よぉーし! おーわりっ! とりあえず、一齧(かじ)り……うんっ! 柔らかくて美味しい! 今までで一番かもっ! 赤ちゃんのために健康に気をつけていたんだね! えらいえらいっ!

 それじゃあ、早速お洋服をもらおう! えぇーっと、首の血が付かないようにお洋服を脱がして……

「ふえぇぇーーん! ふえぇぇーん!」

「あ、そうそう、君を忘れちゃいけないよねっ! 大丈夫! 忘れてないからっ!」

 でも、まずはお洋服が先!

 よしっ! ゲットゲット! これはここに置いて……っと! そして、この子のお母さん! 頭を置いて……

「最後まで見ててあげてね!」

 この子に油をかけて、蛇口のすぐ下に置いてっと……よしっ! 準備完了!

「んふふー! これ、なぁーんだ!」

 おっ! 泣き止んだ! ライターの火が珍しいのかなぁー?

「それじゃあ、お母さんに『今から行くねー!』って手を振ろうか!」

 もちろん、赤ちゃんには話が通じていないからみーが赤ちゃんの手を持って振るんだけどね! ……ふふん! あの人からは『力の加減は難しい』って言われたけど、みーに言わせると朝飯前だよ! たった今食べたばっかりだけどっ!

「じゃあ、いっくよぉー!」

 『赤子が火が付いたように泣く』って、どんなだろうなぁー!

「……ゅ? ……ゅ?」

 あ、フードに火が付いてる事に気づいた!

 もぉー、みーを見られても困るよー。年上の人が絶対に助けてくれるだなんて、そんな事思ったらいけないんだよー? ま、赤ちゃんだからよく分かんないんだろうけどっ!

 ふふっ! みーの方がこの子よりも頭良いっ!

 ……あ、ほらほら、もう後ろ髪に燃え移っちゃったよ?

「おぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっっ!」

「おほっ!」

 想像以上に凄いよ! 臭いも凄いけど! ……でも、皆来ちゃうから、そろそろ逃げないとだね。お洋服を持っていこう。……臭い、付いてないかな? この臭い、とっても嫌だから、付いてないといいなぁ!

「ああああぁぁッフ! ケホッ! ケホッ! コホッ! ……ッ! ……ッ!」

 ……あれ? 肺とか喉とかがやられちゃったのかな? もうおしまいなんだね。二度と泣けないんだね。

 よかったじゃんっ! 泣くって悲しい事だからねっ!

「…………」

「ありゃりゃ……残念」

 水で流したけど、もうコレは動かない。……でも、まあ、楽しかった!

 それじゃ、中途半端に焼けてるところをヒトツマミ……っと!

 うーん……みー的には、ビミョーかな。

 ……あ、そうそう! お母さんも赤ちゃんの最期を見届けたんだし、ついでに燃やしといてあげようっ!

「どうしたぁ!?」

「何があった!?」

「火事だぁ!」

 ん! 何人かがこっちに走って来てる! ……それじゃ、お別れの言葉を言って、退散しようっと!

「確かめさせてくれてありがとう! バイバァーイ!」

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