表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/38

訪問する少女

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい。……それにしても、今日は随分と早く出るのね」

「『随分と』って……いつもと二十分しか変わらないよ。お母さん」

「……あっ! 分かった! 燐斗君をお迎えに行くのでしょう?」

「……うん」

「ふふ、そんなに恥ずかしがらなくていいじゃないの。昔から仲が良いのですから分かりますよ。……ほんっとうに(はる)ちゃんは燐斗君の事が」

 わぁーっ! わぁーっ!

「もー! そんな事一々言わなくていいよ! じゃあ、行ってきます!」

「あっ! 陽ちゃんちょっと待っていて!」

「今度は何……あ、行っちゃった」

 ……お母さん、ずっと女の子みたいだなぁ。同い年みたい。

 ……燐斗、驚くかなぁ。でも、今度燐斗の家に行くって言ったもんねー!

 ……あ、戻ってきた。

「……陽ちゃん! はい、これ!」

「……お菓子? こんなに沢山?」

「そうよ。……ほら、昨日の夜に御祖母様(おばあさま)が御旅行から帰っていらしたじゃない? 燐斗君にお土産ですって」

「燐斗、御祖母様のお気に入りだもんね……」

 日本舞踊をあんなに頑張ってようやく認めていただいた私と同じくらい可愛がられているし。

「ふふ、御祖母様ったら、陽ちゃんと燐斗君が結婚すればいいのにっていつも言っていらっしゃるのよ?」

 ……もーっ!

「行ってきます!」

「はーい、行ってらっしゃい! ……あ、またたまにはウチに遊びに来るように燐斗君に言っておいて! 御祖母様もきっと喜ぶわ」

「分かったぁ!」

 ……燐斗がウチの婿に、かぁ。

 きっとそうなるんだろうって、思ってた。お父様も、お母さんも、御祖母さまも、皆、燐斗の事を可愛がっているし、私も、その……好きだし。

 ……あの二人が。

 あの二人がいなかったら、ずっとそう思っていたんだろうなぁ。……あの二人がいなかったら。

 ……やめやめ! こんな事考えていてもしょうがないよ! いつか燐斗が言ってた『ヤンデレ』みたいじゃない!

「……ふぅ」

 緊張する。……何でだろう、この間までは何も思わなかったのに。

「…………」

『はーい』

 ……燐斗だ。

「……私だけど」

『……迎えに来てくれたのか。ちょっと早いような気もするけど、今開けるよ』

 驚かなかった。……まあ、こんな時間に呼び鈴が鳴ることって殆どないもんね。

「おはよう、ハル」

「……なんで頭だけ出してるの?」

「出来れば聞かないでほしいんだけど、それ……」

 ……もしかして、見られたくないものが中にある?

「それじゃ、御邪魔しまーっす!」

「へ!? ちょっ!」

 ふふ、焦ってる焦ってる。……あ、そうだ。

「はい、これ! 御祖母様からのお土産!」

「……え、あ、うん」

 ……よし! 侵入成功! ……? あれ? 今、後ろからも『よしっ』って声が聞こえてきた気が……

 ううん、今は気にしちゃダメ!

「まずはリビング! ……あ」

「あ、初めましてー。ルナですよー」

 ……綺麗。

 遠くから見ていた時だって、綺麗で可愛い子だと思っていたけど、正直、私が思っていた『綺麗』を軽々と超えてる。

「あ、う、うん、初めまして。私は倉科(くらしな) (はる)……です」

 近くで見ると、この子のオーラ、凄い……!

「ほほう、これはこれは。……よろしくです! 握手しましょう! 握手!」

 お、思っていたよりも人懐っこいというか、何というか……

「俺、トイレに行ってくる。ちょっと待っていてくれハル。……ルナ、一定の距離感を保ってくれよ」

「むー! 分かってますよー!」

 何でルナちゃんにそんな事言うんだろう? ……も、もしかして! 『ユリーカ』ではああ言っていたけど、本当は私とルナちゃんが友達になるのが嫌だ、とか?

「ね、ねえ、燐斗……」

「……えーっと、ハル」

 ……へ!? り、り、燐斗! 顔が近いってば!

「……黙っていたけど、ルナは女性に対しての肌の触れ合いが激しいから気をつけた方がいいぞ」

「……え」

 えええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ