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夜が明ける(ホワイトクリスマス)

作者: 来内 直三

内容はあまり無いですが心が少しだけあったかくなってくれたらなと思い書いてみました。

曇る空…。にぎやかな街…。光が煌びやかに輝くための深く暗い夜。

『クリスマスなんて…なんであるの?』と彼女は言う。

『キリストの誕生日だろ?』と笑いながら彼が言う。

『私は…』と目を落とし言いかけてやめる彼女。

『なんだっていいじゃん!とりあえず乾杯』と彼はグラスを手に持ち、彼女の前に出す。

斜め前の家族がシャンパンを開ける様を、見ながら無言でグラスを合わせる。周りの騒めきにかき消されながら小さくキンと音をたてる。彼女は何に乾杯するのかを考えながら…。理屈ぽい自分を責めながら…。

彼は一生懸命に話、ふざけた仕草で彼女を楽しませる

彼女も一生懸命に道化の観客になる。

道化と観客…互いにまだ名前も知らない。

一時間前。

あてなく街を歩く彼女。目的はあった。人には言えない…。一人であることが辛くなくなるであろう方法。それが彼女の願いであり悩みだった。

そこに彼が現れた。彼女の深い闇を知るはずのない彼がツリーの下に座っている彼女に、陽気にやさしく声をかける。

『お一人ですか?』

『ずっと一人です』と冷たく言う

『本当に?よかったら食事にいきませんか?予約してたんだけど、今ふられた。』と、彼がやさしく笑いかける。

横目で隣のカップルを見ながら小さい声で『いいよ』と彼女。彼は『やった』と笑いながら暖かい手を差し出す。『だだ、名前は聞かないで私も聞かないから』と差し出された手を無視して立ち上がりながら彼女は言う。深く考えずに彼は『構わないよ』と、そして今は道化で彼女は観客。

観客の心は、一人夜の海辺を歩く。気が付くと自分はいつから一人でいつまで暗い夜を過ごすのかと、答えを探す。海を見るとその場から動けなくなるほどの闇が広がる。やがて観客は震えながらその場にしゃがみこむ…。そんな彼女の心の内を見ていた二人。『君の力が必要だよ』心地よい声で男が言う。『わたしは、力になれないよ。まだこんなに小さいもの』ふてくされなが少女が答える。

男は観客と道化を見ながら『そんなことは関係ないさ。君は彼女なんだから。今は忘れているだけで、きっと今日は、思い出すさ』

少女は無言で歩きだす。一人暗い海を自分の元へ。  

彼がもどるとテーブルには、誰もいない。

『おつれさまは、さきほどでていかれました。』なんの感情も感じさせずにウェルターが言う。彼は席にもどる…彼のもとめていない観客が増える…。

彼女はどれくらい街を歩いたのだろう。どこをどう歩いてきたのか覚えていない。自分の事もよく思い出せないでいた。

それほど高くないビルの上で一人たたずむ…

ビルの上からは色々なものが目に入る。友達同士がはしゃぐ姿…恋人同士がお互いを必要とする仕草…家族が結ばれている理由…。

『私には何もない…』声に出さずに言う彼女。

まだ暗い海に一人。少しづつ、彼女に少女は近づいていく…

『はぁ…はぁ…』街中を走り回る彼がいた。慣れない革靴での足の痛みも感じないほどに捜し回る。人にぶつかり舌打ちされながら辺りの光が色とりどりの線になるほどに自分の目的以外目に入らない。

『さぁ こっちだ』男が急かさずに彼に言う。その声が彼に届いてるのかはわからない。彼はまた走りだす。満足そうに彼の後ろ姿を見守る男。

少女が彼女の小さな心を抱き締める。あふれ出る気持ち。少女に『もう遅いの』と彼女は目から出る感情を目にためて言う。困る少女。なつかしく楽しかった小さい思い出を少女は彼女に届けた。海辺の彼女の震えはとまらない…。

彼女の目に彼が映る。『あっ…』彼が何をしてるのかしばらくわからない。彼女の感情が目から溢れだす。なんで探してるの?なんで名前も知らない会ったばっかりの私をそんなに一生懸命に探すの?

少女が横で微笑んでいる。『……』声も出ない彼。冷たい空気が肺を刺すように痛い。口のなかは鉄の味がする。彼女を見つける事以外は全てが他人事のようだった。何がそこまでさせるのか彼は考え立ち止まる。

『お一人ですか?』彼の後ろから尋ねる彼女。曇る夜の空を見上げたまま彼が『たぶん二人です。ずっと』

男がやさしく笑う。彼女と少女が海辺で笑う。暗く深い夜が明け始める…足の痛みを感じながら『今後の為にせめて名前を教えてくれないかな?探すのが大変だよ』

海辺に明るい雪が降る…

今、私自身色々なひとに支えられています。たぶんあなたも。

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