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第27話「ノーボーダー!!」

 そして、次の日。


  グォォン!

   グォォオオン!!


 朝焼けの空にチハたんの排煙が立ち上り、

 ディーゼルから上る陽炎が、赤い陽を幻想的に歪ませるほどよく晴れた日のことだった──。


「はーい、みんな集合集合ー」


 暖機運転するチハたんを背景に、

 周囲に集まったのは、私の他、複数の人影。


 いつもの『赤い旋風』の面々は当然として、ひとり綺麗な目をした子供が加わって計6名だ。


 言わずと知れた、私と愉快な仲間たちであーる!


「ながせ~」

「おー、よしよし。良く寝れたかなー」


 スパ銭の館内着の代わりに、ガソスタにあった私のツナギを着せてやるとぴったりのサイズの少女がムギューと抱き着いて来た。


 なので、ぎゅー! と抱き着いてくる子供たちを抱きしめ返す。


 かわいーし、

 んー……いい匂い!


 ちょうど、洗濯と乾燥のミスで縮んでしまって捨てようと思っていたツナギだけど、使う機会があってよかったー。


「おぉ! いつの間にそんなに仲良くなったんだい?」

「そりゃ昨日のうちにたっぷり食べさせて、思う存分遊ばせましたからねー!」


 具体的には、スーパー銭湯で!

 育ち下がりの子供は、食って遊んで、よく寝るべし!!


「あぁー、そう言えばずっとゲームコーナーにいたな」

「その子、パンチングマシーンですげぇ数字だしてたぞ」


 昨日、パンチングマシーン対決でボロ負けした双子が遠い目をしている。

 この子は、こうみえて超怪力なのだー! さすが魔族ぅ。


「そういえば、反射神経もすごかったですねぇ」


 ミルヒ君も遠い目。

 たしか、ワニが一杯でてくるあれでボロ負けしてたね。


「……つーか、アンタたちも目いっぱい楽しんでんじゃねーか!」

「「「そりゃもう!」」」


 うんうんと頷く、ドミトリさんの男たち。


 男はみんなゲームが大好き。そして、ちっさい子も好きー……ってそれはマズイぞぉ、君たちぃ。


「はぁ……。ナガセと出会って以来、コイツ等どんどんダメになっていくねー」

「いいじゃないですか。子どもに優しくて好感が持てましたよ」


 双子の株がちょっぴりアップだぜー。


「へへっ。だろ? ナガセは母ちゃんにするにしては、ちょっと凹凸が少なすぎるけどな」

「そーそー。風呂上がりも裸で歩きまわるのはやめた方がいいぜ────って、あいだぁっぁああ!」


 うん。

 株価下落だ。


 裸で歩いていたとしたら、それは間違いなく女湯の中だっつーの!!


「す、すみません。ちょっと目を放すとすぐに……」

「いいよ、ミルヒ君の責任じゃないし」


 こん棒の錆びにするくらいどうってことないしね。


「あぁ、ウチの男どもがー」

「まぁまぁ。ゆーて、ドミトリさんもずっと漫画コーナーにいましたよね?」


 なんか、ちょっと古い少女漫画を山積みにして一心不乱に呼んでいた。

 館内着がちょっいと(はだ)けつつ読みふけるその姿は、まさに休日のOLといった風格でしたよー。


「うぐ……。い、一冊のつもりだったんだよ」

「ふふっ。皆そういうんです」


 そして、日本の漫画にのめりこんでいくのだー!

 まさに沼のごとくね。


「ま、それはそれとして──」

 少女を抱き上げ、ドミトリさんたちがよく見えるように前にする。

「ほーら。昨日遊んでもらったと思うけど、この人たちが調査に参加する冒険者さん。そのあとで、首都まで一緒まで行くんだよ」

「冒険者ー?」


 うんうん。

 冒険するから、冒険者。


 右の色々デッカイ人から──えっと、


「ドミトリだよ」

「エルだ」「アールだ」

「ミルヒです。よろしくね」


 うむ。

 君たち、子供にもちゃんと挨拶できて偉いぞー。


「よしよし。あと、この人たちは呼び捨てでいいからねー」

「はーい」


 うんうん、可愛い可愛い──。

 ちょっとアホっぽい雰囲気があるけど、子供は素直が一番。


「あと、知ってると思うけど、私は長瀬。長瀬あかりだよ!」


 ガソスタ系女子!

 愛車はチハたーん(九七式中戦車)♪ いえーい!


「けけっ。ナガセは怒らせると、一番怖ぇ──おごふっ!」

「黙っとけ、双子ぉ」


 いらん事を言った双子の脇にエルボー。


「い、今言ったのは俺じゃねーよ……」

「あれ、そうだっけ?」


 めんごめんご。

 顔似てるからつい。


「ほーら、怖──おごふっ」

「……今のはあってる?」

「あ、あってるけど同じ場所を二回やらんでも──」


 いらんこと言うからだよ。


「──ってな感じで、私を含めて、このおっかない大人の4人がドミトリさんと愉快な仲間たちだよー」


 よろしくねー。

 そういって頭をなでるとにぱー♪ と綺麗な笑顔を浮かべてくれた。


 やーん。

 超かわいい。


「いやさ。もうちょっとまともに紹介しとくれよ……。あと、おっかないのはどっちかって言うと、アタシもアンタだと思うけどねぇ……まぁいいか」


 ガシガシ頭を掻くドミトリさんが苦笑い。

 ええやん、そんな長い付き合いちゃうやろし。


「ちなみに、その子の名は?」

「あー、なんか発音できなくて……」


 オマケに身分を証明するものがなにもなく、オークに捕らわれていた前後もよくわからないそうだ。


 まぁ、小さい子だしねー……。

 しょうがない、しょうがない。


 とりあえず、すっごい長い名前だったのは分かった!

「──えっと、最初の『ルールシュカなんとか……』以外聞き取れなかったので、「ルル」と呼ぶことにしました」


 外国語の発音ムズいわー。


「ルルか、分かった。……ところで移動はどーすんだい? 人が増えたし、期間のわからない調査ともなれば荷物も増える。チハたんも限界だと思うけど──」

「あーそれならこれです!」


 じゃん!


 昨日のうちに買っといて、チハたんの改造オプション~!



  ブーン……。



 ◇ ◇ ◇


スキル:【せんしゃ】

能 力:任意の場所に召喚可能。

    世界中のありとあらゆる『せんしゃ』(※)が選択できる。


戦 車:九七式中戦車


   『改造オプション』

    追加装甲Lv1: 5ポイント

    補助装甲(シュルツェン)Lv1: 5ポイント

    増槽50L  : 5ポイント

    土嚢     : 2ポイント

    鉄条網    : 3ポイント

    対空機関銃  : 購入済み

    煙幕発射器  :15ポイント

    排土板(ドーザーブレード)   : 3ポイント

    拳銃穴(ピストルポート)    : 2ポイント

    新型砲塔Lv1:50ポイント

    暗視装置   :15ポイント

    アンテナ強化 :10ポイント

    牽引トレーラー: 購入済み ← これだよ♪

    

備 考:(※)表記はカタログあり。


 ◇ ◇ ◇


 はい、ドーーーン!


「昨日のウチに買っときましたー!」


 すでにチハたんに接続済みでーす。


「お。おぉー?」

「こ、これは!」「なんと!」


 皆が目を丸くしてみているのは、チハたんの後ろにくっついた、貨物(・・)運搬も可能な、

 大型装甲トレーラーの『SS器用被牽引車』であーる。


「みんなにはこれに乗ってもらいまーす♪」


 ようするに、戦車で引っ張る車です。


 ちなみにお値段、30ポイント。やっすーい!

 もともと、チハたんと同系列の工兵用機材、九八式大作業機(通称:SS器)が牽引するやつなんだって。……そう説明に書いてた!


「な、なんていうか、これまた雑だねー」


 それは言うなし。


 まぁ、履帯がついただけの箱型荷台って代物なので乗り心地はお察しだ。

 当然、資材運搬が主なので、座席なんてあるわけもない。


「え、ええー、これに乗るのかよ」「ケツが割れそうだ」


 もともと割れてるよ。


「子供はあっちですか?」

「そりゃそうだよ。危ないからトレーラーになんか乗せらんないよ」


「ぼ、僕らはいいんですか……」


 うん。

 大人なら我慢しぃ!


「あ、小柄だし、ミルヒ君なら乗ってもいいけど──」

「え?」


 ミルヒ君ならチハたんにはぴったり。

 小さいし乗れる乗れる。


 信用問題以前に、チハたんは狭いのだ。

 ドミトリさんなんか絶対入らない。


「い、いや、いいです。遠慮しときますよ?」

「そう?」

 まぁ気が変わったらいつでも乗ってもらうとして──。


「そんじゃ、準備はできたし、早速出発しようと思うけど、もう一回だけ確認していい?」


 ──たしか、送るだけ(・・・・)だよね?


「あ、あぁ! 今回こそ、純粋な輸送任務だよ。ナガセはアタシらを乗せて、オークの進撃ルートをさかのぼり、奴等が大移動した原因を探る。あとはその報告をまとめて首都の冒険者ギルドまでもっていくだけ。……それで報酬は金貨10枚と安いけど、その分、ギルドの査定がいい」


 査定はどうでもいいや。

 それより、ウチのルルちゃんの口利きのほうを頼んまっせ、げっへっへ。


「ん。調査地までの移動と、調査後の送迎だね? 了解了解」


 どこにも戦闘の二文字はないね。

 よしよし。


「そうなるね。──で、諸々・色々な証言から、元のオークの生息地は首都近くの大森林だと想定されれるから、とりあえずそこが最初の目標かな? そこ経由で首都まで頼むよ」

「おっけい」


 道もそこまで険しくないし、いけるね。

 距離的には、チハたんで2、3日かなー?


「送るだけで、報酬かー。しかも、最終目的地は首都。……めっちゃラッキーかも!」


 今の私にはちょうどいいと言えるね。


「ラッキーって、アンタ……。指名依頼の調査だし、なにがあるかわかんないよ? 相変わらず楽観的なのはいいけど、調査中にだって、魔物か事故で全滅するかもしれないし──」

「それはドミトリさんを信用するってことで」

「う、うーん。信用してもらえるのは光栄だけど、諸々(もろもろ)フラグにしか聞こえないねー」

「まっさかー。そんなしょちゅうピンチになんてなんないですよ」


 皆はAランクだし、よゆーよゆー。


「い、いやー。俺らってすでに遭難経験あるしな」「オークジェネラルにも遭遇するし」


 たまたま、たまたま!


「そして、結局ナガセさんが解決してるんですよねー」


 それは知らない。


「私、Cランクですから」


 ふふん!

 所詮は中堅どころなのであーる。


「いや、実力は多分S」

「むしろ、最強だよな」「勇者──いや、覇王とかじゃねーの?」


 こら、そこの双子うるさい。


「まぁまぁ。まずは調査を始めましょう。細かいところについては、道中にやり方をつめていけばいいでしょう」

「そうそう! ミルヒ君はわかってるねー」


 と、言うわけでー。


「──総員乗車ぁぁあ!」

 ビシィ!

「「「「お、おおー!」」」」


 いきなりの指さし確認に、拳をあげたドミトリさんと愉快な仲間たちは応じると、トレーラーに乗り込んでいくー。


 よくわかってないルルちゃんは、私が抱えてチハたんに載せたげる。


「前の席あいてるから、ここ座って」

「はーい♪」


 ちっこいルルは、前がよく見えるように前方機銃手席に座らせた。

 上部のハッチを開けておくと風通しもいいだろうしねー。


「あ、だけどその辺の機械は触らないでねー。どうしても気になるならあとで教えたげるから」

「こくり!」


 うんうん。

 素直でよろしい!


 子供は好奇心のかたまりだからね。下手に禁止するより教えてあげるのが大事。

 そもそも、魔物もいる異世界だし、ちゃんと自分の身は守れるようにチハたんのことは存分に教えてあげよう。


 というわけで──。


 ──しゅっぱーつ(でっぱーつ)!!


「戦車前へ!!」

  「まええー」


 私が前方を指さすと、

 ルルちゃんも一緒になって指さしてくれたー。かーわいいの!


 よーし、行くぞー。


 オークどもの痕跡を追うだけの、簡単なクエスト。


 そんで、調査後は首都に届けるだけおの、簡単な輸送任務。


 そして、

「諸々をひっくるめて、お得な調査だー」



 グォン!!

  キュロキュロキュロ!!



 ……こうして、私たち一行はサンズベルト近郊の古い城塞を離れ、

 たくさんの人に見送られながら出発したのであーーーーる!




※ ※ ※ ※ ※



 ……で、三日後──。




  ギェェェエエエエエエエエン!!

   ギェェェエエエエエエエエエエエン!!



「いやいや、ギェーーンって、あーた(アンタ)……」


 唖然とする私たち一行。

 なんと、目指した森の空き地に陣取っていたのは、真っ赤な肌の巨大なドラゴーーーーーーン!



「って、ちょっとぉぉおおおお!!!」


 か、簡単な調査じゃなかったのー?!

 なにあれ?



「ドラゴンじゃん!!!」



 どうやら、私は超絶ありきたりなフラグを踏んでしまったらしい。

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