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皇子の嫁取り神事とその結果について  作者: みのすけ


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一の姫の回想

あらあら、第二皇子が三の姫を選んでしまいましたわ。面白い具合に、筋書き通りですわね。


さすがあの人だわ。軍戯は僅差で私が勝つけれど、それは所詮盤上でのこと。現実の物事を遊戯の様に楽しめるなんて、底知れぬ才能が空恐ろしいほど。


先ほどの軍戯勝負だって、私ではなくあの人が第一皇子おうじさまと対戦したらどうなっていたかしら?あ、型破りな手で皇子が瞬殺されたかもしれないわね。



あらあら、三の姫も嬉しそう。喜びで語尾が上がっているわ。まあ淑女らしくないけれども大目にみましょう。

今まで思う様に動けなかったものね。黙って座っているか、立っているか、淑女の振りするのもそろそろ限界だったでしょう。それも織り込み済みで筋書きを作っているのだから、あの人はどこまで見通しているのやら。


まあ、私は筋書きに従って進めるだけだもの。今は神事を進行する役目を果たすのみ。こんな舞台は一生に一度あるかないか、存分に楽しまないと。



「それでは武闘場にご案内致します」



私は第二皇子と三の姫に誓約書を記入させ、場所を移すために部屋を出る。私の後に三の姫、第二皇子が続く。


第三皇子が第一皇子を介抱して連れてくるようね。そして二の姫は、その様子をじっと見ている。

ふふ、そちらは任せて、私は私の役目を果たしましょう。


「この先が武闘場です。縦横半里(一里の半分)の石舞台で、水に落ちれば場外となります」


私は池の中に浮かぶ石舞台を手で指す。

これは五年前に東家の敷地内に作られた石の舞台で、神前試合の武闘場として使われている。


「こちらで武具をお選び下さい。準備が整った者から、闘場へお入りを。」


さて、三の姫の髪が邪魔にならない様に整えてあげないと。輝く薄桃色の、柔らかな髪をお団子に結う。ふふ、可愛らしいわ。私が桃色の羽織りと薄桃色のヴェールを預かって、準備完了ね。


あら、第二皇子の目が釘付けになっているわね。三の姫の姿に見惚れているのかしら?華やかで目を惹く容姿に加えて、武術用に誂えた衣装が美脚を強調しているのよね。素肌は隠してあるし見せるためではないけれど、動きやすくするためには仕方ないのかしら。


「不躾な姿勢が鬱陶しいのですが♪」


あら、とうとう三の姫がイライラし始めちゃったわ。嫌らしい目を向けた第二皇子やからに手心なんて加える必要はなくてよ。思う存分にストレス発散していらっしゃい。


そう、ストレス……この半年はストレス続きだったわ。

淑女になるべく立ち居振る舞いを叩き込まれ、身体を磨かれた。日に焼けないように室内で過ごし、手足を労るように稽古は最低限。肌が見えるところに傷はつけられないから、身体を動かし足りなくて筋力が落ちたみたいね。


先ほどの扇での一撃は、思ったよりも飛ばなかったわ。扇に鉄板を入れていたから折れなかったけれど、剣を持つ時には心しておかないといけないわね。まあ、覚悟してはいたけれども。


武芸の鍛錬を控えた分、皆で軍戯勝負は楽しかったけれど、正直ここまで外見を取り繕う必要があったのかしら?

都では私達が美しいとか淑やかだとか言われているそうだけれども、噂に踊らされるなんて自分が愚かだと証明しているようなものでしょう?


「愚か者の実物を間近で見られるよ」とあの人は言っていたけれど、だからといって衣装も凝り過ぎでしょう?神事のために領内の技術を結集した特別な誂えに、私も驚いたわ。領地の振興の一環なのはわかるけれど、一体いつから計画していたのかしら?


私の着物は白地に銀の百合が刺繍がされた逸品で、輝くばかりの精巧さに惚れ惚れするわ。けれども……白は汚したら目立つのよねぇ。領内のお披露目式までは汚さないように気を付けないと。「雪」として最後のお披露目になる予定なのだから。


私は今代の東家一の姫、ゆき。雪は仮名で本名は別にある。本当の姓は雪代ゆきしろといい、代々「雪」が選ばれる東領の名家の出だ。


今代の二の姫は龍泉の近くの里の出身、三の姫は東領一の商家の娘。そう、私達は本当の姉妹ではない。

この神事のためだけに集められた未婚の娘たち。神事のために義姉妹の契りを交わし、東家と養子縁組をしてこの場にいる。


この神事には東家の姫が3人参加するが、数代前から領地の娘が選ばれて姫役になっている。一の姫は雪という仮名を名乗り、私の伯母は先代の「雪」だった。


東家に生まれた娘は代々領民に嫁いでいるため、領民には東家の血が少なからず流れている。我が家も東本家の姫が降嫁されたことから東家の血筋が入り、神事で度々雪姫役を輩出することから「雪代」という姓を賜った。


皇室が欲しいのは龍神の加護、もちろん領民も龍神に愛されているので姫として嫁いでも加護は得られる。だから形式だけ東家の姫として調えている。


ただし勝負に負けたら実際に嫁ぐことになるのだから、貴族の姫らしく振る舞えるように教育される。それが東家の養子に入ってから昨日までの半年間だった。

約一年前に神事を行う旨の勅令が下され、私が「雪」に選ばれてからは準備を含めてあっという間だった。自分の中の覚悟も含めて、迎え打つ用意は整った。その結果は、なんだか呆気ないものだったけれど。


先程の軍戯勝負、第一皇子の筋は悪くなかった。彼と手合わせして感じたのは、定石通りの手筋が得意なタイプだということ。真摯に努力してきたのがうかがえるし、自分に自信を持っているのが一手一手に現れていた。


一方で、定石から外れた手に対する対応が遅い。おそらく経験が足りない……あくまで私の予想だが、彼は失敗したことがあまりないのだろう。だから自分を過信して判断が甘い。対応が遅い。劣勢になって畳み掛ければ、挽回が出来ないまま諦める。


周囲に諫める者がいれば良いが……この年までチヤホヤされた皇子ボクちゃんのままだったのならば、周りは単なる取り巻きだろう。


皇子ボクちゃん私達ひめの決定的な違いは、覚悟の差。

次の勝負ではそれがよく分かるでしょうね。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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よろしくお願いします^_^

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