Épisode1-8
メテオール王国に来てから1か月が経ったある日。
「ルリ!行くぞ!!」
「はーい。」
ダルマンさんが休日に狩りに行くと話していたので、ついていく事になった。
魔法で弦を作るところを見てみたかったからちょうどよかった。一番気になっていた事だったもの。
「今日は何を捕まえるんですか?」
「うむ、今日の狙いは、鹿だ。ルリが私を助けてくれたところあたりで、狩りをする予定だ。」
「そうなんですね!」
「では、目的地に着くまで狩りのポイントを話しておこう。
まずは、鹿がいそうな場所を把握すること、耳を澄ませて鹿が動く音をキャッチすること。
そして一番大切なのは、気づかれないように歩くことだ。早足は厳禁だ。」
いきなりそんなに言われても、頭が追いつかないよ……あははは。
楽しそうなダルマンを見ていると、急にダルマンが止まった。
「………お?鹿がいたぞ!」
ダルマンが指をさした方を見ると小さめの鹿が立っていた。
「………ダルマンさん。あの鹿なんか動きが変じゃないですか?」
すると突然、鹿が瑠莉とダルマンめがけて走ってきた。
「わ!?」
瑠莉は驚き尻もちをついてしまった。
「まさか……」
ダルマンは何かに気づいた様子だった。
………ズキン。
「ルリ!逃げろ!!」
とダルマンが声を張り上げた。
瑠莉は頭痛がして逃げだすのが遅れてしまったがどうにか、ダルマンの後ろを走りついていった。
2人の後ろには黒いもやをまとっていて、目が赤いナニカが迫ってきている。どんな動物なのかは全く分からない。
………
………ズキン。
「う……いたっ。」
瑠莉は突然の頭痛に襲われて走るペースが落ちてきてしまった。
それに気づいたダルマンは、足止めをしようとした。
「ルリ!!先に行きなさい!」
そう言ったと同時にダルマンは突き飛ばされてしまった。
「ダルマンさん!?ダルマンさん!」
直ぐに駆け寄り声を掛けるが気絶をしていて反応がない。
葉や枝を踏む音が聞こえてきた。瑠莉が振り返ると黒いナニカは目と鼻の先に迫ってきている。
どうしよう………早く逃げなきゃ……でもダルマンさんを置いてはいけない……
悩んでいると、息を感じるほどに近づいていた。
「…………いやぁ!!来ないで!来ないで!!」
瑠莉は混乱していて、手で追い払おうとして黒いナニカに触れてしまった。
その瞬間、手元が輝き白い光りが現れその光が黒いナニカを覆った。
―――――――〈ダルマンside〉――――――――
お?ここは………?
ダルマンが目を覚まし起き上がると瑠莉の笑い声が聞こえてきた。
「くっくすぐったい。ちょっ、あはははは!」
「ルリ大丈夫か!?」
「ダルマンさん!気が付いたんですね。私は大丈夫ですよ!」
「あぁ、ところで魔物はどこに行った?」
「魔物?」
「さっきの黒いやつが魔物と呼ばれているものだ。」
「あー!それなら、ここに居ますよ?」
瑠莉は傍で遊んでいた鹿をなでながらそういった。
は?ルリは恐怖でおかしくなったのか?
「ルリの話していることがよくわからないのだが………どういうことだか説明をしてもらってもいいか?」
「え?あ、はい。私もよくわからないのですが………………――――――――――――――――」
瑠莉はダルマンが気絶をしてからの事を話してくれた。
それを聞いたダルマンは
まさか………そんなことがあるのか!?
ダルマンの顔色をみて瑠莉が声を掛けた。
「ダルマンさん?早く帰って休んだ方がいいのではないですか?」
「君は……いったい?」
「?……松本瑠莉ですけど?」
「あ……あぁ、そうだな。」
そう言うと、今日の狩りはやめて家に帰ることにした。
これで確信した。ルリは、回復の魔法以外に何らかの力が使える………