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Épisode2-7(1)


――Part 1――


神殿での儀式から数日が経った。


屋敷に戻った私は、“共鳴”と“力”のことが頭から離れずにいた。あの瞬間、自分の中に確かに何かが宿った。けれど、それが何なのか分からない。ただ、誰かを救えるかもしれないという確信と、同時にそれを抱くことへの不安だけが、胸の奥で静かに揺れていた。


そんなある朝、ダルマンさんが神妙な表情で私を呼んだ。


「ルリ、王宮から正式な謁見の要請があった。……明朝、第一謁見の間にて、陛下が君に会いたいと」


その言葉に、空気が凍りついたような気がした。


「……私、本当に行くんですか?」


「これは儀礼ではない。国王陛下が“君という存在”を認識し、直接会いたいと望んだ。慎重に言葉を選んでくれれば、それでいい」


私は黙ってうなずいた。


 


翌日――


メテオール王国の王宮は、まばゆいほどの白大理石に包まれた壮麗な空間だった。高くそびえる柱と金細工の天井、広がる赤絨毯の先に、玉座があった。


そこに座っていたのは、ノルマンディ・グロブナーダ・メテオール国王。銀灰色の髪に深い紺の王衣をまとった、威厳と静けさを兼ね備えた人物だった。


「ようこそ、ルリ・ベリー・コスター嬢。遠い地から来てくれたことに、感謝する」


「……は、はい」


「緊張しなくてよい。君に問いたいことがある。……“浄化”の力。それは君自身の意思によって生じたものだったのか?」


「……はい。怖かった。でも、誰かを助けたいと思ったら……自然に、勝手に手が動いて……」


「そうか。それで十分だ」


国王は微かに目を細めた。


「君の力は、この国の未来に深く関わるものになる。だがそれは、恐れるべきものではない。むしろ、君がどう扱うかが大切だ。……君は、その力をどうしたいと願っている?」


私は迷わず言った。


「人を……助けたいです。たとえどんなに怖くても」


「よい返答だ。……国として、君の意思を尊重しよう」


王は続けた。


「近く“神託の儀”が神殿にて執り行われる。君には、その場で“力の真実”と向き合ってもらうことになるだろう」


 


謁見が終わり、王宮を後にしようとしたときだった。


「これはこれは……君が“聖印の少女”か」


男の声が響いた。


現れたのは、灰色の髪と鋭い眼差しを持つ男。魔導省の次官、クライヴ・ヴァレール。


「初めまして、ルリ・ベリー・コスター嬢。私はクライヴ。君の力に……深い関心を持っている」


「……」


「安心してくれ。私は敵ではない。ただ、君の未来を正しく導く術を知っているとだけ言っておこう」


その目は、まるで品定めをするように、冷たかった。


ミーテルが一歩前に出た。


「ルリちゃん、この人に関わっちゃダメよ。言葉は丁寧でも、裏にあるのは――支配と実験だけ」


「……ありがとう、ミーテルさん」


私はクライヴを真っすぐに見返した。


「あなたに頼るつもりはありません」


クライヴの唇がわずかに動いたが、それ以上何も言わず、彼は去っていった。


(“力の真実”……神殿で、私は何を知るんだろう)


胸の奥に広がる緊張と、わずかな覚悟。


次の日、私はイーライさんと共に、再び神殿の扉をくぐることになった――。

kasumisou

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