Épisode2-4
湖に向かって歩いている途中。
「そういえば、湖について話したかしら?」
「いえ!着いたら教えてくれるとの事でした。」
「まぁ、大した話ではないのだけれどね。今から行く湖は”シエル“と言う名を付けられたメテオールで1番大きい湖なの。
私の領地にあるから他の領地の方は許可がないと来られないのだけれどね。」
「へー!凄いですね!」
「シエルは空っていう意味なの。ひいおじい様が付けたのよ。見たらその意味が分かるはずよ。」
「着いたぞ。」
イーライの言葉を聞いて彼の隣に立つと……
2つの空がそこにあった。湖には波が全くなく空が水面に綺麗に映っていて、草木も一切揺れていない。湖が広大なのもあいまって、まるで別世界に降り立ったように感じた。
水面が自分の立っている地面よりも低いのもあってか、湖を眺めているとまるで空より上に立っている気分になる。
「うわぁ……」
そんな絶景に瑠莉が立ち尽くしていると、ミーテルは悪戯が成功したような笑みで瑠莉の隣に立った。
「どう?綺麗でしょ。」
ミーテルに話しかけられて気が付いた瑠莉はミーテルに向かって弾けるような笑顔で
「わぁ!空の上にいるみたいでとっても綺麗ですね。」
「気に入ってもらえたかしら?」
「はい!」
「いつ来てもここは美しい……」
「イーライさん来たことあるんですか?」
「あぁ、小さいころに何度かな。」
「良いですね。………そういえば、ここは風が全く来ないですね。どうしてなのでしょう?」
「それはね、100年くらい前に私のひいおじい様が偶然この状態の湖を見つけて感動していたの。風が吹くとその光景が壊れるのを見たひいおじい様が風を範囲内に発生させない結界を張って景観をいつでも見られるようにしたのよ。それ以降は、私の代まで手入れを欠かさずに行ってきたわ。」
「ベンチとかも置いてないんですね。」
「そういう、人工物はおじい様の代で景観をそこねると判断されて計画を中止したのよ。それ以降ここでは、王族が来るとしてもベンチ等は置かないようにと言われているわ。」
「それは、大丈夫なんでしょうか?」
「流石に当時は批判されていたようだが、実際に王族がこの絶景を見てそれに納得したことで批判はなくなったらしい。」
「まっ、そういう事よ。」
「へぇー」
ミーテルが湖を色々なものから解き放たれたような顔で湖を眺めていた。
「ここに来ると心が落ち着くのよね。1カ月に1回は来ているわ。」
確かに!ずっと見ていたい。ミーテルさんが通いたくなる理由がわかる気がする。瑠莉はそう思いながら湖を眺めていた。
ミーテルとイーライは瑠莉の魔法に関する疑問を話していた。
「ねぇ、イーライあなたはルリちゃんの扱う魔法について何か聞いた?」
「いや、特に聞いてはいないがどうかしたのか?」
「実は少し前にダルマン様の庭園でルリちゃんが回復魔法と言って見せてくれたのだけれど。」
「なんだ?しおれた植物でも治したのか。」
「いいえ、違うわ。どうゆうわけか辺り一帯が光り始めたのよ。」
「え、強力な回復魔法を使ったんじゃないか?確か見たことはないが、回復魔法は強ければ強いほど光が強くなると聞いたことがある。」
「確かに、そうなんだけれど……あれは多分そう言うのじゃない気がするの。私は何回か回復魔法を見たことがあるのよ、その時は必ず手元が光るはずなのにルリちゃんの場合周りが光り始めたのよ。」
「なんだって?そんなことが。」
「だから、あなたのお父様から何か聞いていないか質問したのよ。」
「特に聞かされてはいないが、おそらくダルマン様を尋ねる事になったのはそれが理由かもしれないな」
「次期当主であるあなたが聞かされていないなんて、ルリちゃんの魔法は隠すほどのものなのかしら?」
「聞かせてもらえるとは思えないが、一応帰ったら父上に尋ねてみる。」
「えぇ、お願い。」
瑠莉はジッと湖を観察していた。瑠莉が湖に近づくと異変に気が付いた。
「え?」
湖に向かって波が起きている。それに気づくと同時に、足元から強い揺れを感じた。
「ミ、ミーテルさん この揺れはいったい?」
瑠莉に言われて気が付いたミーテルとイーライは周囲を警戒し始めた。
振動が段々強くなってくると同時に
「うっっうぁっ いたっ。」
瑠莉は今までに感じた事のない強い頭痛に襲われた。
「「ルリちゃん!?」」
ミーテルが瑠莉に駆け寄ると同時に振動だけでなく、何かが近づいてくる音が聞こえた。
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