鋼鉄のフェスティバル(後篇)-13
ガルダルフ:「おいおい、それはちょっとないんじゃないかダンナ?」
制止する様に通信先にいるイヴリースにガルダルフは少し不満を伴った愚痴を零す。
せっかく場が温まってきたこともあってだけに雇い主であるイヴリースからの水入りだったのでガルダルフ的にも不満が漏れるのは仕方なかったとも言える。
イヴリース:『申し訳ないですがそろそろ時間でもあるんですよ』
ガルダルフ:「―――――もうそんなに経ってたか・・・」
イヴリースの言葉に冷静さを取り戻したガルダルフはモニターの表示されているタイマーに視線を落とす。
画面に映し出されるデジタル表記のタイマーのカウントは“00:00”と点滅しながら表示されていた。
これはタイムアップを意味していたのだ。
やっちまったな、という意味合いも込めた舌打ちをするガルダルフ。
ガルダルフ:「ついつい張り切りすぎちまったか・・・迂闊だったぜ」
イヴリース:『しかし、当面の目的は達成しています。名残惜しいかもしれませんが今日の所はここまでに』
ガルダルフ:「ああ・・・すまねぇ、ちと熱くなりすぎちまったようだ・・・部下共々、離脱に入る」
そう答えると同時にガルダルフは目の前の【ガンクロウ】を見やる。
ヴァリアブルロッドを構えたまま、警戒を続ける白いALはいつでも動ける様に身構えていた。
ガルダルフ:「―――――残念だがメインディッシュは後のお楽しみだな・・・」
名残惜しむ様に言うガルダルフはパネルを操作する。
同時に【ダイモーン】の機体は消える様に揺らぎ出す。
マキナ:「ッ!!逃がすか!!!」
動きに気づいたマキナは【ガンクロウ】を動かし、ヴァリアブルロッドを【ダイモーン】に向けて突き出す。
直撃する寸前、揺らぐ【ダイモーン】から白い煙が噴き出し、あっという間に周囲を覆い隠す様に煙は展開する。
マキナ:「クッ!これは!?」
クロウ:『目くらましを兼ねた煙幕ですが同時に外部センサーにも支障が生じています』
マキナ:「ジャミングを兼ねた特殊な煙ということ?」
クロウ:『肯定します。おそらく特殊なステルスシステムとの兼ね合わせでこちらの追跡をシャットダウンする目論見だと思います』
ロングスカウター:『(ザザ・・・)―――こちら、ロング―――、く、機――――、応答、せ――――』
ジャミングの影響か、通信に関しても応答しにくい状態となっている。
追跡もこの状態では不可能に近い。
クロウ:『この噴出量ならばおそらくあと2分ほどで晴れると思いますが―――』
マキナ:「・・・この状況では無理もないか・・・使えるセンサーを用いて警戒を」
クロウ:『了解』
指示を送ると同時にマキナは緊張を解く様に息を吐く。
おそらく向こうは完全に撤退している。
【サイクロプス】と相対しているライアーたちも気がかりだがこちらの様子は確認できているはず。
転倒している【アルゲス】や【ガルーダ】のオペレーターが気がかりである以上、
迂闊な動きは彼らを危険にさらすのはマキナも理解している。
ここでは完全に煙が晴れるまでは警戒をしつつ、待ちの姿勢になる他、手はないのが現状だ。
マキナ:「――――あの赤いAL・・・」
先ほどの赤いALをマキナは思い返していた。
【ガルーダ】の突撃によるダメージはあってもなおも余裕の様子を見せており、
オペレーター含めても余力を残している感じであった。
そして何よりも相手は丸腰に近い状態でこちらをあしらっている。
それに対して屈辱を感じたマキナは唇を無意識に嚙み締めた。
マキナ:「次は――――負けない」




