鋼鉄のフェスティバル(後篇)-10
【ガルーダ】と【ダイモーン】はにらみ合いを続けていた。
しかし、棒立ちで睨み合っている訳ではなく、“お互いの一瞬の隙”を
見計らっており、いつでもどちらも仕掛けることが出来る様にしていた。
事実、【ガルーダ】は主駆動以外の推進部にも火を吹かせており、
【ダイモーン】の動き次第では一気に勝負を付ける算段を付けている。
無論、【ダイモーン】側も向こうの読みには気付いており、一寸の隙も
見逃さない様にセンサーをフル稼働させている。
不破もガルダルフもオペレーターとしての技量はまさに一級品とも云える
腕前の持ち主である為、勝負の要因は“機体の性能差”と“時の勝負運”に集約している。
不破:(――――勝負は一瞬・・・)
―――――息が詰まる・・・
こんな感覚を抱いたのは初めてアームズレイヴンに乗った時だろうか・・・
今の状況はおそらくそれ以上に緊迫が奔っているはずだ・・・しかし、
何故か、悪くはないと・・・少し笑みが漏れてしまった。
―――――悪くないねぇ・・・
ガルダルフはそう思いながら口を笑みで歪ませる。
最初は退屈な仕事になると思っていた。
だがそれは相手を侮辱していることではなく、機体の性能差で圧倒的だろうと
しかしそれを腕前でカバーするというのは中々に出来る様で難しいものだ。
目の前の新型機たる【ガルーダ】とはいえ【エッグ】技術の塊である【ダイモーン】との機体性能は歴然であり、同じ第3世代と思えないほどである。
そんな圧倒的なスペックの差があろうと目の前のALのオペレーターは臆することはなかった。
軍人・・・兵士としての義務もあるだろうがそれ以上にオペレーターとしての経験量とオペレーター個人の意地もあるからだ。
一見するとそれはどうかと思うかもしれない。
だが戦場に立つ以上はただ命令を聞くだけでは生き残れない。
その場その時の判断を含め、的確に理解してこそだ。
単純に命令を聞けば良い訳ではない、全ての状況を把握した上で理解と判断を元に最善又は最良の選択をする。
今、目の前に立っているオペレーターはまさに最良の選択をしているのだ。
例え、勝てなくても“避難と退避の時間を稼げれば”向こうの勝ち負け問わず、目的は達成するからに他ならない。
ガルダルフ:「だからと言って、これ以上付き合うつもりはないがな!!」
こちらにもこちらの都合がある。
そう言いながらガルダルフは誰にも聴こえないにも関わらず、声を発する。
彼としては戦場に出続けることは幸福以外の何物でもない。
だが、彼自身の立場や請け負った仕事がそれを許さない。
名残り惜しくも目の前の【ガルーダ】との決着を付けるべく、ガルダルフはグリップを操作し【ダイモーン】をアクションさせようとする。
その瞬間、衝撃がコクピット内を襲った。
ガルダルフ:「!?」
衝撃の違和感を感じたガルダルフは視線とモニターをすぐに“ソレ”の方へと向けた。
目線の先には倒れ伏していた【アルゲス】が片腕を動かし、手首に当たる部分から
ワイヤーガンを射出させ、それが【ダイモーン】の腕に絡み付いたのだ。




