鋼鉄のフェスティバル(後篇)-8
時間はほんの少し遡り、ミカサらと別れたマキナはワイズマンから指定された
ポイントへと到達する。
マキナは通信を開き、戦域全体統括官であるロングスカウターに指示を仰ぐ。
マキナ:「こちらスルーズ11。指定されたポイントへ到達。【ガンクロウ】は
どうか?」
ロングスカウター:『こちらロングスカウター。既に【ガンクロウ】に到達している』
ロングスカウターの言葉に反応する様にステルス状態を解除した銀色の【アームズ
レイヴン】が膝を付けた状態で姿を現す。
【ガンクロウ】に搭載されている対話応対可能なAI【クロウ】は外部音声に切り替えてマキナに向けてメッセージを発する。
クロウ:『お待ちしておりましたマキナ少尉。こちらはすぐにでも行動可能です』
マキナ:「わかった。ハッチを開けて。すぐに搭乗して例の【AL】の対応へ向かいます」
クロウ:『了解』
答えると同時にハッチを開き、マキナは速やかに乗り込む。
OSである【MARS】と同期を行う。
コクピット内の機器が次々と立ち上がっていき、【ガンクロウ】のアイカメラに光が灯る。
クロウ:『【ガンクロウ】起動完了。各部関節及び動力共に正常。全システム、オールグリーン。問題ありません、すぐにでも行動可能です』
マキナ:「急いで不破一尉の救援に向かおう。あの赤い【AL】――――あれは危険よ」
クロウ:『それは機体性能的な意味でですか?』
マキナ:「機体性能含めてよ――――オペレーターの方がむしろ危険かもしれない」
クロウ:『直感と呼ばれているものかもしれませんが憶測で判断するのは早計では?』
マキナ:「それはそう思っている――――とにかく今は急ぎます」
了解、と【クロウ】は答えるとマキナの動きに合わせる様に【ガンクロウ】を動かす。
そこへロングスカウターから通信が入る。
ロングスカウター:『スルーズ11,そちらに急行している熱源がある。数は5。』
マキナ:「【クロウ】、センサーをモニターへ直結!!」
ロングスカウターからの通信に反応する様にセンサーを即座に立ち上げると【AL】と思しき熱源が確かに5つあった。
しかし、視覚用モニターにはその熱源と思しき物体は姿を見せてなかった。
マキナ:「【MIMIC】か!!」
マキナの言葉に反応するかのように擬態状態を解除したダークカラーの一つ目の巨人がその場に複数出現する。
【アトラス社】の開発した第三世代【アームズレイヴン】である【サイクロプス】だ。
しかし、目の前にいるサイクロプスはカタログに載っているものとは細部が異なっていた。
そしてマキナは眼前にあるALに見覚えがある。
マキナ:「あのサイクロプス。以前、ミカサを襲った機体か」
クロウ:『ライブラリィに照合しました。前方の機体は98.72%で美神ミカサ女史誘拐を目論んでいたサイクロプスと一致しました』
マキナの言葉に早急に検索を掛けた【クロウ】はそう答える。
それに続く様に通信回線を開いたままだったロングスカウターから声が響く。
ロングスカウター:『こちらでも確認した。記録した前回の内容と照合した結果、
ミカサ女史を誘拐しようとした機体と同じと判断した。とすれば、今回の連中と
ミカサ女史を誘拐しようとした連中は同一ないしは同組織に属していると考えるのが妥当だろう!!』




