鋼鉄のフェスティバル(後篇)-6
道路を滑走するリムジンの中でイヴリースは備え付けられたモニターで
東京国際マシンナリィフェアの屋外会場の状況を観賞していた。
実は高性能な特殊ステルスを用いた試作の軍事飛行用ドローンを用いて
会場の状況をリアルタイムで観ていたのだ。
イヴリース:「“現実は小説よりも奇なり”だったかな?言い得て妙と言うべきかね」
側近:「と言いますと?」
イヴリース:「面白い、ということさ。下手な大作映画やゲームでは味わえないこの感覚――――リアルという現実故の得難いスパイスの如き刺激という訳さ」
側近の質問にそう答えるイヴリース。
その口から発する言葉には嬉しさと悦びさを伴わせており、基本“自分の感情”を表に出さない彼に対しては珍しい“本当の気持ち”。
そんな上司の滅多に見せない本来の姿に側近は表情は変えてはいないが衝撃が彼の
内心は奮えていた。
その気持ちを抑えながらも切り替える様に側近は言葉を口にする。
側近:「――――しかし、アトラスやイカルガとカシマの新型に関しては些か拍子抜け、という感じでしたね」
イヴリース:「そう思うかい?」
側近の言葉にイヴリースはそう答える。
疑問に思ったのか側近はイヴリースに言葉を投げる。
側近:「イヴリース様的にはそうではないと?」
イヴリース:「【ダイモーン】の性能は素晴らしいよ。しかし、今のあの機体はミスター・ガルダルフ用の調整が完全ではないんだよ」
その言葉に側近はハッとする。
本来【ダイモーン】はガルダルフの為に急遽用意した機体。
彼が操縦することを想定して機体の調整は行われていたがそれはあくまでも彼が搭乗した際のことを見越した上での調整でしかない。
ガルダルフ自身が搭乗した上での機体のセッティングでしかなく、彼が搭乗した上でのフィッティングは行われていないのだ。
イヴリース:「本当はそれなりの時間を掛けて彼と一緒に調整する予定だったんだけどね・・・色々と予定が押していたからね」
側近:「ロールアウトと納入が大幅に遅れていたのは痛手ではありました―――――しかし、その状態であそこまでとは」
イヴリース:「曲がりなりにも【エッグ】から得た技術そのものを導入しているからね。とはいえ、向こうの機体も決して悪くないよ―――オペレーター含めてね」
そう言いながらイヴリースは再びモニターに目をやる。
ドローンを介して映し出されていたのは赤い【ダイモーン】相手に臆することもなく対峙する白い【ガルーダ】の姿だった。
イヴリース:(さて―――出来れば【ガルーダ】のデータはもう少し欲しい所だね。頼むよ、ミスター・ガルダルフ)




