鋼鉄のフェスティバル(後篇)-3
会場の広場では赤黒いレイヴンと【ガルーダ】らのにらみ合いが続いた。
観客の避難を優先したのもあるが目の前にいる正体不明の機体の動きが
予測できないという不安要素があるだけに迂闊に動くの危険と判断したからも
ある。
登場からさきほどの【アルゲス】への行動以降、目立った動きを見せていない。
ALオペレーター:『不破さん。こちらから仕掛けるのはダメなんですか?』
不破:「ダメだ、相手のスペック含めて何もかも不足している。それに観客らの
避難が完了していない以上、余計な被害を出さない為にもまずはこのままにらみ合いを続ける以外、ない」
オペレーターを務める部下からの疑問にそう答える不破。
相手がこちらに対して何ら仕掛けてこない以上、迂闊に動くのは致命になりかねないからだ。
どちらにせよ、警戒は怠らない様、細心の注意を払うべきだと不破は目の前にいる敵を注視するのであった。
ガルダルフ:「―――流石に冷静沈着だねぇ、まあ、プロがいきなり仕掛けるってのは現状じゃあまずしないわな」
赤黒いレイヴンこと【ダイモーン】のコクピット内。
モニター越しとはいえ、【ガルーダ】らの警戒態勢を賞賛する様に言うガルダルフ。
彼らも軍人であり、レイヴンオペレーターとしては自分と同じくプロ。
プロフェッショナルである彼らとガチンコでやり合えるのなら彼としても嬉しく悦ばしいことではあるのだが
ガルダルフ:「―――ま、流石に現場が戦場でない以上、“殺し”はダメだわなぁ~・・・」
クライアントであり、スポンサーからの要望はあくまでも“【ダイモーン】の性能と
存在を見せつける”というもの。
避難している観客の中には配信や撮影をしている人間も少なからずいるのは確認している為、【ダイモーン】のお披露目は現状出来てはいる。
問題は性能を見せつける、という点。
ほぼ丸腰の新型ALなどガルダルフの技量があれば難なく対処は簡単だ。
しかし、それをすることは出来ない。
上述の様に戦場ではない以上、ただ一方的に破壊や殺戮などは出来ない。
任務や依頼の内容次第ではあるが今回はそうではないからである。
新型ALである【ガルーダ】ら相手に【ダイモーン】の強さを衆目させることだ。
本来なら【ダイモーン】を衆目に晒す様な投入は非効率と云っても過言ではない。
戦場での投入ならいざ知れず、こういう試験評価やお披露目を兼ねた場合での投入は完全に場違いとしか言い様がないからである。
これに関してはスポンサーサイドの都合と要望もある為、仕方ないと言えよう。
ガルダルフ的には存外悪くないとも思ってはいる。
ガルダルフ:「仕事と私情は分けているんでねぇ~」
少々独り言が過ぎたがそろそろ動くかと操縦桿を握り直す。
ガルダルフ:「さて、見せてもらおうかねぇ?新型アームズレイヴンの性能ってのさぁ!!」




