鋼鉄のフェスティバル(中篇)-2
しばらくして対応に当たっていた中島からミユキに報告があったのか
ミユキがインカムを通じて【ピースキーパー】のナツミとショージに通信を繋げる。
ミユキ:『さっきの報告だけど、タバコとライターだったみたいね。
会場内は禁煙だから気を付けろと中島くんが注意したから大丈夫だとは思うわ』
ナツミ:「とりあえずは大した問題じゃないってことね」
ショージ:「しかし、凄いっスねこのセンサー」
細かい特定などは調整する必要性が高いらしいことを除けば、
危険性の高い所持品を把握出来るというのはある意味の抑止力になるのではないか
という声も出てはいるらしいがどうなるかは今後次第なのだろう。
ナツミ:「この前みたいなことはないであって欲しいからね・・・・・・」
この前のことと言えばそれは【ゴブリン】を用いた襲撃者たちのことだ。
幾ら【ピースキーパー】が【ワークスレイヴン】とはいえ、第2世代の改造機を
相手に後れを取ったことがナツミ的に屈辱な部分も大きかった。
【ピースキーパー】を受領してからまだ数ヶ月経っていないとはいえ、
ある程度の場数をこなしてきたと思ったナツミとしては遺憾があったのも確かだ。
【ピースキーパー】を任された身としてもメーカーのみならず整備に携わるみんなの顏に泥を塗ることだけは避けたいと同時に自分もしっかりしないと決意を新たにしている。
そんな中、個別通信でミユキがナツミに声を掛けてきた。
ミユキ:『――――ナツミ。変に気負わないでよ?』
ナツミ:「なんでわかったの?」
ミユキ:『何年一緒にパートナーしてるのよ―――ナツミはナツミでいいんだから』
ナツミ:「ごめん――――そしてあんがと」
そう答えると通信を切り、コクピットの中で自分の頬をパンパンと叩く。
気合入れるのと同時に少し弱気になってた自分にカツを入れる。
いつまでも引きずるのはらしくない、と気分一新で仕事に望むナツミであった。
ナツミ:「よっしゃ、やるぞ・・・!!」
一方、会場から離れた見晴らしのいい道路に一台の車が停車していた。
エンジンは切っており、ハザードランプを点灯して脇道に止めている車内で
1人の男がタバコをふかしていた。
顏に大きな傷が特徴の目元が見えないほど濃ゆいサングラスを掛けた強面で
一見すればその道の人間と言われても不思議ではない外見をしていた。
男―――ガルダルフは車内で一服しながら腕時計に視線を落とす。
時刻は10:35を表示する様に時計の針は指している。
指定された時刻まではまだ時間があった。
部下たちの配置は既に完了しており、自身もそのまま現地入りしても構わないのだが
こんな時に吸う至福の時を逃すのはガルダルフ的には非常に勿体ないからだ。
彼の吸っているタバコは去年に製造を中止してしまっており、残されている量も
既に彼の有している分のみとなっている。
特段、好きという訳でもないがこの素っ気なさが彼の琴線に触れた様だ。




