第7話 鋼鉄のフェスティバル(前篇)-1
ガルダルフ:「いよいよ明日だなぁ、ダンナ」
いつものオフィス部屋で椅子に深々と腰かけ背もたれに身体を預けながら
“傷だらけの(スカー・レット)”ガルダルフはモニターへと声を投げる。
モニター画面の主は声のみをディスプレイから発生させていた。
?????:『そうだね。こちらも明日・明後日のスケジュールの確認で
てんやわんやだがね』
苦笑が漏れる。
そこには相手を蔑む為のものではなく、自分の周りの大変さと苦労さ、
そして何よりも“これから自分達がしようとしていることへの悦び”も含めた複雑な
笑みだ。
それに答える様に傷だらけの男はちげぇね~、と笑う。
彼の言う明日・明後日とは言うまでもなく“東京国際マシンナリィフェア”のことだ。
声の主はその口ぶりからして参加者の1人ということになる
ガルダルフ:「で、俺はいつ頃、出ればいいんだ?」
?????:「2日目からでお願いします」
ガルダルフ:「初っ端からやるのはナシか?」
?????:「初日はレセプションを始めとした企業や政府のみなので大々的に
“宣伝”するのならば一般ブースも解放される2日目が妥当だと思いましてね」
確かに道理だ、と納得するガルダルフ。
ガルダルフ:「所でだ、俺の“愛機”となるALはどうだい?」
?????:『明日には現場に運び込めますよ。調整が掛かってしまって機体テストを碌にさせれなかったのは申し訳ありませんが・・・・・』
ガルダルフ:「なに、気にすんな。テストしていようがいまいがトラブルは付き物だ。俺としちゃあ、スリルがあって楽しめそうだがな」
?????:『一応、保険を兼ねて他のALは用意しています。無論、盾役用の無人機です。ただ、AIが即席の簡易版なのでアルゴリズムの都合で簡単な命令しか出来ませんが・・・』
ガルダルフ:「問題ねぇ、弾避けとして使えれば些細なモンさ。それよりも参加するのはアンタだけか?」
?????:『流石に皆さん、忙しいのと彼らを巻き込むと後々面倒なものでね』
ガルダルフ:「大変だねぇ、ダンナの方も」
?????:『いえいえ、ミスター・ガルダルフらに比べれば楽な方ですよ』
気の合う友人の様な語り合いを続ける両名。
そこへガルダルフの携帯端末が振動する。
ガルダルフ:「おっと、そろそろ時間の様だ。俺はこれで失礼するぜ」
?????:『長々とありがとうございました。それでは当日お願いします』
ガルダルフ:「任しときな。派手にやらせてもらうぜ」
ニヤリとしながら通信を切るガルダルフ。
それから椅子から立ち上がるとスマホを手に取り、その映し出された画面を見る。
画面の内容は彼専用にチューンナップされたアームズレイヴンの姿があった。
自身の愛機となる機体にニヤリとした後、ガルダルフはブラインドを上げたビルの
窓を見やる。
夜空に輝く月は神秘的にも妖しく白く光りながら眼下の夜の街並みを照らしていた。




