影にうごめく“脅威”-3
【マーナ=マークリル】の艦内通路をライアーは欠伸を搔きながら歩いていた。
深夜の当直勤務を終え、1時間ほどの仮眠から覚めたばかりな為かまだ眠気が残っている。
朝食を取る為に艦内の食堂へと向かっていたのだ。
ライアー:「深夜の当直は基本暇なのがなぁ・・・刺激がないと眠気との戦いになるのは困るぜ」
?????:「朝っぱらからそんな調子は感心しないぞ【ライアーマスター】少尉」
ビクリとしたライアーは後ろから声を掛ける人物の方へと恐る恐る振り返る。
視線の先には少し離れた所に1人の人間が立っていた。
屈強とはいかないががっしりとした身体付きで短めの髪を後ろに束ねている中東系を思わせる男性だ。
そう彼こそ【ブリューナク】のAL実働部隊【ヴィダール隊】の隊長を務める【ズワルト・ワイズマン】である。
ライアー:「こ、これはワイズマン隊長殿。おはようございますです」
ワイズマン:「無理にかしこまるな。とはいえ、ダラケ過ぎているのは感心せんがな」
ライアー:「いやぁ・・・その・・・申し訳ねぇです・・」
バツの悪い仕草をするライアーに苦笑の表情を浮かべるワイズマン。
ワイズマン:「まあ、兵士とりわけ傭兵は暇なのが一番良いとはよく言うからな」
ライアー:「商売あがったり、と言っても警護やら何やら探せばいっぱいあるわな」
ワイズマン:「そうだな――――それにオレ達は一介の傭兵とは違うからというのもある」
ライアー:「“正義の味方”ってか?―――昔の俺なら鼻で笑ってたな」
確かにな、と苦笑を続けるワイズマン。
ライアー:「っとそうだ。朝メシ喰おうと思ってたんだ」
ワイズマン:「オレもちょうど向かおうとしたところだ。今日から何分、忙しくなるからな」
なんかあったか?と疑問符を浮かべるライアーを余所に食堂へ行くぞと促すワイズマン。
ライアーがこの言葉の意味を理解するのはそう時間は掛からなかった。




